濃度が10%の食塩水1000グラムつくるのに必要な食塩と水の重さは?微積が解ける人がなぜか解けない「割合・%」の基礎問題。誤解をまねく定義で学ばせる算数教育を「再定義」する

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濃度が10%の食塩水1000グラムつくるのに必要な食塩と水の重さは?

割合「%」に関しては、小中学校で理解しないまま高校そして大学に進学する若者が相当多くいると考える。最初にそのようなデータをいくつか紹介しよう。

2012年度の全国学力テストから加わった理科の中学分野(中学3年対象)で、濃度が10%の食塩水1000グラムつくるのに必要な食塩と水の重さをそれぞれ求める問題が出題された。

この問題に関して、「食塩100グラム」「水900グラム」と正しく答えられたのは52.0%に過ぎなかった。

じつは昭和58年に、同じ中学3年を対象にした全国規模の学力テストで、食塩水を1000グラムではなく100グラムにしたほぼ同一の問題が出題された。この時の正解率は69.8%だったのである。これは「%」に関する理解力の低下を示しているデータだろう。

筆者は、2007年に東京理科大学理学部から桜美林大学リベラルアーツ学群に設置人事で移った。そして、まだ大学生就職難の2010年頃に就職委員長を補職としてお引き受けした。いろいろ調査したところ、微分積分の計算問題は解けるものの、次のような「%」の問題を苦手とする学生が少なくないことに気付いた。

「割合 % の問題」皆さんも考えてください

問1 2億円は50億円の何%か。

正解は、2を50で割って、商の0.04を百分率に直して4%である。この問題で、もっとも多い誤答は、50を2で割って25%とする解答である。

問2 西暦2000年に対し2001年は10%成長し、西暦2001年に対し2002年は20%成長した生産量は、西暦2000年に対し2002年は何%成長したことになるか。

正解は、1.1×1.2と計算して、結果の1.32から32%となる。実際、

2001年の生産量=2000年の生産量×1.1

2002年の生産量=2001年の生産量×1.2

であるから、

2002年の生産量=2000年の生産量×1.1×1.2=2000年の生産量×1.32

となる。なお、もっとも多い誤答は、10に20を加えて30%とする解答であった。

そこで筆者は、後期の毎週木曜日の夜間に「就活の算数」ボランティア授業を行い、「%」に関してはとくにていねいに説明した。

学生からいろいろ話を聞いてみると、小学校時代の算数の授業は最初から「比べられる量」「もとにする量」「割合」に関する公式暗記の授業で、理解するように教えてもらった記憶はない、とのことであった。ようするに、教育の“犠牲者”という側面を強く感じざるを得なかった。

このボランティア授業はのちに「数の基礎理解」という正規の授業となり、定年退職まで続けた。2024年に刊行した拙著『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)は、当時の講義録をまとめ加筆したものである。

数学はいかに「考える」ものなのか?

最近、筆者は「逆向きに考える」「特殊化して考える」などの13項目からなる発見的問題解決法を、本年6月に刊行した拙著『数学の考え方 発見的問題解決法――ひらめきを生む思考へ』(講談社ブルーバックス)などで積極的に紹介している。

背景には、現在は新しいものを創造することが大切な時代である。それにも関わらず、数学の学びが「やり方」の暗記が中心となってしまい、数学本来の「試行錯誤して考える学び」が疎(おろそ)かになっていることへの憂慮(ゆうりょ)の念がある。

発見的問題解決法の一つに、「定義や基礎に戻る」がある。そこで筆者は、拙著や多くの算数教科書も参照しながら「%」の定義を冷静に考えた。その結果、次の文中にある太字部分がキーワードとなっていることに、あらためて注目した。

百分率「%」とは、「全体を1とするときの割合」を100倍して「%」を付けたもの。

もちろん上の文は大切で、それを否定するような気持ちはない。しかし、数学で「全体」といえば、全体集合を見るまでもなく本当に全体で、それを含むより大きい部分は考えない。

たとえば、全体集合を整数としたとき、それを超えるところにある円周率πや√2(ルート2)などがあらわれることは許されないだろう。ところが、割合「%」の世界では、「満員電車では、定員の150%を超えるお客さんが乗車していることは普通である」というように、全体としての1を超えることは普通である。

「このような表現から生じる違和感をもつことは、小中学生にとってはむしろ普通ではないか」と考えた次第である。

そこで筆者は熟考を重ねた結果、以下のような新たな「%」についての、別ルートによる導入を提案したいと考えたのである。

「数字をどのように使うのか」定義に戻って考えてみよう

まず、小数だけは既知として、一応復習する。次に図を用いて、4倍、1.2倍、0.6倍などを計算と一緒に具体例で学ぶ。

さて、2つのものを客観的に比較しようとするとき、「数字をどのように使うのか」ということが要点になる。

A君とB君の身長・体重の差はどのようにあらわす?

