隣の客が動画を配信し始めたらあなたはどうする?

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 たびたびSNSで議論になる、新幹線車内でのマナー。なかでも昨今、大きなトラブルに発展している迷惑行為の最たるものは「動画配信」である。「うるさい」「迷惑」「周りのことを考えてほしい」などと、非難する声が相次いでいるのだ。

 移動中、新幹線車内では眠りたいという人も多い。ところが、配信者は周りのことなどお構いなしに連続で話し続ける。それだけでなく、配信中に前後の客の顔が映像に映り込んでしまう可能性もある。新幹線車内での配信はトラブルの火種になる要素を多数抱えているといえよう。

 近年、配信者が増加している背景には、彼らにとってかなり切実な“懐事情”が影響しているといわれている。今年起こった炎上騒動をもとに、公共交通機関の車内マナーを今一度、考えてみたい。【取材・文=宮原多可志】

【写真】ここで動画配信されたらあなたはどう思う? J R東日本の最高級座席「グランクラス」のゆったりシートの様子

相次ぐ配信者の迷惑行為

 以前から新幹線の車内で配信をしたり、動画を撮影する行為を問題視したりする意見はあったが、今年はそんな配信者がたびたび炎上している。まず、3月には美容系インフルエンサーの女性が東北新幹線の「グランクラス」車内で配信した動画が炎上した。

隣の客が動画を配信し始めたらあなたはどうする?

 配信の内容はファンの恋愛相談に答えるものだったが、次第にエスカレート。なかには性的な話題や下ネタを含んだトークも展開されたという。批判を受け、配信者はXで謝罪している。グランクラスはグリーン車を上回る最上級座席で、料金も高額になる。車内は貸切状態だったというものの、公共の場であることに違いなく、何をしてもいいというわけではないだろう。

 翌4月には、親子連れのYouTuberが東海道新幹線のグリーン車の車内で配信を実施。近くに座っていた乗客から叱責されたものの、その後、「変なジジイに絡まれた」などと発言し、反省の色を見せなかったことで大炎上した。批判の声は収まらず、結局、謝罪に追い込まれてしまった。

 少なからず、人々は公共交通機関でのマナー問題について関心を持っている。特に、新幹線は長時間乗車するうえ、乗客は決して安くない料金を払っている。だからこそ、迷惑行為をする人がいれば“座席ガチャ”に外れた気持ちになってしまうため、不満が高まってしまうのだろう。

移動時間を金に換えたい

 なぜ、配信者は新幹線の車内で迷惑行為をしてしまうのだろうか。大きな理由は、YouTuberが増加して飽和状態になって競争が激化していること、そしてYouTube側から支払われる報酬が安くなっていることが影響していると思われる。そのため、単価が大きく“投げ銭”で収入が得られる配信や、ファンと繋がってイベントやグッズで収益を得るスタイルに転換する人が増えているためと考えられる。

 配信者は、移動時間を少しでも金に換えたいという思いがあるだろう。新幹線は長時間乗車するため、スキマ時間を有効活用して動画を撮影するのに向いているのだ。しかし、配信者の都合に付き合わされる乗客はたまったものではない。傍らで興味のない内容のトークを聞かされる羽目になってしまうのだ。

 何より、鉄道会社のガイドラインでは無許可での商用撮影は禁止しているため、投げ銭を募る行為や、収益化を図る目的で動画を撮るのは問題と考えられる。こうした相次ぐ問題行動に、SNSでは「新幹線内での動画撮影そのものを禁止してほしい」という声も上がるが、旅の思い出を純粋に残したいと思う人にとっては悲しい事態になってしまうだろう。

 最近の新幹線は座席の背もたれも高くなり、前後の客の姿が見えにくい。グランクラスなどは特にそうで、プライベート感が大きく、快適性も高い。そのせいで、自分だけの空間と勘違いした配信者が、周囲の乗客のことを意識せずに配信してしまうのかもしれない。公共交通機関は撮影スタジオではないと、配信者は肝に銘じるべきであろう。

JR東日本はどう対応しているのか

 街を歩いていると、至るところで配信者が動画を撮影しているのが目につく。そのため、既出のような炎上騒動は今後も起こり得る可能性が高い。では、鉄道会社は一連の騒動をどのように見ているのだろうか。前述の東北新幹線など数多くの新幹線を運行するJR東日本の広報に質問状を送ったところ、以下のようにメールで回答があった。

--御社の新幹線車内で動画配信トラブルは起きているのか。件数や、どういった内容のトラブルなのか、公表できるものがあればうかがいたい。

JR東日本:車内での撮影や通話等に関して、お客さまからご意見をいただく場合がありますが、具体的な件数や内容については回答を差し控えさせていただきます。

--新幹線車内で動画配信する人に対して批判の声が出ているが、どのように考えているのか。

JR東日本:弊社では、収益性のある動画共有サイトへの投稿等の営利活動を除き、個人的な趣味の範囲での録音・撮影につきましては、安全上の問題がなく、ほかのお客さまのご迷惑にならなければ、特に禁止をしているものではございません。

 しかしながら、運行中の列車に向けてのフラッシュの使用、ホームでの脚立の使用、立ち入り禁止区域での録音・撮影といった、列車の運行に支障をきたすおそれのある行為はおやめください。

 また、無断で他のお客さまや係員を撮影することや大きな声を出して周囲のお客さまのご迷惑となる行為は、他のお客さまとの間でトラブルになるといった事象も考えられますので、周囲へ十分ご配慮いただきますようお願いいたします。

収益化を図る撮影は“原則”お断り

--新幹線車内を舞台にして動画配信を行い、収益化を図っている配信者もいるそうだが、これは新幹線の商業利用ともいえる。こうした行為に対して、どのように考えているか。

JR東日本:弊社敷地内における収益化を図る撮影については、原則お断りをさせていただいております。

--動画配信に対して対策をとる予定はあるのか。

JR東日本:弊社では、2024年に駅のホームにおいて無断で他のお客さまを撮影し周囲のお客さまにご迷惑をかける行為や、沿線での撮影において線路内に立ち入り列車が非常停車するなど、当社施設内等での撮影において様々な事象が発生したことから、ホームページ上に、当社施設内等における撮影マナーに関するお願いの掲出を開始いたしました。

 また、2025年には駅ホームにおいて、録音や撮影に伴う危険な行為により、周囲のお客さまへのご迷惑となる事例が多数発生したことから、駅ホーム上での危険な行為を防止することを目的としたポスターの掲出等を実施しています。

 今後もルールやマナーの周知を含め、すべてのお客さまに快適にご利用いただける環境づくりに取り組んでまいります。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部