2017年の新春対談で写真に納まる長嶋さん(左)と大谷

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◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 東京Dの巨大ビジョンに、あるCMが映し出された。「60年前、1人の日本人にアメリカから実は声がかかっていた」。そんなナレーションとともに、大谷翔平投手と打者・長嶋茂雄の架空の対決が描かれる。その映像を見るたび、ある出来事を思い出す。

 1992年に長嶋さんが監督復帰を発表した直後、ベテラン記者と米国大使館のパーティーを取材した。長嶋さんは晴れやかな表情で語り始めた。「私も現役時代、川上哲治監督に『メジャーに挑戦させてほしい』と直談判したことがあるんですよ」

 1面間違いなし!と興奮したが、同行した記者は「まずいな。今日はもう帰っていいよ」と一言。その発言が翌日の紙面に載ることはなかった。まだ野茂英雄イチローが海を渡る前。メジャー挑戦がいかにデリケートなものなのか、思い知らされた。

 5年後のオフ。FA宣言した吉井理人投手と長嶋監督の交渉を代表で撮影した。部屋に通されると2人の笑い声があふれていて、巨人入りを確信。思わず「握手をお願いします」と声をかけた。長嶋さんは一瞬戸惑い、私は広報に厳しく注意された。後日、理由を知った。長嶋監督は巨人入りの説得より、吉井投手のメジャーへの思いに耳を傾けていたという。自分が果たせなかった夢を重ねていたのかもしれない。

 ミスターが胸の奥にしまったメジャーへの憧れ。その夢は当たり前のように挑戦する時代へとつながった。天国で巨人の勝敗に一喜一憂しつつ、大谷ら日本人メジャーリーガーの活躍に拍手を送っているだろう。(写真担当・上村 尚平)

 ◆上村 尚平(かみむら・しょうへい) 1989年入社。写真部一筋。10・8ナゴヤ決戦など数々の名勝負を撮影。