日経7万円はバブル!? プロが警告する暴落リスクと「TOPIX投資」4つの正解

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プロが「TOPIX」を重視する訳

連日のように日本株が最高値を更新し、6月に史上初めて7万円の大台を突破した日経平均株価。

東京証券取引所などが今月2日に発表した’25年度の「株式分布状況調査」によると、個人株主は延べ9198万人と過去最多を記録した。株高に乗り遅れまいと、NISAを活用して資産形成を目指す若年層を中心に新たな投資家が参入したとみられているが、活況に沸く株式市場を横目に「あのとき買っておけば……」「完全に波に乗り遅れた」と悔やむ人も少なくないかもしれない。

だが、証券会社出身のファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんは次のように話す。

出遅れたと嘆く必要はありません。株価がいつ上がるか下がるかは、誰にもわからない。プロの投資家であっても、いわゆる『買い時』を完全に予測することは不可能です。

だから、リスク分散をするために毎月同じ額を機械的に買うというのが積み立て投資の発想で、余剰資金があるならいつでも『始め時』と言えます。今のような特定の銘柄が激しく乱高下している局面では、市場全体に分散投資できる『日本株インデックス』を買うのがおすすめです

NISAの普及もあって、今や資産形成の王道として定着しているインデックス投資。これから日本株の成長に乗ろうと考えたとき、どの指数を選べばいいのか。

日本の代表的な株価指数といえば、ニュースでもお馴染みの「日経平均株価」と、「TOPIX(東証株価指数)」の2つがある。

「日経平均株価」は、日本経済新聞社が選定した東証プライム市場の主要225銘柄の単純平均。各銘柄の株価を足して割ったもので、ファーストリテイリングや東京エレクトロンのように1株あたりの株価が高い「値がさ株」の影響を強く受ける。

一方「TOPIX」は、東証の主要市場(プライム市場など)に上場する幅広い銘柄の「時価総額」をベースに計算されている。企業の株価だけでなく発行済み株式数も考慮した、日本の株式市場全体の勢いを表す総合的な指数といえる。

『機関投資家』と呼ばれる資産運用のプロたちは、日経平均株価はベンチマーク(投資成果の評価基準)としてあまり重視しません。なぜなら日経平均は、ある特定の『値がさ株』が少し値上がりしただけで、市場全体の指数が大きく跳ね上がってしまうという歪みが生じやすいからです。

プロたちが日本の株式市場全体の総合的な指数として重視し、信頼を寄せ続けているのはTOPIX。それは昔から変わりません

日経平均の割高感と半導体バブル

現在の日本市場では、日経平均株価とTOPIXのどちらがより買われているのか。それを測る代表的な指標が「NT倍率」。これは「日経平均株価 ÷ TOPIX」で算出され、市場の強弱や、相場の偏りを測る指標として用いられる。この倍率が高ければ高いほど、特定のハイテク株や一部の大型グロース株(成長株)が相場を牽引している状態といえる。

足元のデータを見てみると、NT倍率が過去に例を見ないほど高くなっていて、一時18倍という最高水準に達しました。背景には、ここ1年弱の間に起きた異様な値動きがあるんです。

去年の9月に4万2000円ほどだった日経平均は、1年経たないうちに7万円台へと一気に約8割も上昇しました。一方TOPIXは、去年の9月に3100ポイントほどだったのが、現在は4000ポイント程度と約3割の上昇に留まっている。

これは、日経平均を構成するごく一部の企業ばかりが必要以上に買われ、株価が強烈に引っ張り上げられていることを意味しています。通常であれば、ここまで差が開く前の段階で市場のブレーキが働き、NT倍率は下がっているはずなんです。

ボリンジャーバンドという株価指標では、確率論的に約2%の確率でしか起こり得ないほどの差が開いた状態が続いていました。足元では是正されつつありますが、それでも日経平均の割高感は相当残っています。しばらく、この歪みが是正される傾向が続くでしょう

それほどの異常な乖離が起きているにもかかわらず、日経平均はなぜ高値を維持できているのだろう。原動力となっているのは、特定の半導体やIT関連の株だという。

日経平均株価はソフトバンクグループや東京エレクトロン、キオクシア、そしてアドバンテストといった一部の巨大銘柄によって、まだかなりの部分底上げされています。とりわけ半導体関連の勢いはすさまじく、キオクシアに至っては1年で株価が40倍以上も上がるという、にわかには信じ難い爆発的な急上昇を記録しました。

巷では、キオクシアの株を保有しているだけで、資産が10億円を超えた同社の社員が600人も現れたというニュースが飛び交うほどです

市場には「半導体バブルはまだ続くはずだ」との強い期待感がある。そのため、日経平均株価がTOPIXに比べていくら割高になっていても許容されている状況なのだと、松岡さんは言う。

