退職金“1500万円”が「10年で600万円の利益」に惹かれ、外貨建て保険にした父→3年後“母の介護”で解約したら「200万円の大赤字」に!?“利益額の現実性”や注意点を解説
外貨建て保険とは?
外貨建て保険とは、米ドルや豪ドルなど、日本円以外の通貨を基準に保険料や保険金、解約返戻金などが計算される商品です。円建て保険との大きな違いは、円で受け取る場合の金額が為替レートによって変わる点です。
例えば、10万ドルを受け取れる場合、1ドル150円なら1500万円ですが、1ドル120円なら1200万円です。外貨ベースでは同額でも、円換算額は大きく変わります。
金融庁は、外貨建て保険について、為替変動によって円換算した保険金などが払込額を下回る可能性があると注意喚起しています。
10年で600万円の利益を得ることは可能なの?
1500万円を10年後に2100万円へ増やすために必要な複利利回りは、年率約3.42%です。この水準は、現在の米ドル建て保険では非現実的とはいえません。
第一フロンティア生命が2026年9月に公表した米ドル建て・運用期間10年の商品例では、一時払保険料に対する実質利回りが年4%を超えています。そのため、「10年後に600万円増える」という数字そのものは十分あり得ます。
ただし、確認すべきなのは、その2100万円が「円で保証された金額」なのか、「外貨ベースの積立金」や「一定の為替レートを使った参考金額」なのかという点です。
また、本人が1500万円を負担して2100万円を一時金で受け取った場合、原則として利益は一時所得になります。
ほかに一時所得がなければ、600万円から特別控除50万円を差し引いた550万円の2分の1、275万円が課税対象となる所得に加算されます。
途中解約では元本割れに注意
外貨建て保険で特に注意したいのが、満期まで保有せず途中で解約する場合です。
主に「為替変動」「市場価格調整(MVA)」「解約控除」の影響を受ける可能性があります。
市場価格調整とは、解約時の市場金利などを解約返戻金に反映する仕組みです。一般に、契約時より金利が上昇すると返戻金を減らす方向に働き、金利が低下すると増やす方向に働きます。
さらに、商品によっては、早期解約時に解約控除が設定されています。例えば、契約から1年未満は10%、1~2年未満は9%などの控除が設定された商品もあります。
また、高齢者の契約トラブルにも注意が必要です。国民生活センターが2020年に公表した資料では、外貨建て生命保険に関する2019年度の相談は2020年1月末時点で483件あり、そのうち70歳以上が243件でした。平均契約購入金額は957万円です。
預金のつもりで話を聞いていたものの、実際には生命保険だったという相談事例も紹介されています。
まとめ
1500万円の外貨建て保険が、10年後に2100万円となり、600万円程度増えること自体は十分にあり得ます。
ただし、「600万円増える」という説明だけで判断してはいけません。円で受け取れる金額は為替によって変わり、途中解約では市場価格調整や解約控除によって元本割れする可能性があります。
契約書や設計書では、「10年後の金額」「現在解約した場合の返戻金」「積立利率の保証期間」「為替レート」「市場価格調整」「解約控除」を確認しておきましょう。
出典
金融庁 保険会社向けの総合的な監督指針(II .保険監督上の評価項目 II -4 業務の適切性)
第一フロンティア生命保険株式会社 積立利率変動型個人年金保険(19)(通貨指定型)
国税庁 No.1903 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級