A君の身長は150cm、体重は50kgB君の身長は165cm、体重は55kgだとする。このとき、B君の身長はA君の身長より15cm高くB君の体重はA君の体重より5kg多いことがわかる。これは、足し算・引き算の考えを通して比較している。

足し算・引き算の他に、計算には掛け算・割り算の考えがある。これを用いた比較は、割合などの重要な考え方と深く結びつくので、その基礎として理解したいのである。

上のA君B君の例を用いて、考えてみよう。当然のこととして、A君B君の身長や体重をそれぞれ1倍しても変わらない。いま、A君の身長を1.1倍すると、

150(cm)×1.1=165(cm)

となるので、これはB君の身長になる。

また、A君の体重を1.1倍しても、

50(kg)×1.1=55(kg)

となるので、これはB君の体重になる。

ここで注意すべき点がある。長さと長さは比較できる。また、重さと重さも比較できる。しかし、長さと重さは比較できない。

「もとにする量」と「比べられる量」

次に、「もとにする量」と「比べられる量」について説明しよう。

「もとにする量」は最初に基準とする量で、「比べられる量」はそれと比較する量のことである。上でも指摘したが、「もとにする量」の量と「比べられる量」の量は同じ内容で、一方が他方の何倍という関係があるものにかぎる。

上に挙げた例では、A君の身長や体重がもとにする量で、B君の身長や体重が比べられる量としている。このように、「もとにする量」と「比べられる量」を強調することが大切である。

いま、母親の身長が150cm子どもの身長が120cmとする。母親の身長をもとにする量で、子どもの身長を比べられる量とすると、比べられる量はもとにする量の0.8倍である。

150(cm)×0.8=120(cm)

反対に、子どもの身長をもとにする量で、母親の身長を比べられる量とすると、比べられる量はもとにする量の1.25倍である。

120(cm)×1.25=150(cm)

「%」という考え方の定義を考えてみると

ここから「%」を導入しよう。「もとにする量」と「比べられる量」の対象となり得る何らかの量を想定する。

比べられる量がもとにする量の1倍のとき、すなわち、比べられる量がもとにする量と同じとき、「比べられる量はもとにする量の100%である」という。同じような表現の例をいくつか学ぼう。それによって、「%」の理解を確実なものにしたいのである。

・比べられる量がもとにする量の2倍のとき、「比べられる量はもとにする量の200%である」という。

・比べられる量がもとにする量の1.5倍のとき、「比べられる量はもとにする量の150%である」という。

・比べられる量がもとにする量の1.1倍のとき、「比べられる量はもとにする量の110%である」という。

・比べられる量がもとにする量の1.03倍のとき、「比べられる量はもとにする量の103%である」という。

・比べられる量がもとにする量の0.97倍のとき、「比べられる量はもとにする量の97%である」という。

・比べられる量がもとにする量の0.7倍のとき、「比べられる量はもとにする量の70%である」という。

・比べられる量がもとにする量の0.14倍のとき、「比べられる量はもとにする量の14%である」という。

・比べられる量がもとにする量の0.08倍のとき、「比べられる量はもとにする量の8%である」という。

・比べられる量がもとにする量の0.01倍のとき、「比べられる量はもとにする量の1%である」という。

上のように「%」を導入すれば、以下の問題は解けるようになっていると期待できるだろう。

割合「%」の考え方がわかる3つの問題

問題1 次の□に適当な数字を入れよ。

(1)  比べられる量がもとにする量の2.53倍のとき、比べられる量はもとにする量の□%である。

(2)  比べられる量がもとにする量の0.178倍のとき、比べられる量はもとにする量の□%である。

答え (1)253  (2)17.8

問題2 もとにする量が50億円、比べられる量が2億円のとき、比べられる量はもとにする量の何%であるか。

答え比べられる量はもとにする量の△%とする。このとき、比べられる量はもとにする量の(△÷100)倍になっている。それゆえ、次の式が成り立つ。

50×(△÷100)=2

50×△=200

となるので、△=4が導かれる。

問題3 食塩を水に溶かした食塩水に関して、食塩水の「濃度」という言葉がある。もとにする量が食塩水の重さ、すなわち塩と水の重さの合計で、比べられる量が塩の重さのとき、比べられる量はもとにする量の△%であるか。この△%を食塩水の「濃度」という。ここでは、食塩を25g、水が100gとする。

答え食塩水の重さは125gである。食塩水の濃度を△%とすると、

125×(△÷100)=25

125×△=2500

となるので、△=20が導かれる。

食塩水の濃度の問題は、大学生の就職適性検査の問題としてしばしば出題される。しかし、上の問題の答えを「25%」という間違いを書く大学生がたくさんいて、残念に思う。

本稿では、あえて「割合」などの言葉も用いないで、「もとにする量」、「比べられる量」、「%」の3つの言葉だけを紹介した。まずは「全体を1とするときの割合」という表現を用いないで、それら3つの言葉の理解が大切ではないか、と訴えたかったのである。