インスタントジョンソン・じゃいインタビュー(第2回)「税制はおかしい」巨額の追徴課税を機に広がる動き 政治家との対話で投じる“一石”
自身の勝負については冷静だった男が一転、税制の話になると熱を帯びていった。
2022年、競馬の高額配当をめぐって多額の追徴課税を受けたことをきっかけに、税制のあり方に疑問を投げかけるようになった。
自身だけでなく、競輪など公営競技の税負担に苦しむ人々からも相談が寄せられるようになり、現在は政治家との意見交換にも乗り出している。
なぜ税制を変える必要があると考えるのか。そして、政治家との対話を通じて何を感じたのか。税制改革への思いを聞いた。
インスタントジョンソン・じゃいインタビュー(第1回)“超高額馬券”を次々と的中 データや流れを味方につける「勝負師」の思考とは
マンションが買えるほどの税金 突然の請求に揺れた日
--じゃいさんは今、競馬における“税金問題”に取り組まれています。2022年に追徴課税を課されたことが話題になりました。当時は書面で通達が来たのですか? それとも、税務署員が直接来たのでしょうか?
じゃい 署員が直接来ました。(事前に)電話をもらっていたみたいなんですけど、電話番号が変わってて、直接2人来ました。僕はちゃんと(税金を)払っていたので、やましいこともないし、「どうぞ調べてください」と。そしたら、「(競馬の払戻金を)一時所得にしてください」と言われて、損益計上できなくなった。そうなると結構な額になるんですが、結果的には追加分を払うことになりました(※)。
※2022年、競馬の高額配当をめぐり税務署から多額の追徴課税を求められた。問題となったのは、それまでに購入した「外れ馬券」の扱いだ。競馬の払戻金は原則として「一時所得」として扱われ、この場合、必要経費として差し引けるのは的中した馬券の購入費などに限られ、外れ馬券は経費として認められない。例えば1000万円を馬券購入に使い、1500万円の払戻金を得ても、外れ馬券の購入費を差し引けなければ、実際の利益より大きな金額が課税対象となる可能性がある。じゃいは約6410万円の高額配当を得た一方、外れ馬券が経費として認められず、数千万円規模の追徴課税を受けたと公表した。
--じゃいさんとしては、しっかり所得の申告もしていて、“払うべきものを払った”という状態を作ったはずでした。そこに追徴課税となるのは、寝耳に水な感覚もあったのではないでしょうか?
じゃい 来ることは予想していました。でもまぁ、まさかこんなに高額だとは思いませんでしたね。めちゃくちゃ取りますからね(笑)。まあでも仕方ないので。
--馬券購入費を経費として計上できず、獲得した払戻金に対して税金がかかる仕組みだった。
じゃい そうなんですよ。だから僕は利益(払戻金から馬券購入費を引いた金額)から計算して申告していたんですけど、それじゃダメだということになった。結局、(馬券購入に)使った金額は考慮されずに、勝った分だけなので。自分の持っているものでは足りないぐらいの額を請求されました。
--金額は、「マンションを購入できるくらい」と報じられました。
じゃい そうです。うちに来た税務署の担当の方も「いやぁ、本当に理不尽だと思うんですけど…」みたいな感じでした。税務署の上の方にも会ってお話したんですけど、「正直僕も思うところがあるんですけど、上の判断なので…」みたいな感じで覆ることもなく。
会った人会った人はこの税制に対して、これが正しいとか、僕のことを悪いって言う人は1人もいない。議員の方とも何人も対談しましたけど、全員が「おかしい」と言うし。そもそも、こんな税金の取り方をしているのは、日本だけなので。おかしいんですよ、絶対的に。
--意外です。税務署の方は理路整然と、ただ取り立てるのかと思っていました。
じゃい 人によるんじゃないですかね。僕のところへ来た方は優しそうでしたし、悪い印象はまったくなかったです。
ただ、払いたかったんですけど(追徴課税が)決定したあと、なかなか金額が決まらなかったんです。結局、税務署内では金額を決めることができずに、国税局に判断してもらったらしいんですよ。
--額が大きかったからでしょうか?
