たとえば、今季山形を象徴する3トップ。山崎雅人、中島裕希、萬代宏樹の3人の連動性はこのシステムが始まってからの課題だが、試合の状況に応じて、山崎がやや低いポジションを取るケースがある。守備の枚数が足りないときやプレスバックが狙えるとき、前線でフォワード同士の動きが重なるときなど、状況に応じてポジションを修正することでチームを機能させているが、そうした判断もピッチ内でなされている。

■成長できる余地はまだ十分にある

ミーティングでは奥野監督が選手を指名し、質問をするスタイルが取られているそうだが、「逆風のときは」「相手がハイプレッシャーで来たときは」「相手が引いてきたときは」そうした想定をチーム全体のものとしながら、状況に応じて柔軟に使い分けることが、勝利を重ねることで少しずつ形になっている。

シュート数5対16と圧倒的に自陣でプレーしながら、少ないチャンスで2-0と勝ちきった東京V戦のあと、石川竜也がこう話している。「相手があって、自分たちのコンディションがあって試合になる。自分たちの理想はあるにしても、そういう試合ばっかりじゃないし、そこはあまり気にせず、ボールを回されてても慌てることなく、自分たちが考えながら試合を進めていけているので、そんなに問題はない」。相手のポゼッション能力や連戦での疲労をゲーム中に感じ取り、適性なプレーを選び取った成果としての勝ち点3だった。

今季のスタイルはある程度の経験値が要求されること、また、連動性を熟成させるために先発メンバーを固定していることで、メンバーの平均年齢が高いことや、選手交代などで新しい選手が入ってきた場合にどう機能させるかなどまだ課題はあるが、そんな課題さえも「成長できる余地」と大きく構えられる余裕が、今の山形にはある。

■著者プロフィール
佐藤円
1968年生まれ、山形県鶴岡市出身。山形のタウン誌編集部時代の1995年にモンテディオ山形の前進であるNEC山形の取材を開始。現在はモンテディオ山形の取材を続けながら、「J's GOAL」「EL GOLAZO」等に執筆している。Jリーグ登録フリーランスライター。