青木真也、故郷の地で見つめる43歳の自分「RIZINでの世界線は短い。プロ選手としての上がり目がないことも分かっている」穏やかな気持ちと静かな闘志

9月10日に京セラドーム大阪で開催される『ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』にて青木真也が約10年ぶりにRIZIN参戦を果たし、朝倉未来と対戦する。
大会まで1カ月を切った8月中旬、インタビューは青木の地元・静岡で行われた。青木は2024年から地元静岡と東京で二拠点生活を送り、週の半分は静岡で過ごしている。静岡では有酸素やスプリント系のトレーニングが中心で、取材場所は有度山の麓にある平澤寺。青木の母校・静岡学園の旧校舎近くにある寺院で、青木が高校時代に毎朝階段ダッシュを行っていた場所でもある。
ロードバイクで颯爽と現れた青木は約100段の階段ダッシュを繰り返したあと、独占インタビューに応じてくれた。インタビュー前編ではRIZIN参戦を中心に、日本MMAの未来を担う秋元強真との練習を通し、青木が一競技者として43歳を迎えた自分とどう向き合っているかを語ってくれた。
「もし秋元強真というスパイスがなかったら、俺も悪運尽きていた」

--まず対戦カード発表会見を終えて、率直にどんな感想を持ちましたか?
青木:RIZINファンにも認知されているんだなと思いましたね。みんなYouTubeを見てるんだなって。
--朝倉未来選手の対戦相手として、もっと外敵的な反応が多いのかなと思っていました。
青木:そこまで気にしてなかったですよ、俺自身は。主催者に会見に呼ばれて、会見場に行って、会見やったみたいな。そのぐらいです。空気を読めないやつが(会見前に)『誰とやるんですか?』とか『本当に朝倉未来とやるんですか?』と聞いてきましたけど、全部シカトしていましたね。こういうことってどこからどう漏れるか分からないんで。近しい人にも言っていなかったですし、あんまりしつこいヤツには『芦澤竜誠とやります』って言ってました。
--RIZINに出ることについて、発表前後で心境の変化はありましたか?
青木:変わらずですね。で、これ以上は仕事を増やしたくない。人によっては朝倉とやった後は桜庭大世とやってほしいと言いますけど、それはちょっと…って感じですよね。RIZINでの世界線は短いものだと思います。
--このタイミングで青木選手がRIZINに戻ってきて、その一発目の相手が朝倉未来選手で、これ以上にインパクトがあるカードは浮かばないですね。
青木:俺自身もこれ以外はないと思うし、“イベント側=RIZIN”としてもこれ以上はないでしょう。俺はそれでいいと思っていますよ。
--言い方を変えればこのタイミングじゃなかったら青木真也vs朝倉未来というカードをやる意味がない。
青木:本当にいいマッチメイクだと思います。そこには秋元強真という要素もあるし。RIZINはSNSマーケティングに長けているじゃないですか。おそらく青木真也と秋元強真が一緒に練習していることが、予想以上にSNSで数字を持っていることに気付いたと思うんですよね。そのエビデンスがあったうえで青木真也vs朝倉未来というマッチメイクが出てきたんだと思います。だから俺は秋元強真に感謝しているんですよ。もし秋元強真というスパイスがなかったら、俺も悪運尽きていたと思うので。
「俺は自分の実力をわきまえていますよ。だから自分のベストを尽くす、それだけなんです」

--もともと秋元選手はどういう経緯で練習するようになったんですか?
青木:一切面識もなかったんですけど、秋元選手が俺と練習したいと言ってきてくれて。最初は揉めると思われていたみたいで佐伯(繁)さんに止められていたんですけど、パッチー・ミックスと試合が決まってミックス戦に向けて練習したいということで佐伯さん経由でつながった感じですね。
--秋元選手とはミックス戦後も継続して練習しているのですか?
青木:週1でやってます。秋元選手と練習すると今の自分を可視化できるんですよ。
--自分を可視化、ですか?
青木:はい。彼のような選手と定期的に練習することで、今の自分がどのくらいのところにいるかが分かる。週1ぺースでも彼と練習することで、彼に対して失礼のないように自分のコンディションを整えるから、それをやることで見えてくるものがあるんです。きっとこれが自分の練習だけだったら、ここまで見えてなかったと思います。自分の練習イコール自己責任だけど、究極自分が練習できなかったら、自分が痛い目を見て終わりじゃないですか。でも相手がいて、相手に頼まれる練習になると、相手のためにベストの練習をしないといけないから、そこで差が出てきますよね。
--今までは青木選手は練習相手を雇ってきた側で、雇われる側になったことで気づいたことがあるんですね。
青木:正直俺が雇ってきた練習相手がそこまで責任感を持ってやっていたかどうかは分からないけど(苦笑)、俺は相手に失礼がないようにしなきゃいけないと思って練習しているので、そこで分かることがありますね。
--しかも秋元選手は青木選手よりも年齢もキャリアも下で、そういう選手と肌を合わせることに意味があるのかもしれないですね。
青木:秋元選手の仕上がりや吸収速度を見ると、はっきり言って観念はしますよ。今の自分がどういう状況が分かるんで。ただ彼のような選手はこれからもっともっと出てきちゃうと思いますね。3~4年後には秋元本人が第2・第3の秋元強真の登場に悩むはず。近い将来、彼が特別ではない時代が来ると思います。今までも秋元レベルはいないにしても、もう30歳近いけど野村駿太がいるし。そういう選手たちを見ると、俺ももう危ねえなと思いますよね。
--同じ階級で言えば野村駿太vsパトリッキー・ピットブルやルイス・グスタボのような試合はもう出来ないですか?
青木:俺はそう思います。俺は自分の実力をわきまえていますよ。だから自分のベストを尽くす、それだけなんです。ここから急速に成長しようとは思わないし、もうそれは出来ない。よくベテラン選手が自分はまだまだ伸びていると言うけど、俺はあれは嘘だと思います。そう自分に言い聞かせないとやっていけないのかもしれないけど。俺は自分の競技者としての上がり目だけじゃなくて、プロ選手としての上がり目がないことも分かっているから。(今の)自分はできて延命。それを可視化できているなと思います。
文/中村拓己
(後半に続く)
