9月20日(金)に発売されるiPhone5s。NTTドコモからの発売も決定し、これで国内3キャリアそろいぶみとなった。加えてプラチナバンドでのLTE通信に対応することも発表され、大きな話題を呼んでいる。

プラチナバンドとは700〜900MHzの周波数帯域を指し、その電波特性からビルの中や高層建築密集地、あるいは地方でもよくつながるのが特長だ。ドコモとKDDI(au)は800MHz帯、ソフトバンクモバイル(SBM)は900MHz帯をそれぞれ持っている。

このことからiPhone5sは“早くてつながりやすい”端末といえるが、実はこのプラチナバンド、キャリアで通信環境に大きな差がある。

まずauは、もともとAndroid機でのLTE通信向けに800MHz帯域用の基地局を全国各地に数多く設置してきた。よって、5sが新たに同帯域へ対応したのなら既存の基地局がカバーするわけで、ユーザーは日本中でプラチナバンドの快適なLTE通信を享受できる。

一方、ドコモのLTE通信は2.1GHz帯をメインに使っている。800MHz帯は補助的に地方で用いる程度。もちろん、今後は800MHz帯の基地局を急ピッチで増やしていくだろうが、発売当初のドコモ版5sは、せっかくのプラチナバンドの恩恵をあまり受けられないことが予想される。

SBMの状況はもっと深刻だ。5sがせっかく900MHz帯に対応しているのに、同社が現在この帯域で行なっているのは3G回線の音声通話のみ。というのも、同じ900MHz帯をタクシー用無線など他業種でも使っていて、周波数幅の空きがないのだ。

そうした業種がほかの周波数帯へ引っ越し、LTE用の基地局整備を始められるのは来年夏以降。SBM版5sがプラチナバンドでLTE通信できるのは、まだまだ先の話なのである。

ジャーナリストの石川温氏は、「あくまで理論上の話ではありますが、現時点ではau版5sのLTE通信が一番つながるはずです」と推測する。

もちろんドコモ、SBMともに急ピッチでiPhone5sのLTE対応を進めるだろう。また、みんながauに殺到すると、800MHz帯が大混雑。LTEの通信障害も発生しかねない。各キャリアが発売後に発表する新情報を待ちたいところだ。

■週刊プレイボーイ39号「iPhone5sは買いか、スルーか?」より