クルマ好きは安心せよ! ニッポンの未来は明るいぞ! JMSから探れば日本にピッタリな「ちっちゃくて面白いヤツら」が元気だった

車体サイズは軽自動車枠超! 64馬力規制? 関係ないね!
2025年のジャパンモビリティショーは、軽自動車を含めたニッポンの小さなクルマたちが元気いっぱいであることを実感するショーでもあった。
その象徴といえるのがホンダ「スーパーワン・プロトタイプ」だ。名前のとおり、ホンダの軽乗用EV、N-ONE e:をベースにしたスーパーバージョンである。

“令和のブルドッグ”という呼び声も聞かれるように、1980年代を代表するボーイズレーサー、シティターボIIを彷彿とさせるプレス成型されたブリスター状のフロントフェンダーが印象的で、リヤもオーバーフェンダー化されている。
このワイドボディは軽自動車枠を飛び越えたもので、それに合わせてサスペンションから見直され、タイヤも幅広サイズとなっている。まさに本気のEVホットハッチだ。

ボディ寸法が軽自動車枠を超えているのだから64馬力の自主規制にとらわれることもない。取材した限りでは、バッテリーやモーターといった基本的なEVアーキテクチャーはN-ONE e:と共通のようだ。だからといってパワーアップが期待できないわけではない。EVの最高出力に影響するのはモーターよりバッテリーのほうだが、ホンダが採用するバッテリーのポテンシャルから推察するに80〜100馬力はラクに出せるだろう。
ヨーロッパに知らしめる軽自動車独自の実力と魅力
そんなスーパーワン・プロトタイプで注目したいのは、軽自動車ベースでありながら、日本専用モデルではないこと。イギリスをはじめ海外での発売も予定されている。当面は右ハンドル圏での展開となるだろうが、これだけ魅力的なスタイリングなのだから、アツい走りのコンパクトカーを好む欧州市場からもリクエストが届くのは間違いないだろう。
ワイドボディになっているとはいえ、日本独自の軽自動車規格から生まれたホットハッチが欧州を駆け巡る……そんな未来を想像するだけで胸アツだ。
実際、過去には軽自動車ベースのスポーツカーがドイツで販売されていたこともある。それがダイハツの初代コペンで、左ハンドルも用意された。欧州向けのコペンは1.3リッターエンジンに積み替えていたが、スーパーワンのようにEVであれば仕向け地に応じた出力に設定した仕様変更はエンジンよりは容易だ。

スーパーワンによって、日本の軽自動車特有の扱いやすいサイズ感と絶妙なパッケージング、さらに小さなボディから想像できないような上質な乗り味が欧州に伝われば、軽自動車という規格の世界的評価につながるだろう。
もし、軽自動車規格が海外で評価され、多くのフォロワーが生まれれば、ジャパンモビリティショーで初公開されたBYDのスーパーハイト軽EVの「ラッコ」以外にも、海外製の軽EVを日本のユーザーが選べる未来がやってくるかもしれない。
アイデンティを確実に継承するコペンは軽でなくっちゃね
かつて欧州で販売された”軽自動車”としてコペンを挙げたが、ジャパンモビリティショーでは第3世代となるコペンのランニングプロトやデザインスタディが展示された。

2023年のジャパンモビリティショーでは登録車サイズでFRとなる次世代コペンのコンセプトカーを用意したダイハツだが、「コペンは軽であってほしい」という声が大きかったことから、改めて軽自動車サイズのスポーツカーとして次世代コペンの開発がスタートしたという。
コンセプトカーの「K-OPEN」というネーミングは、初代コペンのショーモデルに通じるものであり、軽自動車サイズとオープンボディであることがアイデンティティだと示している。