じゃい なんですかね。もっと大規模なところと比べたら大した額じゃないと思いますけど。「支払額の結果は、いつ出るんですか?」と問い合わせたら、税務署の担当の方が「お父さんが危篤になられて実家に帰っているので、しばらくお待ちください」と。3、4カ月くらい待ったんですよ。その後結果が出て払うことになったんですけど、この3、4カ月分の利息を取られたんですよ。
--先方の都合で延びた部分も?
じゃい 延びた部分も。いいけどもう。そっちの都合じゃないですか?みたいな話をしたんですけど、「これも決まりなので」みたいな感じで言われて。まあ良い人だったし、これは香典という形でお払いします、ということで。亡くなられたかどうか分からないですけど。
--結構な額を納められましたが、生活に変化はありましたか?
じゃい そうです。だから借金して払いました。
--そうしたことを経験されて、現在はYouTubeなどで視聴者とお話しする活動もされています。じゃいさんのもとに相談に来る方々も、同じように税制で悩みを抱えられた方が多いのでしょうか?
じゃい 多いのは、(税務署に)入られた人ですね。静岡県の夫婦の奥さんから、ダイレクトメールが来ました。「マイホームを建てる予定だったのに、諦めることになった」と。その方は競輪でした。払えない税金のための借金で、子どもに負担をかけたくないからということで、ご夫婦は離婚することになった。旦那さんは会社を辞めて、自分でなんとか借金を返すために働くようになったと。
もう不幸でしかないじゃないですか。その人がただ競輪をやっていただけで。なんならその人はヘビーユーザーなので。1億円買って1億円払い戻しぐらいな感じで、それはありがたいことなんですよ。それだけ買うってことはその分の10%は国庫に入ってるわけですから。
(競輪や競馬などの)大事なお客さんにそういう仕打ちをするというか、そういうのはどうしても今後変えられるなら変えていきたいなと。
YouTubeでは視聴者の体験談の紹介や、相談に応じる活動も行っている(じゃいの公式YouTubeチャンネル「じゃいちゅ~ぶ」より) 税制を変えるきっかけに…政治家との対話で見えた動き
--最近も日本維新の会の「税調会議」に招待されていました。音喜多駿元議員とYouTubeでコラボしたことがきっかけだったのでしょうか?
じゃい 音喜多さんとのコラボもあるし、もともと自民党の方とも色々やってたところも話になって、日本維新の会が与党に入ったというところで、色々と仕掛けたいと。今後IR(※)とかもありますから。それでお話をしている間に、この前の勉強会というのに参加して、お話ししてくれと。もう1人、カジノに詳しい方もいたんですけど、その方もまったく同じ。僕は競馬でしたけど、言ってしまえば「日本の税制はおかしい」ということを、お話をさせていただきました。
※IR(統合型リゾート)とは、ホテルや国際会議場、商業施設などを一体的に整備する大型観光施設。日本ではカジノを含むIRの整備が認められており、2023年には大阪府・大阪市の計画が国内で初めて認定された。大阪では日本維新の会の前身・大阪維新の会を中心とした府・市政が誘致を推進。経済・観光振興への期待がある一方、カジノを含むことから依存症などを懸念する声もあり、誘致をめぐって議論が続いてきた。
--ご自身の経験や、相談を受けているところも含めて意見を提出した?
じゃい そうです。意外と詳しくない人は詳しくないし、知らない人は知らないので。とにかくこれは、そこまで税金に詳しくない僕ですら理不尽だと思うので。今までこの話をしてきた人が全員おかしいってことなので、やっぱりおかしいと思うんです。
ただ、日本って増税とかは割と変わるかもしれないけど、そういうものに対してなかなか重い腰が上がらない体質があるので、それを変えていこうという。
今は片山さつきさんが(財務)大臣になられて、高市(早苗)さんも総理になられて、日本を良くする兆しみたいなものが見えなくはないので、「今が変えるチャンスなんじゃないか」というのはちょっとありますね。
撮影・内外タイムス --日本維新の会は社会保険についても課題提起してきたこともあって、ギャンブルの税制についても同じような課題感をお持ちだったのでは?
