味噌汁に入れて食べるだけ…骨折と寝たきりを遠ざける「カルシウムと並ぶ栄養素をとれるキノコの名前」
※本稿は、森勇磨『年金暮らしでもお金をかけずにできる 0円予防医学』(高橋書店)の一部を再編集したものです。

■骨折を防ぐ「骨を強くする食材」
「転んで骨を折ったら、そのまま寝たきりになるかもしれない……」
この不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。実際、高齢者の大腿骨近位部骨折(太ももの付け根の骨折)は、年間20万件以上発生しており、骨折後に生活機能が大きく落ちてしまうケースも少なくありません。
つまり、たった1回の転倒が、その後の人生を大きく変えてしまう可能性があるわけです。「骨を守る」ことは、「自分の足で歩き続ける人生を守る」ことに直結するのです。
骨を強くする栄養素といえば、まず思い浮かぶのは「カルシウム」でしょう。そしてカルシウムといえば「牛乳」というイメージが強いかもしれません。ですが、じつは牛乳以外にも、安くて手軽にカルシウムを摂れる食品がたくさんあります。
まずおすすめしたいのが、「小魚」です。しらす干し、ちりめんじゃこなど、骨ごと食べられる小魚はカルシウムの宝庫です。ご飯にふりかけるだけでOKで、ふだんの生活にも取り入れやすいです。
次におすすめなのが、「厚揚げ」と「木綿豆腐」です。とくに厚揚げは、製造過程でカルシウムが濃縮されるため、絹ごし豆腐の約3倍のカルシウムを含んでいます。しかも1枚100円前後と、お財布にもやさしい食材です。
そして、案外知られていないのが「小松菜」。野菜の中でもほうれん草の約3倍のカルシウムを含み、年間を通じて1束100円前後で買えます。
■カルシウムの吸収を助ける栄養素
ただし、カルシウムは摂るだけでは不十分です。吸収されなければ意味がありません。そこで重要になるのが「ビタミンD」です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける「縁の下の力持ち」のような存在で、食事では鮭、しらす干し、干ししいたけなどに多く含まれています。
つまり、「小魚+干ししいたけの味噌汁」という組み合わせは、カルシウムとビタミンDを同時に摂れる、骨のための最強メニューなのです。
骨を強くするためには、一時的に頑張るのではなく、毎日の食卓に「骨にやさしい食材」を少しずつ取り入れていくことが大切です。
しらす干しをご飯にふりかける、厚揚げを味噌汁に入れる、小松菜を炒めものに使う--どれも調理の手間はほとんどありません。
■ビタミンDの「もう一つの役割」
「最近、つまずきやすくなった気がする」
「足元がなんとなく頼りない」
そんな変化を感じていても、「もう年だから仕方ない」と思って、そのままにしていないでしょうか。
もちろん、加齢による変化はあります。ですが、つまずきやすさや足元の不安定さの背景には、栄養不足が関わっていることもあります。そのひとつが、先述したビタミンD不足です。
ビタミンDは、腸でカルシウムの吸収を助け、骨の健康を守るうえで欠かせない栄養素ですが、近年では、ビタミンDが筋肉のはたらきにも深く関わっていることが分かってきました。不足すると筋力が落ちやすくなり、体のバランスも崩れやすくなります。その結果、ふらつきや転倒のリスクが高くなることがあるのです。
とくに気をつけたいのが、高齢になるほどビタミンDが不足しやすくなることです。日本人では、ビタミンDが足りていない人が少なくないとされ、とくに女性で不足している人が多いことも報告されています(注) 。
注:Nakamura K, Kitamura K, Takachi R, et al. Impact of demographic, environmental, and lifestyle factors on vitamin D sufficiency in 9084 Japanese adults. Bone. 2015;74:10-17.
■ビタミンDを増やせる“0円行動”
お金をかけずにできるビタミンDの補給方法のひとつが、日光を適度に浴びることです。ビタミンDは、紫外線を浴びることで皮膚でもつくられます。

散歩に出る、庭やベランダで少し外の空気に当たる--そんな毎日の小さな習慣も、ビタミンDを保つ助けになります。
ただし、必要な日光の量は季節・天候・地域・肌の露出の程度によって変わります。ですので、「1日何分で十分」と一律には言えませんが、無理のない範囲で少しでも外に出る時間をもつことが大切です。
食事では、「鮭」が代表的なビタミンDの供給源です。鮭の切り身1切れでも、かなりの量のビタミンDを摂ることができます。鮭缶も便利で、保存しやすく手軽に使えるのでおすすめです。
このほか、しらす干し、干ししいたけ、卵黄にもビタミンDが含まれています。毎日同じものばかりでは飽きてしまいますから、こうした食品を少しずつ組み合わせていくのが続けやすい方法です。
また、ビタミンDは油に溶ける性質を持っています。そのため、油を使った料理と組み合わせると吸収されやすくなります。
■ビタミンDを多く含む食材
ビタミンDを多く含む食材の中でも、とくにおもしろい特徴をもつのが「干ししいたけ」です。

