【永田 雅乙】全東信の破産、本当に怖いのは”火事場泥棒”の出現…「ヤツらの狙いはカード決済端末」専門家が警告
本当に恐ろしいのはこれから
「確かに数年前の不祥事をきっかけに、『全東信』への信頼感が加盟店の間で揺らいでいたのは事実です。ただ、それでも『潰れはしないだろう』『どこかの金融機関が救いの手を差し伸べるのでは』と楽観的に思ってた人も多かったはず。それだけに今回の破産は、みんな“寝耳に水”だったのではないでしょうか」
そう語るのは、長年にわたって数多くの飲食店のプロデュースを手掛けてきた外食産業専門コンサルタントの永田雅乙氏だ。
すでに大々的に報じられている通り、大阪に本社を置くクレジットカード決済代行会社の全東信が今月6日、大阪地裁に破産を申請し、同日付で破産手続き開始決定を受けた。8日、帝国データバンクの続報によれば、申請時の負債は金融機関からの借入金を中心に約1151億6400万円に上るという。
今年最大の負債額となったこの一件。当然パニックになっているのが、全東信が提供してきた「全東信決済システム」を導入している事業者たち。同システムは、飲食店を中心としたクレジットカード加盟店が回収するカードの売上代金をカード会社に先行して入金するサービスだ。
同社のHPによれば取引先は約20万店(2018年時点)に及ぶが、破産手続きの開始に伴って決済サービスは中止となったことで、店側はクレジットカード決済が使用不可の状態に。代替手段が無く「現金のみの支払い」を余儀なくされる店が続出する事態となっている。
だが、「飲食店にとって本当に恐ろしいことは、これから起こりうる」と永田氏は言う。
なぜ全東信は飲食店の間で広まったのか
そもそも全東信はいかにして広まったのか。同社は2006年に設立されると、飲食店におけるクレジットカードの決済比率が高まるにつれ、その需要も高まっていく。全国的に広まった理由について、前出の永田氏が解説する。
「かつてのカード加盟店の審査はハードルが高く、また審査そのものにかなりの時間を要することもザラでした。そうした環境の中で、全東信は1店舗単位から申し込めて審査基準も甘く、審査が通ればほぼすべてのカードが使えるようになる、さらに手数料も他社より低く設定されていたこともあり、人気を博しました」
何より全東信を頼っていたのが飲食店の中でも、キャバクラやホストクラブ、スナックといった、いわゆる夜職、水商売にあたる店だろう。これらの業態は通常の飲食店と比べて決済にまつわるトラブルが起こりやすく、またキャッシュフローがカツカツになりやすいという特徴がある。
そのため、自然とカード審査はシビアになるわけだが、「全東信であれば通る」という話は業界内では常識になっていたという。また、クレジットカード会社からの入金は「月1回翌月払い」が一般的だが、そこも全東信が提供する「早期支払いサービス」を導入すれば、月2、4、6、8回……といった形でニーズに合わせて店側が入金タイミングが選べ、キャッシュフローの迅速化が見込めるというのも大きなメリットだった。
かくして2020年3月期には、売上高約80億円に達していた全東信。しかしピークはここまで、以降業績は右肩下がりになっていく。
「コロナ禍で加盟店の大部分が休業・時短営業を余儀なくされたことで売上が減少し、赤字経営へと転落してしまいます。その後、コロナ明けでなんとか挽回しようと積極的な加盟店開拓に乗り出すわけですが、焦りゆえか冒頭でも触れた通り、2024年に加盟店契約を他人名義で結んだとして、全東信社員が逮捕される事件が発生しました。これにより、『全東信から別の決済代行に乗り換える』という事業者も多かったと思います」(永田氏)
情報の宝庫「CAT端末」を狙って…
したがって、全東信の業績悪化や不祥事について少しでも知っている人間であれば、今回の破産が報じられる前に、ある程度対策を講じることができたかもしれない。とはいえ、それはあくまで情報に敏感な事業者の話だ。永田氏が続ける。
「どうしても情報が乏しい地方の飲食店などでは、『全東信が危ない』と考えたことすらない人ばかりだったはずです。実際、6日に破産手続き開始の決定がなされた後、本来なら全東信の端末使用を即時停止すべきところを、知らずに使い続けてしまい、未入金の売上代金が膨らんでしまったという事業者がいるくらいです」
言葉を選ばなければ、“情報弱者”に陥っている飲食店の事業者たち――。さらに恐ろしいことに、永田氏によれば、そんな彼らを狙う「火事場泥棒」の出現が今後危惧されるという。いったいどういうことなのか。
「全東信の破産にあたって、差し当たり飲食店に求められる対応として、入金されていないカードの売上代金を集計することです。全東信より最後に入金があった日と、それ以降にカード決済した金額について、『CAT端末』と呼ばれるカード決済端末を使って確認・記録しなくてはいけません。この情報が債権届出や、その先のつなぎ融資などの対策に必須となります。
仮に、このCAT端末を第三者に盗まれたとしたらどうでしょうか。まず未入金分の回収は困難になるほか、最悪の場合、第三者が事業者の名を騙って不正に融資を受けたりする可能性が考えられます。そうならないよう、まずはCAT端末を手元でしっかり管理しておくことが重要なのです」
全東信の破産による余波はさらに広がりを見せそうだ。
【後編記事】『「全東信という猛毒」におかされた地方歓楽街の悲惨な末路…そして「情弱な店」からどんどん潰れていく』につづく。

