「頭が真っ白に…」資産1.5億円・79歳夫が今際の際に“信じられない告白”。看取った74歳妻が病院を飛び出し、役所に直行したワケ【弁護士が解説】
地方銀行の支店長を務め上げた夫と、専業主婦として家庭を支えてきた妻。資産1.5億円を築き、経済的に不安のない平穏な老後を送るはずでした。しかし、闘病の末に最期を迎えた79歳夫の口から出たのは、「信じられない内容」の告白でした。本記事では、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、事例を通じて残された家族の相続問題について解説します。
資産1.5億円で平穏な老後のはずが…79歳夫が最期に口にした「信じられない告白」
カズコさん(仮名・74歳)は先日、79歳の夫を見送りました。
カズコさんの夫は地方銀行で支店長にまで上り詰めた、仕事一筋で厳格な人でした。カズコさん自身は長年専業主婦として家庭に入り、多忙な夫を陰ながら支える人生を送ってきました。
夫は退職金やこれまでの貯蓄などを合わせ、約1億5,000万円の資産を築き、夫婦で受け取っていた公的年金は年間約320万円。老後の生活において経済的な不安は一切ありませんでした。
そんな穏やかな日々が一変したのは、夫が77歳のときに胃がんが発覚したことでした。手術が難しい状態にまで進行しており、余命宣告を受けた夫のために、カズコさんは毎日欠かさず病室へ通い看病を続けました。
徐々に弱っていく夫の手を握りしめていたある日のこと。最期のときが近づくなか、夫は最後の力を振り絞るように、信じられない言葉を口にしました。
「実は、昔付き合っていた別の女性との間に、子どもがいるんだ。その子は認知している。私が死んだら、その子にも財産を分けてやってほしい……」
あまりの言葉に耳を疑いましたが、そう言い残して夫は静かに息を引き取りました。最愛の夫との別れを悲しむ間もなく、カズコさんはただ呆然とするしかありませんでした。
病院を飛び出して役所へ直行…「戸籍謄本」で明らかになった事実
頭が真っ白になったカズコさんは、病院を飛び出して役所へ直行しました。震える手で夫の戸籍謄本を取得して内容を確認すると、そこには確かに「認知」の文字と見知らぬ子どもの名前が記載されていました。しかも、認知されたのは12年も前のことだったのです。
さらに後日、46歳の息子にこの事実を伝えると、追い打ちをかけるような言葉が返ってきました。
「母さん、ごめん。実は俺、自分が結婚するときに戸籍を見て気づいていたんだ。でも、母さんが可哀想だと思って、親父と相談してずっと黙っていたんだ」
そのあとに確認した夫の公正証書遺言には、告白通り認知した子どもへも遺産を分割する旨が記載されていました。しかし、遺言書の最後には「付言事項」として、夫の直筆で次のような一文が添えられていました。
『長年にわたって内助の功として家庭を守り、私に尽くしてくれた妻・カズコには、心から感謝している』
隠し子がいたという事実は決して消えません。それでも、自分が夫に捧げた人生が否定されたわけではないということ。その付言事項の言葉が、カズコさんにとって救いとなっています。
【弁護士が解説】戸籍で初めて判明するケースも…「隠し子」の相続権
今回のケースでは、「認知された子ども」がいる以上、その子どもも法律上の相続人となります。たとえ妻や家族がその存在を知らなかったとしても、認知が有効にされていれば、相続権が認められることに変わりはありません。
また、公正証書遺言にその子どもへの遺産分割の意思が明記されていたことからも、法的な手続きとしては、その内容に沿って相続を進めることになります。
もっとも、この事案で注目すべきなのは、法律論だけではありません。長年連れ添った配偶者にとっては、相続の割合以上に「なぜもっと早く話してくれなかったのか」という精神的な衝撃のほうが大きいことも少なくありません。
相続は財産を分ける手続きである一方、人間関係や家族の歴史とも向き合う場面でもあります。
近年は、認知した子どもや前婚時代の子どもなど、戸籍を確認して初めて判明するケースも珍しくありません。相続が始まってから慌てることのないよう、生前に家族で話し合えることは話し合い、必要に応じて遺言書や付言事項を活用して思いを残しておくことが、残された家族の負担を減らすことにつながります。
法律だけでなく、家族への説明や情報の承継まで含めて準備しておくことが、円満な相続への第一歩といえるでしょう。

