なぜヴィニシウスはブラジルで愛されないのか。 “国民的英雄”になれない理由【現地発】
その一方で、リバウドは卓越した技術を備えながら、素朴な風貌と寡黙な性格もあって、国民的人気という点ではやや物足りなかった。
カカも世界最高峰のMFだったが、裕福な家庭に育った「良家のおぼっちゃん」というイメージがつきまとった。端正な容姿で女性人気は高かったものの、そのことが男性ファンの反感や嫉妬を招いた面もあった。
そして、ヴィニシウスである。
貧しい家庭で育ち、名門フラメンゴで頭角を現わすと、18歳でレアル・マドリーへ移籍。当初は決定力不足を指摘されたが、自費でトレーナーや栄養士、専属コックを雇い、努力を積み重ねて世界屈指のアタッカーへと成長した。
この経歴と実績を考えれば、国民的英雄となっていても不思議ではない。しかし、現実はそうなっていない。先のワールドカップでもグループステージで4得点を挙げたにもかかわらず、人気が爆発的に高まることはなかった。
理由の一つは、そのプレースタイルにあるのだろう。スピードとパワーを武器とし、技術も申し分ないが、ロナウジーニョやネイマールのように、観客を驚嘆させる創造性を前面に押し出すタイプではない。加えて、性格も比較的寡黙で、ネイマールのような華やかさは感じさせない。
人種差別反対の活動を続ける姿勢は国内メディアから高く評価されている。しかし、そのことが一般大衆からの圧倒的な支持へと結び付いているわけでもない。
筆者は、こうした評価は決して公平ではないと思っている。それでも、国ごとに「愛されるスター像」が存在するのも事実だ。ヴィニシウスは、少なくとも現時点ではブラジル人が最も好むタイプのスターではないのだろう。
もっとも、この評価が一変する可能性はある。ワールドカップで圧倒的な活躍を見せ、セレソンを世界一へ導いた時だ。
メッシも現在ではアルゼンチンの英雄だが、ワールドカップやコパ・アメリカで優勝を逃し続けていた時代には、国内で激しい批判を浴びていた。
ヴィニシウスは、ワールドカップ制覇を果たせずキャリア晩年を迎えたネイマールの道を歩むのか。それとも、悲願の世界一によって国民的英雄となったメッシと同じ道をたどるのか。その答えが明らかになるのは、4年後である。
文●沢田啓明
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 「すごい額だったんで」日本代表主力が衝撃告白!3月にまさかの“サウジ移籍”を決断→反対された人物を明かす「絶対にやめて」

