“高学歴エリート男性”が女性を“風俗漬け”にして荒稼ぎ…メンバー約2000人・国内最大違法スカウトの“巧妙すぎる手口”《現役メンバーが告白》
〈「全裸にして性玩具を肛門に…」“違反者”を歌舞伎町のマンションで集団リンチ…“最凶の違法スカウトグループ”会長が逮捕されるまで《渾身レポート》〉から続く
2026年1月26日。警察が血眼になって追いかけていた男がついに逮捕された。20代の若者を中心に約2000人のメンバーを抱える国内最大かつ最凶の違法スカウトグループ「ナチュラル」の会長、「木山」こと小畑寛昭容疑者(41)だ。
【いかつすぎる】「ついに逮捕」国内最大違法スカウトグループ「ナチュラル」会長の小畑寛昭容疑者
「ナチュラル」の生態に、複数の現役メンバーの肉声と捜査資料から迫る、渾身のレポート。(初出「週刊文春」2026年2月19日号、全2回の2回目/はじめから読む)
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ナチュラルが最凶違法スカウトグループへと拡大した背景には、暴力による支配に加え、強固な組織性と厳しい内部統制があると指摘されている。当局の資料には次のような記述もある。
〈《ナチュラルは歌舞伎町のほか、都内の大規模繁華街にて巨額の資金獲得活動を行い、組織の拡大を図っている。法人登記はされていないが、『本社』『従業員』などといった名称を使用し、会社組織のような体裁をとっている》〉

新宿・歌舞伎町を拠点に全国に増殖
さらに、こんな記述も。
〈《警察を『ウイルス』や『プロ』などと称し、取締りを回避すべく本名を秘して源氏名を使わせ、かつ自身らで開発した秘匿性の高いアプリでのメンバー間の通信・やりとりを厳命している。徹底した警察対策を講じる、秘密結社的側面を持つ反社会的組織である》〉
警察への対策を徹底させた秘密結社のような組織であり、まるで極左の過激派のような雰囲気さえ漂う。しかし、大きく異なるのは、末端メンバーのほとんどが互いに素性を知らず、拠点を持たずに匿名の状態で、スマートフォンのアプリというツールだけで繋がっていることだ。
警察でさえ解析困難な「闇アプリ」
ナチュラルについて取材を開始したのは2024年。謎の多い組織を知るためにまず取り掛かったのが、彼らが使用している「闇アプリ」の解明だ。「ナチュラルと言えばアプリ」と囁かれるほど、その存在は一部の関係者に知られていた。ただ、何重にもロックがかかっているうえ、メンバーが逮捕された場合などには本社から遠隔操作でアプリそのものを消去することもできるため、警察でさえ中身を見ることが困難で、解析はほとんどできていなかった。
極秘に接触した現役メンバーはこう語っていた。
「本社の人からは、もし警察に捕まったらすぐにアプリを消すから、それまでは時間を稼げということを指導されます。アプリを常に監視している人がいて、位置情報が動いていない場合など、逮捕されているかどうかが分からなくても念のために遠隔で消されることもありますね」
このアプリは、トップの会長から末端の新人スカウトに至るまで、メンバー全員がログインしてスマホ上で使用する。詳しい経緯は割愛するが、我々も関係者の協力によってこのアプリを使用する機会を得ることができた。それは、ITの専門家も驚くほど精巧にできていた。チャットやファイル共有、通話などあらゆる機能が搭載され、ビジネス界でひろく使われるマイクロソフト社製「Teams」などのコミュニケーションツールと比べても遜色がない。さらに、メンバーの出退勤の管理や位置情報の把握、給与額の閲覧などもでき、“業務”のすべてがこれ1つで事足りるようになっている。
裏切り者は「指名手配」も
「アプリが入った仕事用のスマホは、プライベートも含めて24時間常に持ち歩くよう指導されます。アプリがないとスカウトの仕事が何もできないですし、起きている時はだいたい常にチェックしていますね」(現役メンバー)
メンバーへの教育も徹底している。アプリの中には、実務的なことだけではなく、心構えや日ごろのマナーを説く記述が実に多い。冒頭、新人向けに書かれているのが次のような言葉である。
〈〈会社の方針として『謙虚』があります。トラブルを起こさないようにしましょう〉〉
さらに、〈社内礼儀〉と題して、挨拶や電話の受け答え、会食時のマナーなどの所作が事細かに記されているほか、〈会社規約で禁止している事〉として外部に情報を漏らすなどの裏切り行為をした場合には数百万円単位の罰金を科すことが明記されている。規約を守らずに逃げようものなら、アプリ内で顔写真や本名が晒され、「指名手配」されることもある。学生時代に軽いアルバイト感覚で組織に入ったものの、簡単には足を洗えず、恐怖心を抱えながら所属するメンバーも少なくないという。
本社には約150人が所属
内部のフォルダに格納されている資料の中には、社内機構の説明もあった。そこには会長以下、執行役員、専務、代表、本部長など、まるで大手企業のような肩書が並ぶ。また、総務課、サポート課、集金課など様々な部署があり、実在するオフィスこそないものの、本社には約150人が所属している。
各スカウトグループを統括する本社のメンバーは、現場のスカウトから選抜されて採用されることが多いが、外部から優秀な人材を登用することもある。特に重視されるのが、警察(プロ)対策を担う「プロ課」である。
「プロ課の方々は本社でも特に優秀というか、頭がキレる人が多くいます。スカウトに関係する風営法の改正について勉強会をやっているのも、プロ課の方々です。あとは、研修も担当します。営業をバリバリやっているような会社に在籍していた人もいて、新人向けのマニュアルなども作っています」(現役メンバー)