じゃい いえ、そこまで詳しくないと思うんですよ。ギャンブルをやらない人が意外と多いので。でもそれを知っていただくことによって、あれ?これおかしいんじゃないか、っていうことに気付いてもらえれば。議員さんの中にもこれを知らない人が結構多いと思うので。これを知ってもらって「おかしくない?」ってなればいいと思います。
--日本維新の会のみなさんも知らない方が多かったですか?
じゃい 多かったです。だから「実情こうなってますよ」ということを説明して。で、「分かった。確かにおかしいね」っていう。大体このパターンだったんです。
--私も初めてじゃいさんのニュースを見たとき、最初は何のことなのか分からなかったです。そもそも高額配当を手にしたことがないので。だからまずは自分事として捉えてもらう、知ってもらうということですね。
じゃい そうですね。あとは、やっぱりJRA(日本中央競馬会)とか国税局とか財務省とかが、自分の意見を言えない立場だと思うんです、組織なので。そういう人たちが内部から「おかしい」って思ってくれれば良いんですけど。なかなか、そこが難しい。役所の人なので、下手なことは言えないと思う。
僕が税金の面倒を見てもらっている人は、元マルサ、元国税庁の人だったりするんですけど、その人たちはもう辞めているので「おかしい!」と言えるんですけど。今所属している人たちが、理不尽だと思っていたとしても、表立って言える立場にはないと思う。そういう人たちがどう動くか。競馬ファン、公営ギャンブルファン、なんなら国民のためを思って行動できるかに懸かっているのかなと。
撮影・内外タイムス --実際に政治家の方とも話してみて、良くなりそうな兆しは見えてきましたか?
じゃい 一応、今年の秋の税調会議でこの議題を上げるという予定ではあります。ただ、1回目でいきなり結果が出るかって言ったら、やっぱりそんな簡単なもんじゃないので。ただ、兆しはなくはない。僕はきっかけを作っただけで、なんなら僕が死んだ後にこの税制が変わった、で全然いいと思うんですよ。何もしないよりは、こういうことを発信して、いつになるか分からないけど変わるきっかけになってくれたら良いかなと思います。
だって、もう本当に勝てる人がいなくなっちゃうので。競馬やってても、ボートも他の競技もそうですけど。この制度でやっている限り、勝てる人がいなくなっちゃう。それはあまりにも夢がなさすぎる。ただ国が搾取しているだけ。(国は)だいぶ助かっているはずなんですよ、公営ギャンブルがあることによって。
--公営ギャンブルが開催されるだけで税収になる。一般的な馬券の場合、ファンは馬券の売り上げから25%引かれた額を払戻金として受け取ってますからね。
じゃい 25%引いた額が配当。まず、その25%のうち15%がJRAの収入で、残り10%が国庫に入ってるんですよ。なんならJRAの収入からも税金は払われているので、本当に暴利だと思います。
(払戻金も課税対象の)“二重課税”なので、そういうのがまかり通ってる。日本人は優しいので、あまりデモとかもないでしょうし。国によっては大問題になってると思うんですけどね。
--もし本当にちょっとでも変わったら、じゃいさんがやっていることはかなり大きな功績になると思います。
じゃい 僕はきっかけを作っただけで、色々な人が動いているので別に僕の功績にする必要はないんですけど(笑)。
ただ、将来的に絶対に変わった方がいいと思うし、これが変わることによって財務省も見方が変わってくると思うんですよ。ギャンブルの税じゃないにしろ、「税金取りすぎ」と思ってる人もいるので。“財務省が国民のためを思ってくれている”と考えられるだけでも、違うじゃないですか。
競馬も大口で買うような人たちは、税金が怖くて買えないんです。「当たっても税金を持っていかれるなら、意味ないじゃん」って。でも、これって売り上げを下げているだけじゃないですか。だったら売り上げ額を上げて、(払戻金は)非課税にすれば脱税とかを検挙する手間が省けるんですよ。国税も税務署も。売り上げがあればその分税金は入るんだから、それでいいじゃん!って思う。他の仕事してくれよ!って思うんですけどね。
--給付金なんかしないで減税すれば、経済が回って豊かになるでしょ!って話と同じですね(笑)。
じゃい そうなんですよ! なんかね、結局後々取るんでしょ…?みたいな感じになってるので。
政界入りの誘いも、外から“一石”を投じ続ける
--ここまで数年活動されていて、税金に対する知見をお持ちで、今は実際に日本維新の会と意見交換までされてる。じゃいさんが政界に出た方が良いんじゃないかとすら思えます。
じゃい なんか言われるんですけど、誘われたりもするんですけど。やっぱ僕みたいな人は、議員になるのがなんかちょっと申し訳ないというか、そんな立派な人間でもないんで。
撮影・内外タイムス --そうでしょうか。税制の課題解決に取り組まれていますし、しかも知名度もあるじゃないですか?
