今年上半期、飲食業界の倒産件数が過去最多を更新した。                            

【映像】これは採算取れない…規模縮小する居酒屋の“豪華すぎる”お通し

 東京商工リサーチによると、倒産件数は509件に上り、業種別では居酒屋が118件で前年同期比およそ30%増加。資本金別では個人経営の飲食店の倒産が182件と目立つ結果となっている。

 一方、モスバーガーやすき家といった大手外食チェーンは一部商品の値上げを発表。同じ物価高の波を受けながら、なぜ個人店だけが値上げに踏み切れないのか。『ABEMA Prime』では、飲食店の適切な値付けのあり方について考えた。

■コスト増が直撃する個人飲食店の現実

 東京・神田の「居酒屋ちぇけ」店主の豊田千木良氏は、今月末で1階フロアを閉鎖し規模縮小を決断した。その理由として挙げたのが、家賃の急激な値上げだ。「更新のタイミングで月々5万円ほど上がることになった。1階は立ち飲みをやっていたが、採算が難しいということで、売れている3階を残して規模を縮小することになった」と明かす。

 フードジャーナリストの山路力也氏は、個人飲食店の現状について「全てにおいてコスト増だ。原材料費、人件費、光熱費、全てが上がっている。そのコスト増分を値上げで転嫁すればいいのだが、なかなか踏み切れないところから利益が目減りし、倒産につながっている」と説明。

 豊田氏の店では常時600〜800種類の日本酒を揃え、スタッフも日本酒に精通した人材正社員アルバイトで確保しているため、立ち飲みながら人件費がかかる構造になっている。物価上昇分の価格転嫁については「どうしても一気に値上げというところにまだ踏み切れていない。常連さんもいるので、なるべく抑えたいという思いがある」と語る。

■「消費者は価格を覚えていない」値上げの心理的ブロック

 プライシングスタジオ代表の高橋嘉尋氏は、個人店が値上げに踏み切れない最大の原因を「心理的ブロック」と指摘する。「飲食側は同じ価格を見続けているので、自分たちだけが価格を覚えていて、変にそれが心理的なハードルになっている。しかし消費者からすれば、値上げしても別に気づかない」。

 山地氏も同様の見解を示し、「個人店のメニューの細かな数字まで覚えている客はほとんどいない。なんとなく最後に支払った金額、3000円程度という感覚があるだけだ。値上げのアドバイスをするときは『黙って値上げしてください』と伝えている。わざわざ告知する必要はない」と話す。

 さらに「飲食店の方は優しいので、必ず『申し訳ありません』という張り紙をするが、絶対に書かないでほしい。ほとんどの客はあの張り紙を見て値上げに気づく。数十円、数百円単位であれば、余計なことを言わなくていい」とも付け加える。

 高橋氏は値上げ成功の具体的な方法として「客がよく頼む看板商品は価格を据え置き、あまり頼まれない商品を5%程度上げてみるだけで、5万円程度の増収は十分に賄える。日高屋値上げに成功したのも、集客商品の価格は据え置いて他を上げたからだ。合計会計が上がっても、客は『今日は飲みすぎた』で終わってしまう」と述べる。

■経営知識の欠如と生き残りの条件

 山地氏は、個人飲食店の経営上の問題点として、「個人飲食店を経営している方の多くは料理人上がりで、料理が上手にできて独立する。そのプロセスの中に経営を学ぶタイミングがない。FLコスト(食材費と人件費の合計比率)がいくらですかという話から始めると、まずそこで止まってしまう。本来はリアルタイムで追い続けなければならない」と強調する。

 個人店が生き残るための条件については、「値段で選ばれているようなお店はチェーン店にかなわない。個人店は値段以外で勝負しなければならない。店主に会いたいとか、その店でしか味わえない雰囲気、手作りのライブ感、人と人とのつながり、そういったところにフォーカスすれば、値段競争に巻き込まれなくなる」との考えを示した。

(『ABEMA Prime』より)