パンツ事件で“衝撃のひと言”…勝新さんが「一生忘れられない」と語った中村玉緒さんの“言葉”
俳優の中村玉緒さん(86)が亡くなった。6月16日には都内で通夜が営まれ、共演者やゆかりのある人たちのコメントが連日のように紹介されている。だが、やはり玉緒さんといえば、何といっても同じ俳優で夫の勝新太郎さん(享年65)の存在を抜きにできないだろう。
【秘蔵写真】りりしい眉毛に花咲くような笑顔…「中村玉緒」の“美し過ぎる一枚” 若かりし夫・勝新太郎さんとの2ショットも
「生まれ変わっても、また勝新太郎と結婚したい」
「笑わな、勝に叱られます」
97年6月、惜しまれながら先に逝った勝さんの葬儀で、湿っぽくならぬよう、最後まで気を遣い続けた玉緒さん。その玉緒さんを、勝さんはどう見ていたのだろうか。エピソードに溢れている二人だが、勝さんサイドから綴られた記録から、夫婦の姿を追ってみる。

「パパがこんな大物」
数々の伝説を持つ勝さんだが、、「パンツ事件」をご記憶のむきも多いだろう。。1990年1月16日、ホノルル空港に降り立った勝さんのパンツの中からコカイン1.75グラム、マリファナ9.75グラムが発見された。罰金1000ドルで即日釈放されたものの、日本に帰国すれば麻薬取締法(密輸罪)違反で警察に逮捕されることを危惧したのか、勝さんはそのままハワイにとどまることに。
しかし、91年3月12日、ハワイ州の移民帰化局から強制退去命令が出され、現地で会見に応じた勝さんが言ったのが、「総理大臣の代わりはいても、勝新太郎の代わりはいない」「もうパンツをはかないようにする」という“名言”だった。
そして5月12日、実に482日ぶりに帰国して警視庁から事情聴取を受けるも、薬物の入手先など、肝心なことは捜査官を煙に巻く大胆さ。実刑も予想されたが、薬物が比較的少量であり、仕事を失うなど社会的制裁を受けたとして92年3月26日、懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を受けた。
話は、帰国当日。警視庁に取り調べを受け、「今日は帰っていい」と言われた。
〈弁護士さんが警視庁まで迎えにきた。初台の家はマスコミの山ができていて入れないというので、代々木署のパトカーに先導してもらい、カメラの放列の中をかいぐぐってやっと家に着く。一年四か月ぶりに、家の玄関を開け、朝帰りのように帰った。
玉緒の目が笑っている。
「お帰りやす。パパがこんな大物だってこと、初めて知りましたがな。今度の事件のおかげで。ほんまにたいしたもんですなぁ、パパは」
一年四か月、どんな思いで暮らしていたのか、どんなつらい思いをしたか。
帰ってきたら、ああも言いたい、こうも言いたい。テレビ・ニュースで勝新太郎が、麻薬不法所持で逮捕されたと聞いたとき、玉緒は、
「これで何もかもおしまいですなー」
と言ったらしい。その玉緒が初めて口にした迎えの言葉が、
「大物ですな」
この言葉は一生忘れられない。この言葉に返す言葉は、一生みつからないだろう。
平成三年五月十三日午前二時――。〉
1992年11月に刊行された、勝新太郎著『俺・勝新太郎 劇薬の書』(廣済堂出版)から。役者はもちろん、演出家としても大変な才能に溢れていた天才・勝新太郎も、玉緒さんにだけは頭が上がらなかったことがよくわかる。
プロポーズはドラムソロ
二人が初めて共演した映画は「かんかん虫は唄う」(1955年)だった。その5年後、勝さんの出世作となる「不知火検校」で共演するなど、映画の現場で一緒になることが多かった。
それから勝さんは仲間と共に、玉緒さんと食事に出かけるようになるが、勝さんの母が玉緒さんの父・成駒屋中村鴈治郎の大ファンで、楽屋にシュークリームの差し入れをするほどだったという。
〈この女を抱きたいという気持ちはわいてこない。そういう想像を玉緒にするのはいやだったが、毎晩毎晩、玉緒を食事に誘う。誘う時には、必ず六、七人、大勢の仲間を連れて、飯を食いに行ったり、飲みに行ったりしていた。玉緒は俺のことを、よっぽどの金持ちだと思っただろう。(略)でも、ふたりきりでデートってのはできなかった。夜十時前には、必ず玉緒を家に送る。毎日そんな日が続いていた。〉(同)
やがて勝さんは決心する。「俺が旦那になればいいんだ。俺が幸せにすればいいんだ」。京都のナイトクラブ、「ベラミ」にいつものメンバーと出かけた際、勝さんは玉緒さんの手を取り、ホールに踊りに行く。
〈玉緒はいつも鼻のあたまに汗をいっぱいかいていた。手を握ると、手も汗で濡れている――。
「俺と結婚」
と言ったのと同時に、ドラムソロが始まった。
ダンスカドンドン、ダンスカドンドン……。
「俺と――」
ドンタンドタン……。
「結婚して――」
ジャンスタドン タンタンドン……。
「俺と一緒に……」
ダンスカドンドン……。
「えっ、何どす?」
ドドンダンダンダダン……。
そのドラマーの演奏に、フロアーで踊っている客たちがいっせいに拍手した。ドラマーも乗りに乗って、普段より気が入っちゃって、音までいつもより大きい。
「何て言いはったんです」
「いいんだ」
俺が手を一回ギュッと握ったら、二回握り返してきた。また握ると、また握り返す。嬉しくなっちゃって、
(今日は、これ以上の幸せを望んじゃいけない)
うきうき、席に戻った。〉(同)
天国の二人は今頃、満面の笑みで手を握り合い、再会を喜んでいるに違いない。
デイリー新潮編集部
