取り締まり強化の「トー横」で進む分散、“アングラ化”、低年齢化“悪質な大人たち”がつけ入る隙

東京・新宿の歌舞伎町にあるシネシティ広場周辺、通称「トー横」では、警察によるパトロールの強化や防護柵の設置、さらには恒常的なイベントの開催により、若者たちが路上に立ち止まりにくい環境づくりが進められている。
そうした取り締まりの影響で、行き場を失った若者たちがホテル街や飲食店へと移動し、人目につかない場所で重大な犯罪に巻き込まれる「アングラ化」が懸念されている。変化する現場の実態や若者が抱える複雑な胸中、支援を巡る課題について、『ABEMA Prime』で当事者や専門家を交えた議論が行われた。
■パトロール強化で失われるブランド価値と「アングラ化」の実態

かつては広場を中心に多くの若者が滞留していたトー横だが、近年の動きによってその光景は変容しつつある。歌舞伎町の現場を取材するライターのツマミ具依氏は、警察による規制強化がもたらした若者たちの動きについて次のように解説する。
「以前は若者たちが集団でいられる場所があったが、パトロールの関係で分散している。その分散先でまた警察やパトロール隊が来ると別の場所に移動するというイタチごっこが起きている。あまり路上にいないようにしようという傾向があり、『ホテル界隈』と呼ばれる、ホテルにずっと宿泊してこもる人もいれば、『通い組』は飲食店で仲間と飲み食いして、身を潜める傾向がある」。
また、かつてSNS上で大きな影響力を持っていたトー横のカルチャー自体にも変化が見られる。ツマミ氏は「トー横という場所のブランド価値が年々落ちている。以前はTikTokで『#トー横』や『自撮り界隈』がバズり、それがきっかけで来る人が多かったが、最近はバズりにくくなったことや、規制で撮影もしにくくなったことが影響している。今年の夏休みは新規と呼ばれる子たちがすごく少なくなった印象だ」と指摘した。
街の様相が変わり、取り締まりが厳しさを増すなかでも、若者たちがトー横を目指す動機とは何なのか。トー横歴約3年半で17歳の女性・みぃさんは、自身のきっかけと街に集まる理由をこう明かす。
「地雷系ファッションに憧れて、そういう子が多いという理由で行き始めた。トー横に行くと初対面の子でもフレンドリーに接してくれる子が多く、すぐ仲良くなれる。歌舞伎町に通うのは、そういう友だちに会いたいから。新しい場所で遊ぶよりも、馴染みのある歌舞伎町のほうがいい」。
また、トー横歴4年の20歳男性・コイキさんは、不登校を経験した過去や当時の孤独感を振り返り、「もともと高校などに友だちがあまりいなかったので、人との繋がりや孤独感を解消したかった。あそこに行けば孤独感がなく、自分には繋がりがあるという安心感を得に行っていた感じだ。同じようなカルチャーや考え方、似た背景を持っている人が多いので、行けばすぐ話せるし楽しくなれる」と、精神的な居場所として求めていた側面を語った。
一方で、かつてトー横に通い、現在は離れた元トー横キッズの23歳女性・Rさんは、コミュニティの変遷について言及した。
「当時はまだ『トー横界隈』という名前があまりなく、本当に身内同士のノリでただ友だちに会いに行くような感じだった。しかし、SNSなどを通じてどんどん人を増やした結果、身内で楽しんでいた枠組みではなくなり、初期にいた人たちが離れていった」と、かつて存在した小規模な繋がりが変質していった経緯を説明した。
■分散化が招く犯罪リスク…「特殊詐欺」や「海外風俗」への巧妙な手口

路上からの排除が進み、人目が届かない場所へ潜伏することで、若者たちが重大犯罪に巻き込まれる危険性は増している。ツマミ氏は、今年起きた19歳女性の誘拐事件を引き合いに出し、アングラ化の深刻な実態を明かした。
「トー横でみんなと同じように飲み食いして楽しんでいる一人だったが、海外風俗的なものに誘われて行ってみたら、現場で特殊詐欺だったというケースだった。彼女はカンボジアやマレーシアの拠点から9カ月後に逃げ出して保護されたが、他にも知人のトー横住民が、現在も海外で特殊詐欺をやっている例がある。たまに行く分には楽しい場所だが、少し足を踏み外すと深刻な事件に巻き込まれてしまう」。
歌舞伎町で若者支援を行う「日本駆け込み寺」常勤スタッフの清水葵氏は、悪質な大人が若者の悩みにつけ込む手口について語った。
「最初は優しく近づいてくることが多い。歌舞伎町に来ている子たちの背景には家庭内暴力や孤立などがあり、『大人に言っても意味がない』という前提がある。そこに『どうしたの』と優しくアプローチされると、自分の心の穴を埋めてくれる人だと思ってしまう。お金が必要だからと目先の話に走り、パスポートの取り方なども優しく教えられて、スムーズに海外へ行かされてしまうケースがある」。
また清水氏は、トー横キッズの低年齢化についても触れ「最近になって11歳の子が駆け込み寺に来た。10代前半の子たちがどんどん流れてくる。防犯ブザー代わりにスマートフォンを親が持たせると、子どもはSNSでみんなとつながり始める。孤独を感じて『家出』と検索すると、それに付随して『歌舞伎町』が出てくる。1回見てしまうと、歌舞伎町で楽しそうにしている動画がたくさん出てきてしまう」と危機感を示した。
こうした現状に対し、コイキさんは「自分の芯をあまり持っていない人が多いので、そこにつけ込む悪い大人がいるのは事実だ」と認め、みぃさんも「全員いい人だと思ったら、実は怖い人だった経験もあるので、初対面の人は男の子でも女の子でも一度警戒してしまう」と、現場での警戒心を口にした。
悪意のある大人の存在や治安悪化に対し、EXIT・兼近大樹は、当事者同士で居場所を守ることの難しさを指摘した。
「本来であれば自分たちの楽しい居場所なのだから、子どもたち同士で『そういう犯罪はやめよう、私たちの楽しい場所がなくなるから』とお互いで繋がっていけば排除できるはずだ。ただ、悪いことと良いことの線引きが1人ひとり違い、悪い大人についていってしまうことで、居場所自体が世間から悪いものとして見られてなくなっていく」。
(『ABEMA Prime』より)
