JR東日本を女性社員が提訴、同僚から女性用トイレで盗撮被害…「被害者と伏せて」と求めるも社内に伝わり休職
職場の女性用トイレで、同僚から盗撮された後、会社の対応によって精神的苦痛を受け、休職に追い込まれた──。
そう主張する女性社員が9月18日、東日本旅客鉄道(JR東日本)を相手取り、約817万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
原告側が問題としているのは、盗撮そのものではなく、その後の会社の対応だ。被害者が特定されるような情報が職場内で広まったことや、異動などの対応が不十分だったことなどから、社員が安全に働けるよう配慮する義務(職場環境配慮義務)に違反したと主張している。
女性は同日、代理人らとともに東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き「時間が経つにつれて、とても寄り添っているとは感じられなくなりました」と会社の対応を振り返った。そのうえで「企業体質を改めていただきたい」とうったえた。
●伏せてほしかった「被害者」の情報が職場に
訴状などによると、都内で同じ職場に勤務していた男性社員が2024年8月、JR浦和駅の公衆トイレでの盗撮事件で逮捕された。その後、押収されたスマートフォンから、女性社員も盗撮被害にあっていたことがわかった。
代理人によると、男性社員は社内での盗撮について性的姿態撮影等処罰法違反の罪で起訴され、同年11月に有罪判決を受け、確定した。会社は同年9月、社内での盗撮行為を理由に男性を懲戒解雇したという。
女性は、身の安全とプライバシーを守りながら仕事を続けるため、自分が被害者であることを伏せるよう会社に求めていた。しかし、上司らを通じて職場の一部に伝わったという。
さらに、会社が開いた社員説明会では、女性を含む被害者側が事前に「説明しないでほしい」と求め、会社側も了承していた犯行場所や手口まで説明されたという。女性側は、これらの情報が重なったことで、被害者を特定できる状態になったと主張している。
「同僚から、興味本位による不必要な質問や、心ないセクハラ発言を受け続け、会社に行くことが怖くなりました」(会見での女性)。
●「盗撮はよくあること」と言われたと主張
女性はほかの被害者とも話し合い、事件の公表を会社に求めたという。被害に遭ったトイレは社外の人も利用し、イベントの際には一般客にも開放されていた。男性は駅の公衆トイレでも盗撮していたことから、「公益性の観点から、公表が必要だと考えました」と説明する。
これに対し、会社側から「うちで盗撮はよくあること。過去の事件も公表していないから今回もおこなわない」と言われたという。また、産業医から、カウンセリングの際に「うちで盗撮はよくある。捕まっているだけ良いほう」と言われたとしている。
「被害者として、鉄道会社社員として、盗撮を『よくあること』と扱うことに、強い憤りを感じました」(女性)。
原告側によると、会社側は団体交渉の中で、こうした発言があったことを否定しているという。
●証拠隠滅に関わった社員「処分なし」
女性側によると、逮捕された男性は職場のごみ置き場から使用済みの生理用品や女性用の指定靴を持ち出し、机やロッカーに隠していたという。
さらに男性は勾留中、同じ会社の社員である妻を通じて同僚に、ロッカーや机の中にある物を移すよう依頼。同僚は実際に夜間、職場を訪れ、移動を試みたとしている。
女性は、会社が持ち去りについて被害届を出さず、関わった社員も処分しなかったことについて、「被害の矮小化か、隠蔽であるとしか思えませんでした」と話した。この社員は配置換えもされず、同じ職場で働き続けたという。
窃盗に関する被害届について、会社は女性に「警察から被害届は受理しないという見解があった」と説明したという。しかし、女性が警察に問い合わせたところ、「そのようなことはない」と言われたとしている。
●希望した異動先が提示されるまで約3カ月
女性は被害を知った直後から頭痛などに苦しみ、その後、精神疾患と診断された。退職も考えたが、会社から「要望に合う異動先を探すので、決断は待ってほしい」と言われ、職場に残ったという。
その後、医師から休養が必要と診断された際にも、担当者から「異動できなくなるから休職はおすすめしない」と言われたとしている。
「専門職として働いていた私にとって、異動はキャリアを捨てることと同義でした。それでも、被害者として好奇の目にさらされるよりはましだと考え、女性が多い職場、盗撮された制服を着ない職場等の異動の希望を出しました」(女性)
しかし、会社が異動先を示したのは約3カ月後だった。女性側によると、提示されたのは、被害に遭った当時と同じ制服と名札を着ける職場で、希望に沿うものではなかったという。
「辞めさせてももらえず、休職させてももらえず、異動すら叶わない状況が続き、逃げ場がありませんでした」(女性)
女性は同年12月に精神疾患と診断され、2025年1月から休職している。労災認定も受けたという。
一方、会社は団体交渉で「本人の希望に寄り添って対応していた」「早急に動いた結果、3カ月になった」と説明したという。
女性側は、慰謝料400万円のほか、休職によって受け取れなかった賃金や、減額された賞与などを請求している。
●「性被害に厳格な姿勢だと期待されている」
女性は発覚当初、会社には「寄り添う姿勢」も見られたが、「あくまで口頭のみで、その後の対応については全く行われなかった」と振り返る。
「本来であれば、性被害ということもありますので、被害者保護、秘匿情報というのは保護していただきたかったですし、関係者についても処分していただきたかった」(会見での女性)。
代理人の北村晋治弁護士は「鉄道会社は『痴漢を許さない』というキャンペーンを打っており、一般の人たちは、鉄道会社は最も性被害に厳格な姿勢を持っていると期待しているのではないか。実際はまったく違う。そこに大きな問題性を感じている」と述べた。
弁護士ドットコムニュースは、提訴の受けとめのほか、双方の認識に相違がある点などについてJR東日本に見解を求めた。JR東日本は「訴状が届いていないので、現時点でコメントは差し控えさせていただきます」と回答した。

