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フィクションの中だけだと思われていた技術が、次々と現実化している。MITメディアラボの研究グループが開発に成功したのは、何と曲がり角の先を撮影することのできるカメラだ。光ファイバーを伸ばして曲がり角の先の様子を確認することなら今の技術でもできるわけだが、MITメディアラボが開発したのはそういうものではない。曲がり角から離れた位置、つまり角を曲がる前に先の様子を撮影できるのだ。

この技術のポイントは、レーザーを使うことにある。カメラに設置されたレーザー発振装置からレーザーパルスが発射され、カメラから見える位置にある壁にぶつかる。レーザー光は、壁にぶつかって飛び散り、いくつかはカメラから見えない位置にある物体にもぶつかってさらに飛び散る。レーザー発振装置から出た光はさまざまなものに何回かぶつかったあと、カメラに入る。レーザーパルスの間隔は50フェムト秒(1フェムト秒=1000兆分の1秒)で、これを角度を変えて60回照射する。

カメラは、2ピコ秒(1ピコ秒=1兆分の1秒)単位で映像を記録することができる特殊なものが使われており、複数経路からの光がどれくらいの時間をかけてカメラに入るかを計測する。打ち出された光がカメラに入るまでの時間がわかると、どれだけの距離を移動したかがわかり、このデータを元に、光の軌跡をコンピュータが計算し、カメラから見えない位置にある物体の形を明らかにしていくのだ。2ピコ秒は、光でも0.6mmしか動けない時間。つまり、このカメラは光の動きを1mm以下の精度で捉えることができるわけだ。

現在のところ、レーザーを発振して物体の形を明らかにするまでに数分間はかかっているが、研究グループは将来的には10秒以下に処理が行えるようにしたいという。



写真:レーザー発信装置から出た光子は、壁や物体にぶつかっては跳ね返り、いくつかはカメラに入ってくる。これらのデータから物体の形状を計算する。

(文/山路達也)


記事提供:TELESCOPE Magazine