交際相手だった女性へのストーカー行為を繰り返した末、殺害した事件が東京・世田谷区で起きた。2025年9月、バン・ジウォンさん(当時40歳)が首をナイフで刺され死亡。殺人とストーカー規制法違反の罪に問われたパク・ヨンジュン被告(31)に、東京地裁は拘禁刑20年を言い渡した。

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 被告による一連のストーカー行為および行動履歴からは、以下の具体的な数字が判明している。警察に帰国を促されたあと、自宅への押し掛けが8月29日夕方から30日朝にかけて13回、ブロックされた状態でのメッセージと電話が事件当日の朝までに10回、位置情報を探すサイトでバンさんの番号を検索(8月31日未明)したのが12回。

 また、成田空港からバンさん自宅付近まで戻った距離(地図上での直線距離)は約60km、殺害現場となった写真スタジオでの待ち伏せ時間は5時間14分、犯行に使用したナイフの刃体の長さは12.8cmだった。

 これらの数字から何を読み取ることができるのか。犯罪心理学者の出口保行氏は「見て分かる通り、かなり執拗にしつこくやっている。多くのストーカー犯罪を心理分析していた立場からしてみると、この中で注目すべきなのは、やはり成田から自宅付近まで戻る60 kmという物理的な距離。これは大きな着目点になる」と指摘。

「60 km物理的な距離が離れている、それだけ時間もかかるということ。その間に、自分が今しようとしていることを自分の中で内省する時間が当然あったはずだが、特にこういうストーカー行為を行う人間というのは非常に視野が狭まっている。この視野狭窄状態の中で行動をしていくから、自分を振り返ったり、自分の今の行動が次に何につながるのかということ、そこら辺を正確に見ることができない」(出口氏)

 さらに「プラスその下の5時間14分。これぐらい待つ人間はもちろんいるが、5時間14分待つとなったら、これは普通ではない。1~2時間待つストーカーはいる。ただ、60km移動してさらに5時間14分待つ、この数字というのが飛び抜けて距離も長いし時間も長いというのが、この犯人の執拗さの表れ」と続けた。

 視野狭窄はどのような段階を踏んでいくのか。出口氏は「基本的には徐々に狭まっていくもの」と前置きしつつも「ある程度時間は短時間のうちに狭まってしまう。なので自分のことを正確にきちんと考えるということができなくなってしまう。ハタと考えてみれば『そんなことやったらおかしいでしょ』ということを当然本人もわかる。だけど、その時点ではそういうことがまったく頭の中によぎってこない。相手をどうやってアタックするのか、ということだけに注力してしまうというのが特徴的なこと」と解説。

 殺意が芽生えたタイミングについては「基本的にこういう事件の場合は、ある程度殺意が芽生えるのは早い。相手に対して、自分の言うことを聞かせることがまず第一で、言うことを聞かなかったら相手を殺害することまで視野に入れて行動していることが多いので、そういう面ではストッパーがかからない状態でずっと突っ走っていた、というようなことは言える」と推察した。

 出口氏は「私たちが思っている、想像している『これぐらいのことだけやっておけば、ある程度は防げるよね』という“常識”は、完全に裏切られると考えておいたほうがいい。常識で言って『ここまでやって、さらにその上まで要望していれば、まあやらないでしょ』と思っていたら、そこをあっという間に乗り越えてくるというのが、こういうストーカー犯罪の一つのポイント」と言及。

 その上で「自分の行動を顧みることが一切ない。批判的に見ることが一切ない。となれば『相手がこれぐらいのディフェンスをしてくれば、それで乗り越えられなくなるだろう』という常識は通用していないということ。防犯はみんなそうだが、常識を超えてくるから犯罪は起こるわけだ。『これぐらいやっておけば、多分大丈夫でしょ』というのが守られないからこそ、犯罪はいまだにこれだけ起きている。やはりその時の常識をどう見返すことができるのかが一番大事なポイント」と警鐘を鳴らした。

(『ABEMA的ニュースショー』より)