干ししいたけには、日光に当てることでビタミンDが増える性質があります。これは、しいたけに含まれるエルゴステロールという成分が、紫外線を浴びることでビタミンDに変換されるためです。
やり方は簡単です。市販の干ししいたけを、調理前に30分~1時間ほど日光に当てるだけ。ひだ側を上にして当てると、より効果的とされています。晴れた日の窓辺でも一定の効果が期待できます。
味噌汁の具として使えば、
・ビタミンD → カルシウムの吸収を高め、骨を守る
・食物繊維 → 腸内環境を整える
・うま味成分(グアニル酸)→ 減塩にも役立つ
と、一石三鳥のはたらきが期待できます。
■防ぎたい「低栄養を招く行動」
「一人だと、ついお茶漬けと漬物だけで済ませてしまうんです」
これは、病院でもかなりよく耳にする言葉です。配偶者を亡くしたあとや、お子さんが独立されたあと、一人で食事をする日が続くと、どうしても食事が簡単なものになりやすくなります。
すると、食べる量だけでなく、食事の内容も偏りやすくなります。高齢になると食欲が落ちたり食事の支度が億劫になったりして、低栄養に傾きやすくなります。
実際、日本では高齢者の低栄養傾向は少なくありません。低栄養が続くと筋肉が減りやすくなり、体力や免疫力の低下を招き、フレイル(年齢とともに体や心の元気が弱ってきた状態)の進行にもつながります。
でも、ここで大切なのは、「きちんと料理をしなければいけない」と思い込まないことです。
必要なのは、「ちょい足し」の発想です。たとえば、目玉焼きをプラスする。それだけでも、タンパク質をしっかり増やすことができます。さらに納豆を1パックつければ、タンパク質の摂取をもうひと押しできます。
私が患者さんによくお伝えしている「30秒のちょい足し」をいくつかご紹介しましょう。
・レトルトの味噌汁に卵を1個加える → 手軽にタンパク質を補える
・納豆ご飯に小さな野菜を添える → タンパク質に加えて、野菜も少し補える
・パックご飯に魚の缶詰をのせる → タンパク質と、青魚ならEPAやDHAも一緒に補える
・トーストにチーズを1 枚のせる → タンパク質やカルシウムの補いになる
・お惣菜にゆで卵を1個足す → それだけで栄養の厚みが増す
コンビニやスーパーのお惣菜を使うことに、後ろめたさを感じる方もいます。でも、何も食べないより、出来合いのものでもきちんと食べるほうが、ずっと体の助けになります。
大切なのは、手づくりかどうかではなく、体に必要なものが入っているかどうかです。
「今日は、タンパク質を何か1つ足せたかな」--その一言を習慣にするだけで、食事は少しずつ変わっていきます。
■冷蔵庫に常備したい4つの食材
一人暮らしの低栄養対策で最も効果的なのは、「いつでも足せる食材を常備しておく」ことです。おすすめはこの4つです。
【常備ちょい足し4点セット】
・卵(1パック約300円)→ ゆで卵にしておけば、いつでも「ちょい足し」できる。タンパク質・ビタミン・ミネラルが豊富
・納豆(3パック約120円)→ 冷蔵庫に常備するだけ。毎朝ご飯にのせるだけで栄養が変わる
・魚の缶詰(1缶約150~200円)→ サバ缶・イワシ缶はEPA・DHAも豊富。パックご飯にのせるだけで立派な1食
・ プロセスチーズ(6個入り約300円)→ 間食にも、料理にも使えるタンパク質+カルシウム源

この4つで合計1000円くらい。1食あたりの値段は100円程度です。
「手抜きでいい、足すだけでいい」--その気楽さが、一人暮らしの低栄養を遠ざける最大の武器です。
「料理が面倒」「一人分をつくるのが億劫」--そんな気持ちは当然です。でも、食事を整えることは、料理の腕前がなくても、あるいは手間をかけずとも可能です。
卵を1個、納豆を1パック。その「ちょい足し」の積み重ねが、一人暮らしの毎日を、たしかに支えてくれます。
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森 勇磨(もり・ゆうま)
産業医・内科医 ウチカラクリニック代表
「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもとYouTube「予防医学ch/医師監修 ウチカラクリニック」を開設、現在のチャンネル登録者数は77万人を超える。著書に『100年長生き 予防医学で健康不安は消せる!』ほか。
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(産業医・内科医 ウチカラクリニック代表 森 勇磨)
