「新幹線に弱冷房車はいらない!」猛暑の試験導入にSNSで賛否…JR東海が明かした「導入理由」
真夏の新幹線に登場した「弱冷房車」が、SNSで議論を呼んでいる。冷房が苦手な人にとってはありがたい一方で、猛暑のなかでの導入に戸惑う声も少なくない。
「新幹線に弱冷房車はいらない!」
東海道・山陽新幹線で、夏季限定の「弱冷房車」が試験導入されている。
実施期間は2026年7月1日から8月31日まで。対象となるのは、東海道・山陽新幹線の16両編成「ひかり」号の3号車自由席だ。通常の車両よりも冷房の設定温度を2度高めにした車両を用意し、利用状況などを調査しているという。
弱冷房車そのものは、鉄道利用者にとって決して珍しい存在ではない。
都内を走る鉄道でも、車両の窓や扉付近に「弱冷房車」と書かれたステッカーを見たことがある人は多いだろう。東京メトロでは、日比谷線、東西線、千代田線、半蔵門線などに弱冷房車が設定されている。冷房の温度設定は通常車両が26度、弱冷房車が28度だ。
都営地下鉄でも、浅草線・三田線・新宿線では通常の冷房が25度、弱冷房車は28度、大江戸線では通常の冷房が22度、弱冷房車は24度と案内されている。
弱冷房車の歴史は意外と古く、日本で初めて導入したのは1984年の京阪電鉄とされる。つまり、弱冷房車は“新しい試み”でも、“見慣れない光景”でももちろんない。
だが今回、それが新幹線に導入されたことで、SNS上ではさっそく議論を呼んでいる。
「新幹線の弱冷房車暑すぎてやばい」
「新幹線に弱冷房車はいらない!!! 高温多湿の環境なのに意味分かんないよ!!」
「毎年、暑さの記録更新してる近年で弱冷房車の設置って…。強冷房車が欲しいぐらいや」
「東海道新幹線の弱冷房車、不快レベルで暑過ぎる。なに考えてんだ」
もちろん、「冷房が苦手なのでありがたい」「長時間乗っていると体が冷えるので助かる」といった賛成の声もある。
ただ、真夏の新幹線に導入されたこともあり、SNS上では否定的な声も目立つ。なぜ、猛暑が続くこの時期に、あえて弱冷房車を導入するのか。JR東海に話を聞いた。
JR東海が感じている弱冷房車の手応え
まず、導入の背景について、JR東海は「東海道・山陽新幹線をご利用いただいているお客さまからのご意見やご要望を調査したところ、『弱冷房車』に一定のニーズがあることがわかりました」と説明する。
「夏季の新幹線車内における温度については、快適にご利用いただけるよう乗務員が状況に応じて設定しているところですが、さらなるサービス向上策として、冷房の設定温度が他の号車と比べて高い車両をご用意した場合のご利用状況等を調査すべく、昨年8月、初めて試験導入に至りました。
昨年8月の試験導入では、1日10本の列車(すべて『ひかり』号)を対象に行い、良好な結果が得られたことから、今年は更に対象となる列車、期間を増やして、ご利用状況等を調査します」(東海旅客鉄道株式会社 広報部 東京広報室・担当者、以下同)
つまり、冷房が苦手な利用者からのニーズを受け、昨年から試験的に導入。今年はその対象を広げたということだ。
では、なぜ対象は「ひかり」号の3号車自由席なのか。SNS上では、賛成派・反対派を問わず、「やるなら指定席の方がよかったのでは」という声もあるが……。
「今回は試験を実施するにあたり、お客様に弱冷房車か否かを選んでいただけるよう自由席で設定することとしました。16両編成のひかり号では、自由席号車が5両あること、また、前後の号車も含めて座席移動の自由度が高いこと等に鑑み、3号車自由席での実施としました」
指定席ではなく自由席にしたのは、利用者が選びやすく、必要に応じて移動しやすいから。たしかに、指定席で弱冷房車にあたってしまうと、暑いと感じても簡単には移動しづらいだろう。
一方で、SNSでは「弱冷房車より強冷房車がほしい」といった声もある。通常の車両でも暑いと感じる利用者への配慮については、どう考えているのだろうか。
女性専用トイレも設置 進化する新幹線
「新幹線の車内温度は、乗務員がきめ細かく車内巡回を行い、節電に努めながら適切な温度となるよう調整を行なっております。
一方で、車内の混雑状況、お客様の体感温度にも個人差があるなど、すべてのお客様にご満足いただけない場合もあるため、ご要望があれば、乗務員にお申し付けいただきますようお願いいたします」
ここ最近だけを見ても、新幹線のサービスは、利用者の声に合わせて少しずつ変わってきている。
2024年末には、東海道・山陽新幹線に女性専用トイレを導入していくことを発表し、2025年春より、「のぞみ」の指定席も拡大された。大きな荷物を置ける座席や、仕事をしやすい「S Work車両」なども登場している。
その流れで考えれば、今回の弱冷房車も、利用者に合わせた新たな選択肢のひとつといえるだろう。
すべての人にとって快適な車両をつくるのは簡単ではない。それでも、利用者の声に合わせて新幹線が少しずつ変わっていくこと自体は、前向きに受け止めるべきなのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部

