球界一のスピードスター!福岡ソフトバンクホークス・周東佑京が語る「まずは通算300盗塁」
プレッシャーと自信
昨年までにプロ通算230盗塁を達成し、13試合連続盗塁の世界記録を保持--。
球界一のスピードスター、福岡ソフトバンクホークスの周東佑京(しゅうとううきょう・30)には幼少期から逸話がある。鬼ごっこでは捕まった記憶がなく、生まれ育った群馬県の近所の山では野ウサギを捕獲していたというのだ。周東が笑いながら話す。
「だいぶ話が盛られていますね。でも、まったくのウソではありません」
周東の脚力について多くの説明はいらないだろう。今年3月10日のWBC1次ラウンドのチェコ戦では、平凡なゴロで一塁を駆(か)け抜け内野安打に。5月10日のロッテ戦では、自身の判断でホームスチールを決めた。自慢の快足で順当にキャリアを重ねているように見える周東だが、これまでにさまざまな葛藤(かっとう)と逆境があったという。育成選手から這(は)い上がった周東の野球人生を、本人の言葉で紹介する。
「巨人ファンだった両親の影響で、野球を始めたのは小学2年の時です。当時から走塁と守備は得意でした」
高校は地元・群馬県の東農大二高へ進学。甲子園出場経験はなくプロは意識していなかったが、東農大北海道オホーツクに入学して考えが変わったという。
「風張蓮(かざはりれん)さん(元ヤクルト)や井口和朋さん(現オイシックス)など、プロから指名される先輩が身近にいたんです。『自分も』という意識になりましたね。ただプロのレベルに十分達していないことは自覚していたので、指名順位などにこだわりはありませんでした」
周東は50m5秒7の俊足を買われ、育成ドラフト2位の指名を受けソフトバンクへ入団する。プロ生活は二軍でのスタートとなったが、衝撃を受けたという。
「打者なら江川智晃さん、投手なら攝津正(せっつただし)さんなど実力のある先輩が二軍に大勢いたんです。このレベルでも一軍に上がれないのかと……。一方で脚には自信が持てました。1年目でウエスタン・リーグトップの27盗塁をあげられましたから」
2年目の’19年3月に支配下登録されると、一軍で打率.196ながらチームトップの25盗塁。3年目には50盗塁を記録し、育成出身選手として初の盗塁王となった。
「簡単に盗塁を決めているように見えるかもしれませんが、毎回強いプレッシャーを感じていました。『周東なら成功して当たり前』と思われるのが重圧だったんです。当時かけられた、本多雄一(内野守備走塁兼作戦)コーチの言葉には救われましたね。『大丈夫。オマエなら普通にスタートすれば成功するから』と。以後は『いいスタートを切らなければ』と、変に意識しなくなりました。
本多コーチからは『全体を見ろ』とも言われています。相手投手の間合いや牽制(けんせい)の癖、チームメイトの打球方向などを観察し頭に叩き込んだんです。インプットしたことが自信となり、走塁の判断で迷うことはほとんどなくなりました」
「脚だけではダメだ」
周東の脚は世界も驚かせる。’23年3月のWBCで日本代表に選出。準決勝のメキシコ戦で9回裏に代走として登場すると、村上宗隆のヒットで一塁から迷わず一気に本塁へ生還する。″神走塁″でサヨナラ勝ちに貢献したのだ。
だが、強い危機感も覚えたという。
「’19年11月のWBSCプレミア12にも選ばれましたが、ホークスで僕は完全なレギュラーではありませんでした。スタメンでない僕が代表になることに違和感があったんです。まずはホークスでレギュラーになり、自他ともに認める日本代表になるためには脚だけではダメだ、打撃力も向上させないといけないと、強く意識するようになりました」
周東の打撃力は、二人の恩師の存在により大きく向上した。長谷川勇也・打撃兼スキルコーチとチーフベースボールオフィサーの城島健司氏だ。
「長谷川コーチからは、ノーステップ打法を教わりました。僕は非力なので、脚を上げて反動で打球を飛ばそうとしていたんです。しかし身体の動きが大きくなる分、ボールをとらえる確率が低い。長谷川コーチのアドバイスですり足にすると、確率がグンと上がりました。
城島さんには’24年春のキャンプで、2週間付きっ切りで指導を受けました。コースによって流したり引っ張ったり打ち分けないといけないと思っていましたが、城島さんは『基本センター返しでいいんだ』と。考えがシンプルになり、余裕を持って打席に入れるようになりました」
周東は、パワーをつけるために体重増量にも挑戦する。食事の回数を増やし積極的に筋力トレーニングをすることで、’23年のWBC当時60kg台だった体重が、今年2月のキャンプでは74kgまで増えた。今季は7月20日現在、リーグ10位となる打率.285の成績を残している。だが、打率にはあまりこだわっていないという。
「(先輩の)近藤健介さんから言われたんです。打率にこだわると『上がった』『下がった』と数字に一喜一憂する。こだわるなら安打数だと。一本一本の積み重ねで数字が減ることがなく、打てなくても次の打席へ意識を切り替えられますから。もちろん盗塁へのこだわりを捨てたわけではありません。まずは通算300盗塁を狙います。これからも走り続けますよ」
天性の脚力に高い打撃力を加えた周東が侍ジャパンの切り込み隊長であることに、もはや誰も異議はないだろう。
『FRIDAY』2026年8月7・14日合併号より
