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 ただ挨拶しただけなのに……。何げない会話を好意と思い込み、「人生最後の恋」に全力を注ぐ高齢男性たち。今、そんな「老人ストーカー」による被害が増えているという。なぜ、彼らは暴走してしまうのか。被害者の証言から、その恐るべき実態に迫る。
◆暇もカネもある老人が昼夜を問わずつきまとう

 篠田美香さん(仮名・64歳)は、1年前に遭ったストーカー被害をこう振り返った。

「主人と死別後、健康のために地域のデイサービスでやっている体操に週1回参加してました。新しく70代の男性が入ってきたのですが、なかなかなじめず、気の毒に思って、時折、声をかけるようになったんです。その後、散歩の途中や行きつけのスーパーでよく顔を合わすようになり、挨拶程度はしてました。1か月ほど後、『お茶でもどうですか?』と誘われ、断るのも悪いので行ったら、道すがら突然、抱きしめてきて、『あなたも寂しいでしょう』って……。気持ち悪くて、はねのけて家に帰りました」

 だが、執拗なストーカー行為は続く。

「デイサービスのお友達に番号を聞いたらしく、多いときは一日に10回以上電話がかかってきて、無視していたら自宅に押しかけてきた……。警察に通報すると、『オレはストーカーなんかじゃない!』『交際相手を心配して家を訪ねただけだ』などと言っていたようです」

 犯罪心理学者の越智啓太氏は、こう明言する。

「日本の犯罪は減少しているが、高齢者(65歳以上)の犯罪だけが増加しており、性犯罪やストーカー事案も増えてます。背景には少子高齢化によるシニアの増加があるが、人口比率以上に犯罪が増えている。つまり、単なる人口増では説明できない高齢者特有の要因があるのです」

◆リスク要素フルコンボ。70代が最も危険な理由

『犯罪白書』(法務省)によれば、刑法犯全体に占める高齢者の割合は30年前には3.9%だったが、’24年には21.4%と5倍増となった。今や、検挙数の5人に1人が高齢者だ。越智氏が続ける。

「特に、70代の男性はストーカーになりやすい傾向が顕著です。会社を退職して地位や肩書を全て失っても現役の頃のプライドを引きずり、かつてのように周囲から尊敬されることのない現実にフラストレーションを溜める人も多く、そもそも暴走しやすい。また、仕事一筋で夫婦仲が悪いうえ、会社以外の人間関係がない人が多い。地域のコミュニティに加わろうにも、プライドが邪魔をしてできない。孤独は怒りを増幅させます。ストーカーは四六時中、監視し、つきまとうのでお金も時間も必要ですが、この世代は両方持っている人も多い。プライド、孤独、カネと時間というストーカー化のリスク要因の全てを満たしているのが、70代男性なのです」

 関東のリゾートでカフェバーを経営するシングルマザーの浅川恵さん(仮名・34歳)も、被害者の一人だ。

「ここら辺はリタイアして購入したリゾートマンションで暮らす裕福な高齢者が少なくない。ウチは観光客向けの店ですが、そんな地元のおじいちゃん客にストーカーされたんです。単なる接客を好意があると勘違いされて、初めは週1だったのが、次第に来店が増えて、ついには毎日来て長時間居座るようになった」

 ただ、その頃はまだマシだったという。

「新たに来店したおじいちゃんも、ストーカーになったんです。毎日のように同じ客2人がずっと店にいて、牽制しあっているので、他の客が寄りつかない。『昨日、駅前で男と何を話していたの?』と聞いてきたり、どこにいても監視されてるようで気味が悪かった。迷惑だからやめてくれと何度言っても、『君が心配なんだよ』とニヤニヤして意に介さない。そのうち一人が『息子の運動会を応援しに行く』と言い出したときは本当に怖くて、仕方なくしばらく店を閉めました」