「うちの本棚」第二十八回はさべあのまのデビュー直前作『シングルピジョン』をご紹介いたします。

さべあのまの作品を初めて読んだのは、みのり書房の「ペケ」だった。アールヌーヴォー調の絵柄が印象的で、直後くらいに神保町の書店で見つけたのが、迷宮から刊行された短編集『シングルピジョン』だった。ここに納められた作品は「迷宮」に発表されたものを中心にしていて、デビュー前夜の作品集といったものである。

高校生から大学生くらいの感性にピッタリ合うような内容のものが多く、ちょうどそんな年齢だった自分もさべあのまファンになっていくのである。

『シングルピジョン』は当初カバー付きの装丁だったが、予想外に売れたのか、増刷され、カバーの付いていない版が多く流通した。

自費出版(まあ同人誌である)なので印刷は微妙だったが紙質はいいものを使用していてずっしりした印象がある(アート紙を本文に使用していたのではなかったか?)。

正直言って、作家として成長するに従って、さべあ作品からは遠ざかってしまい、現在でも一番好きな作品集は『シングルピジョン』か、メジャーで出された最初の短編集『ライトブルーページ』だったりするのだが、これは個人的な思い入れ以外の何ものでもない。

読み返すと胸がチクリとする、そんな感傷的な印象が、さべあのまの初期作品にはあって、ときおりふと読み返したくなる。

初出:迷宮、他
書誌:迷宮(さべあのま作品集)
   メディアファクトリー(文庫)版全集6「ライトブルーページ」

■ライター紹介
【猫目ユウ】

ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。

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