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近年では、私立小学校への進学や中学受験、海外留学、医学部進学など、教育への投資額が増えています。しかし、これらの費用が家計を圧迫し、そこに住宅ローンをはじめとする複数の借入れが積み重なった結果、債務整理に追い込まれてしまう富裕層もいるのです。本記事は、これまで多くの債務問題に携わってきた、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が、教育費による家計崩壊のリスクと、その解決策について解説します。

教育費の前提となる家計、この先ずっと維持できるのか?

教育は長期戦です。しかし、子どもが幼いうちから、「小学校から私立へ」「中学受験をする」「医学部を目指す」と進路を前提に家計を設計してしまう家庭は少なくありません。

もちろん、早くから目標を持つこと自体は悪いことではないでしょう。問題は、その前提となる収入や生活環境が「10年、20年先まで変わらない」と考えてしまうことです。

家計を取り巻く環境は、転職や独立による収入減少、病気や介護の問題、住宅ローン負担の増加、弟妹の誕生などによって、大きく変化する可能性があります。

それを考慮せず、いまの年収だけを見て教育費を積み上げてしまうことが、将来の家計を圧迫する原因となるのです。

私立小学校、医学部受験、海外有名大学留学…費用は膨大に

教育費は長期間にわたって家計に影響し続けます。

私立小学校から私立中学・高校へ進学し、さらに医学部受験対策の予備校費用や大学の学費に加え、海外名門校の受験や留学、移住などを含めると、数千万円から億単位の規模に及ぶこともあるのです。

もちろん、すべての家庭がこれほどの費用を負担するわけではありません。しかし、筆者が知る限り、高所得者層ほど教育投資を重視する傾向にあるようで、習い事・留学・個別指導・医学部専門予備校などの費用が積み重なり、想定以上に教育費が膨らむケースが多いのです。

教育費は「途中でやめられない支出」になりやすい

教育費が家計を圧迫する最大の理由は、途中で削減することへの心理的ハードルの高さです。たとえば、子どもが興味を示さない習い事でも「辞めたら子どもの将来に影響するのでは?」との不安から、見直せない家庭は少なくありません。

とくに、私立小学校・中学校への進学や、医学部受験など、長年受験勉強を続けてきた状況だと「ここまで投資したのだから…」という思いが強く働きます。その結果、教育費の維持のため、教育ローン・カードローン・リボ払いなどに頼るようになり、徐々に借入れが増えてしまうのです。

さらにそこへ、住宅ローンや自動車ローンなどが重なることで、家計全体が「返済中心」に変わってしまいます。

実務でも、子どもの教育だけは続けたいという理由で借入れを重ね、気づいたときには返済が困難になっていたという相談は決して珍しくありません。

債務整理は「教育を諦める制度」ではない

返済が困難になった場合でも、選択肢は自己破産だけではありません。

たとえば、任意整理で将来利息をカットし、毎月の返済額を軽減できるケースがあります。

また、住宅ローン以外の借金が家計を圧迫している場合には、個人再生によって借金を大幅に減額し、自宅を維持しながら生活再建を目指せる場合もあります。

重要なのは「教育を続けるために借金を増やす」のではなく、「家計を立て直すことで教育を継続できる環境を整える」という発想です。

家計が破綻すれば、結果として教育そのものを続けられなくなる可能性もあります。

だからこそ、早い段階で専門家へ相談し、返済計画を見直すことが重要です。

債務整理が子どもの教育へ悪影響を及ぼすことは少ない

「債務整理をすると、子どもが学校へ通えなくなるのではないか」と心配する方も多いのですが、一般的には、債務整理をしたこと自体が学校へ通知されたり、子どもの進学や在学に直接影響したりすることはありません。

また、信用情報に登録されるのは手続きを行った本人であり、子どもの信用情報に影響するものでもありません。

もちろん、返済状況や家計によっては生活設計の見直しが必要になる場合もありますが、債務整理をしたという事実だけで教育の機会が失われるわけではないのです。

むしろ、返済に追われる生活を続けるよりも、家計を正常化し、教育費を安定して支払える環境を整えることが、子どもにとっても望ましい結果につながるケースが多いといえそうです。

家計全体における「教育費のバランス」は慎重に考慮を

教育への投資は、子どもの将来を考えるうえで非常に大切です。

しかし、教育費は途中でやめにくい支出であるからこそ、家計全体とのバランスを慎重に考える必要があります。

とくに富裕層や高所得者層では、収入があるから大丈夫という思い込みから教育費が膨らみ、住宅ローンや教育ローンなどと重なって家計が破綻するケースもあります。

返済が苦しくなったときに大切なのは、一人で抱え込まず、早い段階で専門家へ相談することです。

債務整理は、教育を諦める制度ではありません。

家族の生活を立て直し、子どもの教育環境を守るための選択肢の一つとして、状況に応じて検討することも重要ではないでしょうか。

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士