「このまま賃貸に住み続けるの?」…47歳会社員、団地から3,500万円の分譲マンションへ。13年後、定年とともに始まった「住宅ローン地獄」

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ローンを組むなら今のうちと、40代後半で住宅を駆け込み購入するケースは少なくありません。しかし、その後に押し寄せるのは、「定年後の収入カット」「じわじわ上がる維持費」、そして「使ったら後がない退職金」--。せっかく買った家のせいで、夫婦関係まで悪化することも。見ていきましょう。

「私たち、このままずっと団地?」…47歳でマイホーム購入の裏側

「このまま、ずっと団地で暮らすの?」

そう妻から言われたのが、マンションを購入したきっかけだったと話す高橋和彦さん(仮名・62歳)。

購入したのは、和彦さんが47歳のとき。家族3人で暮らしていた団地は住みやすかったものの、妻の洋子さん(仮名)は「友人たちはみんな持ち家なのに。ずっとはここは嫌よ」と、団地暮らしを気にしていたといいます。

相談した結果、買うなら年齢的にもラストチャンスだろうと、3,500万円の新築マンションを購入することに。3LDK、地方都市の駅近物件です。

当時、夫婦には1,500万円ほどの貯金があり、そのうち700万円を頭金に充て、2,800万円の住宅ローンを組みました(返済期間28年、ボーナス払いなし)。そして、残りの800万円は娘の教育費や万一の出費に備えて手元に残すことに。

「毎月の返済は9万円5,000円くらい。夫婦とも働いて世帯年収は900万円弱あったので、なんとかなるだろうと。節約して定年までには繰上げ返済しようと話していたんです」

ところが、その判断が60代になって重くのしかかることになります。

60歳で直面した「ローン危機」…夫婦喧嘩ばかりの毎日に

和彦さんが60歳で定年を迎えたとき、住宅ローンの残債はまだ約1,600万円強。繰上げ返済が思ったように進まず、娘の大学進学費用に貯金を使った一方で、受け取った退職金は約1,000万円でした。

退職金をすべて返済に充てれば残債は約600万円まで減らせます。しかし、それでは老後の手元資金が心もとない。結局、退職金には手をつけず、住宅ローンはそのまま残すことにしました。

そこからの返済は一層大変になりました。定年後、嘱託社員になったことで年収は現役時代の約580万円から330万円ほどにがくんと減少。さらに、妻も引き続きフルタイムで働く予定でしたが、親の介護などがあり、月4万円程度のパート収入しか得られなくなりました。

追い打ちをかけたのが、マンションの維持費。購入当初、管理費と修繕積立金は合わせて月1万6,000円ほどでした。しかし築年数の経過とともに引き上げられ、とうとう月3万円近くに。住宅ローンと合わせると、住居費は月12万5,000円を超えるように。

「収入が減り、住宅費は上がってしまった。」

住宅ローンの返済負担率について、住宅金融支援機構の2026年1月調査では「15%超~20%以内」が26.2%で最も多くなっています。和彦さん夫婦の返済負担率は購入当時16%ほどで、こうした水準と比べても決して高かったわけではありません。

しかし、現役時代の世帯年収を基準に「返せる」と判断してしまうと、定年後の収入減や維持費の上昇まで十分に織り込めない可能性があります。

家計が苦しくなるにつれ、夫婦の会話はお金のことばかりになっていきました。

「あなた、もう少し働けないの?」

「そもそもマンションが欲しいと言ったのは君だろ!」

62歳で、減ったとはいえ固定収入があるのに、それでも苦しい状況。65歳以降の収入がどうなるかわからず、それでも住宅ローンの返済が続くことを考えると、「この家に住み続けることが本当に正解なのか」という疑問が膨らんでいきました。

「もっと早く手放せばよかった」

最終的に、和彦さん夫婦はマンションを売却することを決断。幸い、周辺の中古マンション価格が購入時より上昇していたこともあり、ローンを完済したあとも手元に500万円ほどを残すことができました。

2人暮らしになった夫婦が選んだのは、家賃6万5,000円の築年数の経った賃貸マンション。 和彦さん夫婦の年金は、65歳以降、2人合わせて月20万円ほどになる見込み。家賃は年金の3分の1程度に収まり、住宅ローンを抱えていたころと比べて、毎月の住居費を大きく抑えられる見通しとなりました。

「最初は、せっかく買った家を手放すなんて情けないと思いました。でも、実際に引っ越してみたら、毎月のお金の心配がかなり減った。夫婦喧嘩も明らかに減りました」

洋子さんは、いまでは「もっと早く手放せばよかった」と笑います。

「昔は『持ち家じゃないと恥ずかしい』と思っていました。でも、60歳を過ぎてみたら、見栄よりも毎月の安心のほうが大事。マンション暮らしが厳しくなったら、市営団地に引っ越そうねと話しています」

和彦さんは、住宅購入を振り返ってこう話します。

「先の見通しが甘かったですね。『なんとかなる』なんて楽観的でしたが、実際にはどうにもなりません。『今払えるから大丈夫』ではなく、収入が減ったあとも払えるのかまで考えるべきだったと思います」

住宅ローンは、借りられる金額と無理なく返せる金額が同じとは限りません。とくに50歳前後でローンを組む場合、定年後の収入減、退職金、修繕積立金や管理費の上昇、そして老後の生活費まで含めて考える必要があります。

持ち家を手に入れること」がゴールではなく、その家に住み続けるための費用を、収入が減ったあとも負担できるのか--。和彦さん夫婦のケースは、そんな当たり前のことを、定年後になって突きつけられた例といえるでしょう。