これから日本株インデックス投資を始める場合に日経平均株価とTOPIXのどちらを選ぶべきかといえば、『半導体関連株の勢いは続く』と思う人は日経平均、『いつかは下がり始める』と思えばTOPIXを買うということになるでしょうね。

ただ、僕は、TOPIXにしたほうがいいと思っています

暴落に備えるTOPIX投資

松岡さんがTOPIXをすすめる理由はこうだ。

これまでの市場歴史を見ても、日経平均とTOPIXの異常なバランスは必ず元に戻ろうとします。実力以上に買われすぎた日経平均は、遠からず、日本企業全体の実態に見合った水準へと引き戻される。いずれ対TOPIXで収束する調整局面を迎えるはずなんです。

日米の株価の先行きを冷静に見据えると、日経平均株価は9月ごろまでに6万円程度まで一度下落する可能性があると僕は予測しています。

そのような市場全体の下げが来た場合、特定の銘柄に依存している日経平均は大きなダメージを受けます。しかし、市場全体に幅広く薄く分散しているTOPIXであれば、下げ幅が軽く済む可能性が高いんです。リスクコントロールの観点からも、TOPIXのほうが有利といえます

さらに、これから日本株に投資する人にとって強力な追い風となるのが、現在進行中の東京証券取引所の「TOPIX改革」だ。東証はTOPIXの選定基準を数十年ぶりに見直し、流動性の低い銘柄や流通株式が少ない企業を段階的に除外して、実体のある優良な銘柄を新たに組み入れる。

選定基準の見直しによって、TOPIXはより、日本の経済実態に即した効率的な指数へと進化すると思います。これはプラスに評価できる材料です

投資に回せるお金があるタイミングを「始め時」とするならば、「インデックスではなく注目の個別株を」と考える人もいるかもしれない。

いくら勢いがあるからといって、ここからキオクシアなどの個別株を直接つかみにいくのは、初心者の資産運用としてはあまりに危険です。1年で40倍に跳ね上がるような銘柄は当然ながら足元の乱高下も激しく、この先さらに40倍になるか、あるいは急落するかは誰にも予測できません。もはや投資ではなく、ギャンブルの感覚に近いでしょう。

しかも、これだけ高騰した個別株は、最低購入単位だけでも数百万円規模の資金が必要になります。新NISAなどで少額からコツコツ買いたい個人投資家は、そもそも手が届かないんじゃないでしょうか

オルカン一辺倒を見直す4つの技

現在、新NISAを活用している人の多くは、「S&P500」や「オルカン」に資産の全てを投じているといわれる。

そんな「S&P500全振り」や「オルカン全振り」組も、日本株インデックスへの投資を検討するべきか。

日本企業の業績は現在、全産業ベースで5年連続過去最高を更新し続けています。実感している人は少ないと思うけれども、日本の景気は今すごくいい状態で、企業側の基礎体力は非常に強い。ポートフォリオ(資産の組み合わせ)の分散先として、日本株を見直す価値は十分にあります。

僕としては、ある程度の資金をTOPIXインデックスに振り分けることをおすすめします

そこで、松岡さんが提案する「資金の動かし方」を4パターン紹介する。

パターン1【マイルド】S&P500やオルカンへの積み立て投資額は変えずに、手元にある余剰資金で少額でもいいから日本株の積み立てを新たに追加する。

パターン2【マイルド】たとえば、これまで米国株に毎月5万円積み立ててきたのであれば、その一部(半分や3分の2など)を日本株の積み立てに回すように設定を変更する。

パターン3【アクティブ】これまでに買い貯めてきた米国株などの資産はそのまま口座に残して運用を続け、毎月の積立金については「全額」を日本株に切り替える。

パターン4【ドラスティック】これまでの米国株などを全て売却して利益を確定させ、その資金を丸ごと日本株へシフトさせる。

パターン4は、かなり大胆な選択であり、一般の人が心理的な抵抗感を押し殺してまで無理にやる必要はありません。『自分が許せる範囲』を基準に選ぶのが賢明な判断です

個人投資家が選ぶべき日本株インデックスは、日本経済全体の底堅い実態をそのまま享受できる王道のTOPIX。「出遅れた」と悔やんでいるのであれば、S&P500やオルカンに偏ったポートフォリオを見直し、自分が許せるグラデーションの範囲内で、新NISAを活用したTOPIXの積み立て投資を淡々と始めるのもいいかもしれない。

松岡賢治(まつおか・けんじ)マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本』。

取材・文:斉藤さゆり