また、組織防衛を専門に担う「防衛部」なる部署もある。詳細はベールに包まれているが、捜査情報の収集や、警察内部に協力者を仕立てる秘密工作も行っていると見られている。昨年情報漏洩で逮捕された警視庁の警部補もこの部署と接点があったという。
ナチュラルの心臓部ともいえる「闇アプリ」。関係者によると、以前はエストニアの既製品をベースにしたものを使っていたそうだが、23年のリンチ事件(※記事前編〔#1〕で紹介)で警察にスマホが押収されアプリの存在が知られたため、プログラミング技術を持った内部の人間が1000万円以上の費用をかけて独自に開発したという。
捜査関係者が呟く。
「単なる粗暴な組織ではないところがやっかいだ。従来のスカウトのようにちょっとヤンチャなメンバーだけではなく、中には偏差値の高い大学に在学中に誘われて組織に入り、幹部となった人物も少なからずいる。ITやデジタル分野、法律に詳しい人物を多く抱えているのも特徴だ」
女性たちが働く限り続く
ナチュラルの収益源は言うまでもなく、女性たちの身体だ。スカウトバックの額は女性の毎月の稼ぎの約15%で、女性がそこで働く限り続く。やり手スカウトでは月収100万円を優に超え、中には月に1000万円以上を稼ぐ者もいる。収入の一部は組織に上納されるため、優秀な部下を抱えている幹部たちの懐には、放っておいても年間億単位の金が入ってくる。
こうしたスカウトを介して「夜職」に就くのはどんな女性たちなのだろうか。取材班は彼女たちにも話を聞いた。
20代の風俗嬢が語る。
「なんかね、スカウトさんはLINEで連絡したらすぐ返信くれるしね、つい仕事以外のことでも頼っちゃうかな。友だちにも彼氏にも相談できないことを、気にせずに言えるしね」
夜の店ではボーイや黒服と呼ばれる男性スタッフが大抵のことはやってくれるからなのか、夜職の女性はとにかく「面倒くさがり」が多い印象だ。仕事の斡旋だけでなく、スカウトに身の回りのことを頼む女性は少なくない。
人気嬢になるために美容整形手術を受ける女性も多く、人気のクリニックを紹介してもらったり、中には買い物から旅行の手配まで頼んでいる女性もいた。
早慶やMARCH、関関同立クラスもスカウトに
両者の関係はある種、独特だ。スカウトにとっては金儲けの道具である。逃げられてはカネにならない。頭脳を使った戦略や気配りも必要になる。そのためか、メンバーには早慶やMARCH、関関同立クラスの大学出身者が少なからずいる。
「相手の相談に乗りながら、一番フィットしそうな店を提示してクロージング(契約)する。内容的には営業職やコンサルみたいな仕事と重なる部分もあると思いますよ」(有名大学出身メンバー)
25年6月に施行された改正風営法ではスカウトバックが禁止され、斡旋業務への取り締まりが強化された。そんな中、ナチュラルが現在、注力するのが「海外出稼ぎ」、つまり海外売春の斡旋だ。
「国内の風俗店への紹介はリスクがあるし、それだけでは稼げないという危機感がありました。昨年から徐々に海外案件を増やしています」(現役メンバー)
カップルを装って海外売春に同行
アジアのほか、アメリカやオーストラリアへの紹介が多いが、現地の空港で売春を疑われ、入国を拒否され強制的に帰国させられるケースも出ている。このためナチュラルでは、カップルを装ってスカウトが同行する対策までとっていた。
「女の子のメンケア(メンタルケア)も兼ねて一緒に行くことはよくありますよ。入国手続きとか空港からホテルまでの移動とか全部やってあげると喜ばれるんで。まあまあ稼げる子だったら、自分の分の飛行機代を払っても十分ペイできますから」(現役メンバー)
スカウトを頼る女性たちには、違法なトクリュウ集団に多額のカネが流れている意識はほとんどない。
手っ取り早く大金を稼ぎたい若者たちと、「面倒なことは誰かにやってほしい」夜の街の女性たち。ナチュラルは双方の受け皿にもなっていた。
会長の逮捕容疑となった暴排条例違反はあくまで入り口にすぎない。警視庁は今後、風俗店に女性を斡旋した職業安定法違反などで再逮捕を目指し、「カネの流れを解明し、組織壊滅まで追い込む。奴らが得ているのは、納税もしていない犯罪収益だ」(捜査幹部)と意気込む。
「会長が不在でも、きっちり仕事をやるだけ」
一方、メンバーたちは会長逮捕後も普段と変わらずに活動を続け、給料もこれまで通り支払われている。組織中枢に近い人物は次のように言い放った。
「アプリも動いていますし、取引先の店舗とも連絡をとっています。資金もまだまだ豊富にありますから。会長がしばらく不在でも、我々はきっちり仕事をやるだけです」
夜の街のあらゆる欲望を喰いながら、ナチュラルという得体の知れない組織は、今も増殖し続けている。
(しみずまさひろ/1973年生まれ、長野県出身。北海道大学を卒業後、99年にNHK入局。主に事件取材や調査報道に携わる。警視庁キャップや「おはよう日本」編集責任者などを務めたほか、NHKスペシャルなど数々のドキュメンタリー作品の取材・制作にあたった。2024年10月に独立し、メディア関連会社を設立。)
(にほんばしぐるーぷ/メディアや官僚、政界、IT企業などの出身者で構成される新しい形の取材・情報チーム。国内外の機関と連携して調査報道を行うとともに、ドキュメンタリーや映画の企画・制作に取り組んでいる。)
(清水 將裕,日本橋グループ*/週刊文春 2026年2月19日号)
