テレビ信州

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特集です。

長野県高山村の老舗旅館が今、廃業の危機に直面しています。再生に乗り出したのは、温泉とサウナに魅せられた24歳の若者です。
「自分を救ってくれた場所をなくしたくない」

旅館の未来を懸けた挑戦です。

厨房にはこびりついた汚れ。そして、ロビーを埋め尽くす大量のごみ。かつての面影は、ほとんど残されていません。

高山村の老舗旅館「The TOJIBA松川館」。かつては、県内外から大勢の宿泊客が訪れていました。

しかし、前の経営者が経営難に陥り、今年5月に営業を休止。館内には今も、営業当時のままの状態が残されています。

今、この旅館の再生に挑む24歳の若者がいます。長野市出身の支配人、宮沢直泰さんです。

宮沢さんにとって松川館は、ただの温泉宿ではありません。去年4月、客として訪れたこの場所で心が救われたといいます。当時は、長野市内の病院で看護師として勤務。職場の人間関係などに悩み、心身の不調を抱えていました。そんな宮沢さんを支えたのが、温泉やサウナだったのです。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「看護師業界っていうところの雰囲気や人間関係に疲れてしまって、私としては合わないなと、その時に思ってしまって、温泉とかサウナというところは、つらい時期とかも通して来させていただく場所ではあったので、自分の心が一番穏やかにいられる場所で働こう、働きたいなと思ったのが一番のきっかけになります」

温泉やサウナに癒やされた経験が、宮沢さんの人生を大きく動かしました。去年9月、宮沢さんは松川館の従業員として働き始めます。

宮沢さんが、この宿にひかれた理由。
それが、山田温泉の湯を源泉かけ流しで楽しめる内湯です。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「初めて内湯に入った時に、温泉の泉質がすごくいいなって思ったのが第一印象で、すごく気に入ってしまって、夜中とかも2時間、3時間とか平気で入っていた場所なので、ここは特にお気に入りというか一番思い入れが詰まってるんじゃないかと思っています」

源泉は今、温泉成分が固まって出ないままです。
それでも宮沢さんの温泉への愛情と再生への願いは、少しも揺らいでいません。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「いいお湯が出るっていうのは確かなので、さらにそれをもっと引き立てられるような雰囲気にいずれはしていきたいっていうのが理想」

そして、宮沢さんの心をつかんで離さないのが、このサウナです。クラウドファンディングで、1000万円以上を集め、4年前にできた絶景サウナ。かつては大勢の人がこの景色と"ととのう時間”を求めて、訪れました。

宮沢さんもまた、その一人。だからこそ、この場所にもう一度人が集う日を目指しています。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「座った座面から見える景色、松川渓谷が唯一ここから望める場所なので、座ってサウナを楽しみながら景色を見ながらっていうのが一番お気に入りですね」

そんな自分の心を救ってくれた場所を、今度は自分の手で未来へつなぎたい…

その思いに背中を押された人がいます。今年7月、松川館の事業を継承し、新たな代表となった大橋祐哉さんです。旅館再生事業を手掛ける会社を経営し、これまで7年間、AIを活用した集客支援などを通して、松川館を支えてきました。その中で、大橋さんが大切に感じていたのが、宮沢さんの変わらぬおもてなしの心です。

One Ism 大橋祐哉代表
「(宮沢支配人は)何か失敗した時にすごく自分で考えて、どうにかしようっていう気持ちが強いっていうのと、お客さんに対しての接客がやっぱり一番すごいなと思っていまして、松川館に7年ぐらい関わらせてもらっているんですけど、初めてお客さまから手紙を指名でもらっていたんですね。そういうのを見て、この方しかいないなと思って」

大橋さんは、24歳の宮沢さんを支配人に抜てき。旅館再生の命運を託します。

しかし、その若き支配人を待ち受けていたのは、想像を超える厳しい現実でした。

One Ism 大橋祐哉代表
「まだ50分の1とかじゃないですかね。思ってたよりごみがすごくて」

大勢の客を受け入れてきた老舗旅館。その陰には、想像を超える量のごみが残されていました。
片付けても、片付けても、先はまだ見えません。それでも宮沢さんは、前を向き続けます。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「僕たちは単純なごみだと思っていなくて、今までの膿が出たんだなっていうぐらい前向きに捉えて、それが出た暁には、すごくクリーンで明るくて居心地のいい場所になる。それを目指して、頑張るだけです」

自分が温泉やサウナに救われたからこそ、今度は、この場所で誰かを笑顔にしたい…
それが宮沢さんの思いです。

The TOJIBA松川館 宮沢直泰支配人
「できる、できないじゃなくて、絶対復活させないといけないなっていうのが一番あります。来たお客さまが幸せな顔をして満足して帰っていただく。もう一度、その光景を見たいっていう気持ちが一番強くて、再開に向けて頑張っています」

今年の冬の再開を目指し、老舗旅館の再生に挑む宮沢さん。
その挑戦は、まだ始まったばかりです。