市内で売られていたオナホールの数々。偽TENGAは50元(約620円)と、ほかの商品の倍ほどの値がつく

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今年8月、中国の広東省広州市で仕入れたニセモノの高級ブランド時計を国内で販売していた男が、大阪府警に逮捕された。府警によると、驚いたことにそれらの模倣品は「外見上はまったく本物と違いはなかった」という。また、あるブランドの鑑定人をして「これまで鑑定してきた偽造品の中で最高峰の“逸品”」と言わしめたとも伝わっている。

中国で現地の模倣品の実態について調査し、当局の協力のもと摘発まで行なう日系調査会社「アライジェンス コンサルタンツ」代表の太田基寛氏によると、模倣品調査の難易度は近年さらに上がってきており、その背景には、模倣技術や生産体制の巧妙さ、複雑化があるという。

「模倣品製造が産業として根づいてしまっている中国では、時計の例で言えば、ムーブメントと文字盤が別々に作られており、さらに組み立ても別の専門業者が行なうという分業化が進んでいます。それぞれの分野に特化することで技術がどんどん上がっていて真贋の判別が困難な上、未完成品は摘発できない場合があるので、模倣に関わる業者を根こそぎ一網打尽にすることが難しくなってきている。ほかにもバッグなどのアパレル小物や、パソコン周辺機器などにも同様の現象が見られます」

たとえ完成品メーカーを摘発したとしても、産業全体からすればトカゲの尻尾切りにすぎない可能性もあるということだ。太田氏によると、同一の模倣品業者を、2年の間に3回摘発した例もあるという。

そんな“いたちごっこ”ともいえる模倣品対策には、時としてこんな大胆な打開策まで講じられることもある。

「模倣品業者にかなりのシェアを奪われて手を焼いていたある自動車部品メーカーは、その業者を吸収合併してしまうという形で、解決を図った例もあります」(太田氏)

昨今の反日感情の高まりもあり、中国当局による摘発の望みは薄い。現地では至るところにニセモノがあふれ、どことなく邪悪な表情のキティちゃん人形、注意書きの字体が奇妙な日本製シャンプー、さらにはあのTENGAそっくりのオナホールに至るまで、中国人の生活の隅々にまで日本製品のニセモノが浸透している。日系“ニセモノGメン”の気が休まるときはない。

(取材・文/牧野 源、写真/アライジェンス コンサルタンツ)