じゃい でも競馬の税金しかやれることないし。僕は議員になれるような立派な人間じゃないですけど、でも、色々な議員と会っていると「俺の方がマシなんじゃないかな」って思う時もあります(笑)。
--それは最近お付き合いしていない方ですよね?
じゃい も、あります。
--たまにメディアで見るような方も?
じゃい そういう人もいますし。選挙で選んでる人が悪いのか、なんかわかんないですけど、もうちょっと立派な人。ただ立派な人は立派な人で、もしかしたら政界に入ったらつぶされたりするのかもしれないですけど。
--やっぱり一般人のお悩み相談を聞いたり、お笑い芸人としても知名度があるじゃいさんが政界に誘われるというのは、すごい納得感があります。
じゃい まぁでも…(笑)。できれば自分は政治家にはならずに、その人たちに託したいとは思ってます。
税制問題を解決するため、政治家との共演も(じゃいの公式YouTubeチャンネル「じゃいちゅ~ぶ」より) --競馬の税金でご自身が一番辛い思いを経験されてるからというのもありますか?
じゃい そうですね。純粋な部分はあると思うんですよ。この問題に協力してくれるという政治家の方から、よく聞かれるのが「それによって票が取れるなら、協力する」みたいな。そのスタンスがちょっと寂しいですね。
--自分の票が欲しいから、協力するということですか?
じゃい 「そういう目論見があると協力しやすい」みたいな。それが僕の中では「ちょっと違うんじゃないか」って思うんですよ。仮に僕に協力して声を上げて、それで票が取れるなら協力してくれる方はいっぱいいると思う。でも、僕が求めているのはそうじゃなくて、この税の仕組みを「本当におかしい!」と思って協力してくれる人。
そう考えると、選挙報道で当選すると事務所で万歳してるじゃないですか。目的は選挙に勝つことなのか、日本を変えることなのか、政策を達成することなのか、分からなくなってくるんですよ。万歳するの早くないか?って思っちゃうんですけど、政界の人と会っていくと「選挙に受かりたいんだ」と。そっちなんだ…という残念感はどうしても生まれてきてしまう。
--確かにそうですね。だったら今の立場で外から変わるきっかけとなる一石を投じる立ち位置の方が良い。
じゃい そうですね。これで下手に政治家になったら、つぶされたり邪魔されたりするような可能性だってなくはないと思います。
--逆に活動しづらくなる。
じゃい どうなんですかね? 別に財務省を敵に回しているわけでもないし、ただ「全体的にこっちの方がいいんじゃないか?」ということを言っているだけなので、あんまり敵がいる感じも戦っている感じもないですけど。もしかしたら、人によっては「余計なことをするな」という人もいるかもしれないです。
(第3回に続く)
インタビュー・文/加藤聡 内外タイムス編集部
《プロフィール》
じゃい(渡辺隆広) 1972年3月20日生まれ、神奈川県出身。お笑いトリオ「インスタントジョンソン」のメンバーとして活動。芸能界屈指のギャンブル好きとして知られ、特に競馬では独自のデータ分析を駆使した予想を展開。高額配当を的中させた経験も持つ。2022年には競馬の払戻金をめぐる税務上の問題を公表し、競馬ファンの税負担のあり方に問題提起。その後、一般社団法人「未来の競馬税制を考える会」を立ち上げ、競馬における税制の見直しを求める活動にも取り組んでいる。
