親への挨拶を済ませた直後の婚約破棄。理由がわからないエリート商社マンを絶望に突き落とした、元婚約者が握る「一本の録音データ」【弁護士が解説】
「不倫」「浮気」「離婚」「セクハラ」……銀座さいとう法律事務所には、今日も有象無象のトラブルが舞い込みます。本連載では、齋藤健博弁護士が実際に寄せられた事例をもとに、男女の法律問題を解説していきます。
三度目の結婚に進む裏で、お気に入りのキャバクラ嬢とホテルへ
一流商社に勤務する上智大学卒のエリート・Aさんには、離婚歴が2回あります。
離婚の原因は、いずれもAさんのキャバクラ通いです。キャバクラで若い女性と話をするのが大好きなAさんは、一晩で100万円近く使うほどのめり込んでいます。
あるとき、Aさんはお気に入りのキャバクラ嬢とホテルに行くことができました。しかし、そのころのAさんは、法律事務所に勤務する才色兼備の女性・Bさんと、3度目の結婚を考えていました。実際のところ、月に一度、二人で食事をしているときでさえ、キャバクラのことで頭がいっぱいのAさんでしたが、「結婚して家庭を築きたい」という強い願望があったため、貯蓄を切り崩して頻繁に高額なアクセサリーなどのプレゼントを贈り、Bさんの心を繋ぎとめていたのでした。
家族への挨拶直後の婚約破棄
しかしある日突然、AさんはBさんから婚約破棄を言い渡されます。双方の親・兄弟への挨拶を済ませた矢先の出来事でした。どうしても理由を知りたいAさんは、しつこく相手に問い詰めましたが、Bさんはなにも答えてくれません。
あるとき、Aさんが馴染みのキャバクラでこの話をすると、なんとAさんと関係を持ったキャバクラ嬢が「私がBに連絡をした」といいます。
彼女にとって、お店の外で会い、ホテルへ行くということは交際しているも同然でした。悪びれる様子もなく、「どうしてBにはプレゼントするのに私にはしないの?」などと、逆にAさんを問い詰めます。
のちにAさんは、元婚約者のBさんから婚約破棄の責任を問われました。
婚約破棄をされた側であるはずのAさんは、おかしいと思いながらも裁判を続けていると、Bさんから決定的な録音証拠が提出されます。
衝撃の録音内容
そこには、キャバクラ嬢がBさんに掛けた電話の内容--「Aは私のもの」「毎週お店に来てくれている」「肉体関係もある」といった発言だけではなく、酒に酔ったAさんが発した「Bとは別れる」という言葉まで、はっきりと記録されていました。
酒癖が悪く、酔うと記憶をなくしてしまうAさんは、自ら婚約を破棄する決定的な一言を、知らぬ間に第三者に漏らしてしまっていたのです。
婚約破棄における慰謝料相場
一般的に、不当な婚約破棄に対する慰謝料の相場は100万円から150万円前後です。ただし、新居の賃貸借契約をすでに結んでいたり、結婚式場のキャンセル料が発生していたりするなど、実際に具体的な金銭的損害が生じている場合は、支払うべき金額がさらに膨らむ傾向にあります。
今回のケースでは、最終的にAさんがBさんに対して100万円の慰謝料を支払うことで決着がつきました。
これでキャバクラ嬢との関係が落ち着くのかと思いきや、悲しい結末が待っていました。当のキャバクラ嬢はすでに店を辞めており、連絡すら取れなくなっていたのです。
手元に残ったのは、3度目の婚約破棄という厳しい現実と、100万円の負債だけでした。
痛烈な失敗を経て、Aさんは失ったものの大きさに気づき、「やはり元婚約者のところに戻りたい」「平凡な毎日に戻りたい」と、温かい家庭への憧れを強く抱くようになりました。「三度目の正直」を信じて、いまも婚活を続けています。
しかし、そんな彼の足は、今もなお別のキャバクラへと向いているそうです。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容から変更している部分があります。

