「NVIDIAのCUDAの優位性は崩壊しつつある」とDeepSeek創業者が約4時間の講演で発言、利益追求よりもAGIの実現を目指す方針も明かされる

中国のAI企業・DeepSeek創業者の梁文峰(リアン・ウェンフォン)氏が投資家向けに約4時間にわたる説明会を2026年5月20日に実施しており、その対談記録が公開されました。説明会では、梁氏が「利益最大化は目指さず、AGI(汎用人工知能)研究を最優先する」「NVIDIAのCUDAエコシステムの壁が新技術によって打ち破られつつあり、中国製チップのための新たなエコシステムを構築することは歴史的なチャンスだと考えている」といった今後の方針が説明されています。
https://www.fredgao.com/p/deepseeks-liang-wenfeng-breaks-his
Wenfeng Liang: Four-Hour Investor Meeting Transcript | elsewhere
https://elsewhere.news/en/elsewhere/wenfeng-liangs-four-hour-investor-meeting-full-transcript
DeepSeek puts AGI research ahead of products and commercial growth · TechNode
https://technode.com/2026/07/23/deepseek-puts-agi-research-ahead-of-products-and-commercial-growth/
DeepSeekはOpenAIやAnthropicの最先端AIモデルに匹敵するモデルをオープンモデルとして開発しており、性能向上を続ける一方で、収益化よりも研究開発を優先する姿勢を維持しています。2026年5月には700億元(約1兆6000億円)という大規模な資金調達に向けて交渉を進めていることが報じられており、投資家への説明会として2026年5月20日に梁氏が対談形式で講演を行いました。メディアに登場することが多いアメリカの創業者たちと比較すると、梁氏がAI業界に関するビジョンをしっかり説明する機会はまれです。
梁氏はAIを単なる独占のための道具とは見ておらず、むしろ「人類の歴史を変える巨大な波であり、どの企業も独占できない潮流」と語りました。そのため、過度な利益は求めず、反発を減らすためにオープンに情報を共有すべきとして、短絡的な収益やユーザー数の拡大ではなく、AGIの実現を真の目標として挙げています。また、AGI実現の最大の鍵として、最高の人材を見つけることよりも、チームが長期にわたって協力できる状態が重要だと梁氏は考えています。

OpenAI・Anthropic・Googleといったアメリカのトップモデルが持つ優位性は一時的なもので、長くは続かないと考えていると梁氏は発言。Anthropicは「Claude Mythos」「Claude Fable」の登場でエージェントコーディング分野で高い優位性を獲得しましたが、梁氏によるとこの優位性もすぐ薄れると考えられるそうです。アメリカの優位性は単に現行モデルの計算能力の高さによるものであり、中国の人材が不足しているわけではないというのが梁氏の考えです。
梁氏によると、アメリカ企業が先行しているのは、豊富なリソースがあり「クローズドモデルと高収益で市場を独占する」という基本的なビジネスアイデアに基づいているからであるとのこと。しかし、このような高収益の追求は長期的には弱く、適正な利益で満足する企業に必ず負けるだろうと梁氏は指摘しています。特に、アメリカ企業にはコストを極限まで圧縮する強い理由がないため、中国はコストとユーザーエクスペリエンスにおいて本質的に優位性を持っていると梁氏は考えています。
NVIDIAのCUDAエコシステムは、ソフトウェア最適化により理論性能が高いハードウェアと比べても高いパフォーマンスを発揮する点で優れており、高い計算能力を求めるAI分野ではNVIDIAのエコシステムが優先されてきました。しかし梁氏によると、CUDAエコシステムの優位性は新技術によって打ち破られつつあり、中国製チップのための新たなエコシステムを構築することは歴史的なチャンスだと考えられるそうです。中国製AIチップはCUDA互換環境がないことが普及の壁になっているため、これが克服されれば、中国とアメリカの基本的なソフトウェア面の差が縮まり、残る違いは純粋な計算能力だけになります。

梁氏は、将来的に「他の製造業分野と同様に、AI分野でも中国の低コスト製品が普及するようになる」という展望を示しています。
現在および今後のDeepSeekの方針として、コーディングエージェントはDeepSeekの製品と自社の研究プロセスの両方を改善できる可能性があるため、優先事項となっていると梁氏は明かしています。一方で、3D生成・動画生成・世界モデルといった機能は有用なアプリケーションではあるものの、知能開発の中核をなすものではないと考えられており、優先的に開発されていません。同様に、金融や医療といった専門分野のエージェントは優先順位が低くなり、汎用(はんよう)的なエージェントに全力を注ぐのが最も賢明なアプローチとしています。
梁氏はDeepSeekについて、「製品企業ではなく研究企業である」という考えを繰り返し説明しており、DeepSeekのAPI価格設定は利益を最大化するのではなく、約10ヶ月でハードウェアコストを回収できるように設計されているとしています。また、DeepSeekでは性能の劣るバージョンを一般公開するのではなく、最も性能の高いモデルをオープンソースとして公開し、社内外で同じモデルを使用する計画であるとも明かしています。
また梁氏は、DeepSeek Chatを多種多様なサービスを統合した「スーパーアプリ」へ発展させる計画を否定しました。梁氏は「私たちがこれを競わない理由は、その先にはスイカがあり、今目の前にあるのはゴマ粒に過ぎないからです。たとえそのゴマ粒が少し大きかったとしても、結局それほど大きなものではありません」と表現しています。
梁氏はオープンソース志向とAGIを目標とする方針について、「オープンソースと低価格は、従業員に達成感を与え、組織の結束を強め、社会に貢献し、同僚や一般の人々を幸せにします。したがって、長期的な視点から見ると、この制約はAGIの実現確率を高めるのです。もしあなたが最大限に利益を得ようと目論んでいるなら、あなたは既に負けています。さらに大きな困難に直面するかもしれません。それが世の中の仕組みです」と語りました。
