将棋ファンの度肝を抜くような、まさに盤上のスペクタクルであった。6月27日に放送された将棋の早指し団体戦「JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026」の予選Aリーグ1位決定戦、北海道・東北バルペックス 対 九州サザンフェニックス戦。第1局を先勝し、そのまま勢いに乗るかと思われた北海道・東北を相手に、第2局では想像を絶する「ビクトリーロード」が切り拓かれた。盤上の激闘と盤外の高度な心理戦が交錯したこの一戦は、視聴者からも「スピードの上げ方がすごい」「すごい勝ち方」と興奮のコメントが殺到する名勝負となった。

【映像】玉が前進!古賀六段の“ビクトリーロード”(実際の映像)

 注目の第2局は、北海道・東北の屋台骨でもある広瀬章人九段(39)と九州の新鋭・古賀悠聖六段(25)の顔合わせとなった。対局前からバチバチの火花を散らしたのが、持ち時間を削って先手番を奪い合う新ルール「先手番入札制度」だ。チーム内の作戦会議で「得意の“サザン”(チーム名にかけた33)でいきますか?」と提案された古賀六段だったが、「何となく、朧げながら浮かんだ」という26秒で提出。一方の広瀬九段は「このくらいで。30秒は使いすぎかな」と絶妙な28秒を入札した。

 わずか2秒差で先手番をもぎ取った広瀬九段は「してやったりです」とニヤリ。対局後にも「前回は1秒差で、今回2秒差で、なんか対局前には勝ったような気分なんですけど」と語るほどの見事な駆け引きに、控え室も大盛り上がりとなっていた。

 戦型は雁木へと進み、フィッシャールールの経験値とタイトル獲得の実績で勝る広瀬九段が快調に攻め込んで主導権を握る展開となる。しかし、若手実力者の古賀六段もただでは崩れない。中盤以降、ギアを一段階上げて広瀬陣へと鋭く斬り込んでいく。広瀬九段の玉型は危うい状態に追い込まれたものの、そこは百戦錬磨のトップ棋士らしく冷静な対応を見せ、互いの意地とプライドがぶつかり合うハイレベルな攻防戦へと突入していった。

 そして迎えた終盤、広瀬九段の決断の一手に対し、古賀六段が誰も予想しなかった驚愕の構想を披露する。角と桂馬がにらみをきかせる危険地帯において、自らの玉を前進させる△3三玉の“顔面受け”を力強く決行。そこから一気に相手陣へと突入する入玉ルートを開拓してみせたのだ。

 3四、2五とするすると玉を逃がして後手優勢を決定づけたこの手順に、解説を務めた山本博志五段(29)も「こんなビクトリーロードがあったとは!」と感嘆の声を上げた。『決めてやる』という古賀六段の熱い決意を証明するかのように、最終盤の心拍数は155bpmをマーク。執念の指し回しに、視聴者も「ビクトリーロード!!」「わっしょいわっしょい」「ゆうせい!ゆうせい!」「古賀くんかっけー」「150kmでラストスパート!」「スピードの上げ方がすごい」「すごい勝ち方」「これはすばら」「面白い将棋だったなー」「お見事」と大興奮に包まれた。

 怒涛の展開の末、120手で古賀六段が勝利を収め、チームに貴重な勝ち星をもたらした。敗れた広瀬九段は対局後、「肝心の盤面の方になかなか影響が出なかったのが誤算ではありました」と盤外の入札成功を活かせなかったことを悔やんだ。さらに「途中までペースを握っていたような気がするんですけど、ちょっとやっぱり40代の将棋になってしまって、20代の切れ味についていけなくて。結果的にちょっと戦犯になってしまいました。次に生かせればなと思ってます」と自嘲気味に振り返りつつ、次戦への雪辱を誓った。

◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け、全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)