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電子機器のデザインは、電池によって大きな制約を受けている。現在主流のリチウムイオン電池は複数のシートが何層かに重ねられた構造になっており、電池の内部でシートがグルグル巻きのロール状にされて収められている。電池のパッケージデザインは基本的に直方体か円筒状になっていて、あまり自由度が高くない。

米国ライス大学の研究チームが開発した"Paintable Battery"、つまりペンキのように塗ることのできる電池は、こうした状況を大きく変えることになりそうだ。

研究チームは、二酸化コバルトリチウムや単層ナノカーボンチューブなどの電池材料をスプレーできる技術を開発。例えば、二酸化コバルトリチウムと導電性カーボン、微細なグラファイトの粉などをNMP(有機化合物の一種)の溶液に溶かしたものなど、数種類のペンキを作成した。こうした電池材料のペンキを物質の表面に何回かに分けてスプレーすることで、リチウムイオン電池を作ることに成功したのだ。

スプレーする対象の物質は、鉄やガラス、陶器など身近なものでよく、特別な表面処理も必要ない。研究チームは、浴室用タイル9枚に電池材料をスプレーして、2.4ボルトの電気を取り出せるリチウムイオン電池を作成。この電池を並列につないだところ、40個の赤色LED(1個あたり40マイクロアンペア)を6時間点灯することができた。スプレーして作られた電池は充電も可能。さらに電圧や電流は、スプレーする材料を調整することで自由に変更することができるという。

スプレーして電池を作ることができるようになれば、電子機器のデザインは今よりも大幅に自由度が高くなるだろう。また、太陽電池などのハイブリッド製品の開発も容易になると期待される。

(文/山路達也)

記事提供:TELESCOPE Magazine