注目すべきは、コペンがついにFR駆動になりそうな点。これまでコペンはタントやムーヴなどFF系乗用車と基本的に共通のパワートレインを利用していたが、ランニングプロトは、ハイゼットなど軽商用車に使われる縦置きターボエンジンを積んでいた。既存のメカニズムを利用することは現実味を感じさせるもので、コペンの持続可能性にもつながる判断だと思う。
商用軽の活用は伝統的手法でビートも軽トラがベースだった
現時点で、ダイハツのラインアップから横置きエンジンに使うMTは消滅しつつある。一部のスポーツモデルのためだけに横置きMTを作り続けるのは非現実的だ。しかし、FRの軽商用車ではMTは欠かせないため安定的な供給が期待できる。また、軽商用でもATはCVTとなっているので、AT限定免許のユーザーにも対応できるだろう。
軽スポーツカーといえば、平成初期のABCトリオことマツダ・オートザムAZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノを思い出す。このなかで、ビートについては同社の軽トラック「アクティ」の基本設計を利用していたと言われている。最終的にはまったく別物になったようだが、次期コペンが軽商用車のパワートレインの活用を前提に開発を進めているのは、軽スポーツカーとしては伝統的な手法と言えそうだ。

ちなみに、ABCトリオでFR駆動だったのはカプチーノだけ。専用プラットフォームにより前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションを与えられていたことで知られている。次期コペンにおいてもシャーシは専用設計となるだろうから、マルチリンク構造などポテンシャルが高い足まわりとなる可能性はある。
ちなみに、イギリスのケータハムにはスズキの縦置きパワートレインを流用した軽自動車のバリエーションも存在している。軽商用車のエンジンやトランスミッションを利用するというのは、ある意味グローバルスタンダードなのかもしれない。
信頼性・安心感につながるヘリテージもポイント
日本の軽自動車/コンパクトカーシーンが大きく変わりそうな予感も、今回のジャパンモビリティショーにはあった。それはアンダー軽自動車サイズのモビリティの登場である。ダイハツの「ミゼットX」やホンダの「マイクロEV」が、そうした軽自動車より小さなクルマの未来を示していた。

この2台には新しいコンパクトカー像を提示するだけでない共通点もある。それがヘリテージ(=遺産)を活かしていることだ。ダイハツの原点とも言える3輪トラック「ミゼット」の名前を冠していることもそうだが、ホンダのマイクロEVも360媚代の珍車として知られる「バモスホンダ」のスタイリングから影響を受けていることは明らか。
コミューターと呼ばれる街乗り専用の小さなモビリティは、既存の自動車メーカー以外の参入もあるカテゴリーではあるが、こうしたヘリテージの活用はブランドへの信頼感や商品の安心感につながる差別化ポイントとなるかもしれない。
じつはフランスなどでは14歳以上になると運転免許不要で運転できる4輪の小さなEVが生まれている。シトロエンは懐かしい「アミ」という名前を復活させ、フィアットはチンクエチェントを思わせるスタイルの「トポリーノ」を用意する。ミゼットXやマイクロEVは、まさしくそうした欧州の動きとの一致を感じさせる。

軽自動車規格だけでなく、アンダー軽サイズのコミューターにおいても日本車が世界展開する意気込みを、今回のジャパンモビリティショーは示したのかもしれない。
EVコミューターで叶える誰にでも自由な移動
ところで、軽自動車枠より小さいクルマといえば、平成前期に登場したダイハツ・ミゼットIIやスズキ・ツイン、スバルR1を思い出す人もいるだろう。しかし、これらのモデルはボディ長こそ短かったものの、パワートレインは軽自動車規格のフルスペックで、R1に至ってはスーパーチャージャーの過給エンジンも設定していた。
一方、令和のアンダー軽サイズのコミューターはEVを前提としたもの。トヨタ・Cポッドのように軽自動車のナンバーは付けているが、最高速度が60km/hに制限されている。ミゼットXやマイクロEVといった小さなモビリティも、同様に街乗り専用を想定している。そして、こうしたモデルが増えるには、軽自動車より小さい、新しい車両規格の制定が必須と言えるだろう。

また、街乗り専用となれば速度域が低いため、より簡便なシステムで自動運転が可能になるという話もある。懐かしいルックスやネーミングの、そうしたモビリティで誰もが自由に移動できる、明るく楽しい社会をおおいに期待したい。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年3月号」の記事を再構成して掲載しております






















