誤嚥性肺炎は自覚がないまま進行する【長生きのど習慣】
長年の気づかない誤嚥が肺炎予備軍の原因になる
ノドの力が衰えてきていることは、外側から見てもわかる場合があります。確認したいのは、ノド仏の位置です。ノド仏は喉頭挙上筋群が支えていますが、筋力が衰えるとノド仏が徐々に首の下のほうに落ちてきます(あまり目立ちませんが女性にもノド仏はあります)。下のグラフで示したのは、年齢ごとのノド仏の位置です。30歳代から下がり始め、50~60歳代では急激に下がります。そう、ノドの筋力と反射運動は気づかないうちに少しずつ衰えているのです。
「そう言えば50歳頃からムセることが増えたなあ」と感じていませんか? 実は、このときにわずかに誤嚥をしている可能性があります。体力も筋力もキープできているこの年頃は、ムセることで喉頭から気管に入った食べ物を排出できますが、完全に取り除くことができず、少量の食べ物が肺に入っていることも考えられるのです。
問題は、こうした小さな誤嚥が10年、20年と続くことです。これが原因で気づかぬうちに肺炎予備軍になっていたり、肺の奥にある直径1~2ミリほどの細気管支に炎症が起きる「誤嚥性気管支炎」になってしまったり……。さらには、ノドの機能が衰え誤嚥してもムセることができない「不顕性誤嚥」を招き、知らぬ間に「隠れ誤嚥性肺炎」となっていることもありえます。
ノド仏が下がってきたら注意
ノド仏の位置 年代ごとの変化
喉頭挙上筋群によってあごから吊られた状態になっているノド仏(第5・6頸椎の間にある)。喉頭挙上筋群の力が衰えるとノド仏の位置は下がる。30歳代で徐々に下がり始め、男性は50歳代で、女性も60歳代で急激に下がる。
隠れ誤嚥性肺炎に注意
誤嚥性気管支炎
わずかな量の食べ物でも誤嚥を慢性的に繰り返していると、細気管支が炎症を起こして、食事中にたんが出たり、食後にたんが増えたりする。
誤嚥性肺炎
呼吸機能が悪いと誤嚥物を咳で出せないので、いきなり肺で炎症が進んで肺炎を発症することもある。高齢者は高熱が出ない場合もある。
【出典】『長生きのど習慣』著:西山耕一郎/熊井良彦
【著者プロフィール】
西山 耕一郎(にしやま・こういちろう)
北里大学医学部卒業後、横須賀市立市民病院に勤務。横浜赤十字病院(現・横浜みなと赤十字病院)耳鼻咽喉科副部長、国立横浜病院(現・横浜医療センター)耳鼻咽喉科医長、北里大学耳鼻咽喉科診療助教授を経て、2004年に西山耳鼻咽喉科医院を開業。東海大学客員教授。藤田医科大学客員教授。嚥下相談医。嚥下認定士。神奈川県嚥下キーパーソン。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師として、30年間で約1万人の嚥下障害患者の診療を行う。主な著書に『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)『のどを鍛えて肺炎を防ぐ!』(大洋図書)『誤嚥性肺炎で死にたくなければのど筋トレしなさい』(幻冬舎新書)。
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熊井 良彦(くまい・よしひこ)
長崎大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授。主な専門分野は聴覚障害、嚥下障害、音声障害。1999年に熊本大学を卒業し、熊本大学での准教授を経て、現職。長崎大学病院嚥下障害治療センター長、長崎大学病院頭頸部腫瘍センター長を併任する。

