中国勢に日本の軽自動車市場が狙われている! どんなクルマかよりも「売り方」ひとつで脅威になる可能性は大きい

この記事をまとめると
■EMTAが2027年に軽規格EVの投入を予定している
■中国メーカーは販売手法でも差別化を狙っている
■軽EV市場は今後さらに競争が激化する可能性が高い
中国メーカーは軽サイズBEVの開発に熱心
2026年5月27日(水)、オートバックスセブン、中国奇瑞(チェリー)汽車など日中5社が出資するENT株式会社は、日本市場向けの新しいクルマブランドとなる「EMTA」を発表した。このEMTAブランドの日本初導入モデルは日本の軽自動車規格のBEVとなり、2027年に市場投入予定であることを明かした。
上海通用五菱汽車(ウーリン)は、韓国の軽自動車(軽車/キョンチャ)である当時の韓国大宇マティスを、「シボレー・スパーク」として中国で販売していたことがある。奇瑞汽車は2003年、そのコピー車となる「奇瑞QQ」をラインアップして、裁判沙汰にまで発展したことがある。

現在QQという車種はラインアップされているが、全幅が1800mmをオーバーしておりとても軽自動車と呼べる代物ではない。ほかのラインアップを見ても「これかな」というモデルはないので、今後新規投入される車種がそのままなのかは定かではないが、日本の軽自動車規格に収まり、日本国内でも販売されることになるようだ。
2026年7月に中国BYDが日本の軽自動車規格BEVとなるラッコを正式発売する。EMTAの軽自動車規格BEVの発売は2027年を予定しているので、ラッコの価格設定や販売動向を見て、自ブランド車の最終的な販売戦略を練ろうとしているのかもしれない。

筆者は2025年春に開催された上海モーターショー会場内にて、日本の軽自動車に近いサイズの展示車を数多く見ている。個々にスペックを調べると、ボディ寸法が日本の軽自動車規格よりわずかに大きかったのだが、「もしかして日本市場を……」とは強く感じた。そこから時をそれほど経たずして、すでにBYDと奇瑞が軽自動車規格BEVを日本市場に投入しようとしている。上海モーターショーでは、奇瑞以外にもウーリンや吉利(ジーリー)でも日本の軽自動車規格に近いサイズのBEVが展示されていた。

EMTA発表に関するEMTのリリースには、日本において新車の約3台に1台が軽自動車であり、月平均の走行距離が400kmであるとして、初導入モデルとして軽自動車規格のモデルを選んだとしている。
もちろん趣味で乗っているひともいるが、多くの軽自動車ユーザーは、日常生活での移動手段のアシとして乗っているだけで、メーカーや車種というよりは自分の使い方にふさわしいものがほしいといった観点で選んでいるように見える。ホンダN-BOXがよく売れているが、これも「日本一売れている」というフレーズ効果が大きいものと筆者は考えている。

軽自動車ユーザーではブランドなどにこだわりがないひとも多く、複数保有されているなかの1台や2台などとして軽自動車があれば、ファーストカーでは食指は伸びないが、セカンドカーやサードカーならば中国系BEVが選ばれやすいとも判断しているのかもしれない。
「どうやって売るか」が重要
ガソリン価格が世界情勢に翻弄されやすいのはいま多くのひとが感じていることだろう。さらに地方ではガソリンスタンドの廃業も相次いでいる。大都市部に比べれば戸建て住宅に住んでいる割合も高いので、充電設備を自宅にすぐ設置することも可能となっている。また、現行の軽自動車の燃費性能は必ずしも抜群に高いとはいえない。
燃料タンク容量が小さく1回の給油量が少ないのでついつい「燃費に優れる」と錯覚しがちだが、登録車に比べ給油頻度が多いことに気がついてそちらへ乗り換えるひともいる。また、維持費の安い軽自動車は節約志向のひとが注目することが多いので、化石燃料ではなく電気で走る軽自動車に魅力を感じて購入してもらえることも期待できる。

課題はどうやって販売していくかであろう。BEVを電化製品と考えれば、家電量販店で買えるというのはある意味理にかなっている。また、オール電化住宅を販売しているハウスメーカーで、住宅とともにトータルコーディネートのひとつとして買うことができるのも、消費者は魅力に感じるはずである。
ここ最近は新車ディーラーへわざわざ足を運ばないと新車が買えないことに煩わしさを感じるひとも少なくない。いまどきの中国のショッピングモールにはBEVを展示するテナントが当たり前のように入っている。新車ディーラーは人気のないところに店を構えることもあるのでお客を集めなければならないが、ショッピングモールへ出展すれば集客にかかるコストも軽減できる。日本でも既存ディーラーのショッピングモール出展がないわけではないが、少数だ。

EMTAのように、メンテナンスで全国のオートバックスが利用できれば、買える場所の多様化がカギとなるだろう。一時的なのかもしれないが、現在エンジンオイルも不足傾向があり、オイル交換もままならないことになっている。そんな心配はBEVでは不要となる。
ただし、いま日本と中国の政治関係を見ればかなり厳しい状況となっている。勝機があるからと日本参入を中国メーカーが目指そうとしても、そう簡単に監督官庁もOKを出すことはないようなので、一気になだれこむように中国系ブランドの軽自動車規格BEVが日本市場に進出してくるということはなさそうである。
しかし、軽自動車規格BEVで警戒するのは中国勢だけではない、中国と異なり親日国として有名なベトナムの自動車メーカー・ヴィンファストでもベトナム国内で人気が高いのは軽自動車規格に近いコンパクトサイズBEV「VF3」となっており、その動きが気になるところである。

仮に欧米系ブランドが軽自動車を有望と考えても、とくに欧州では階級社会が根強いので、“軽自動車=安いクルマ」的な思考が強くなってしまい、日本の軽自動車を凌駕するようなものはできないものと考えている。
BYDのラッコでは、かつて日本メーカーで辣腕を振るったひとが開発に関与しているという話がある。すでに筆者が上海で見てきたような、中国系メーカーの軽自動車的モデルを見ると「日本メーカー臭」が強いので、日本人エンジニアが絡んでいるのかもしれない。

海外製軽自動車規格BEVの日本進出は、BYDや奇瑞だけでは終わりそうもない気配がある。登録車に比べて圧倒的に価格が安いだけでなく、買う側に強いこだわりが少ないこともあって「売りやすい」のは、いまの日系ICE軽自動車でも同じ話。
どんなモデルがラインアップされるかよりも、「どのように売っていくのか」というほうを筆者は興味深くウォッチしている。





