トレンドは電動化とソフトウェア 自動車の「プラットフォーム」って一体何?(後編) 押さえておきたい最新動向
EV独自のプラットフォームも
早期に明らかになったこと(実のところ最初から明らかだったが)は、EVには独自のアーキテクチャーとプラットフォームが必要だということだ。内燃機関や燃料タンク、排気システムがないため、目に見えない部分の構造は大きく異なる可能性があり、フロントとリアに電気モーターを装着するだけで容易に四輪駆動を実現できる。バッテリーは床下に設置しやすいし、さらに言えば床の一部として組み込むことも可能だ。
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インバーターなどの主要コンポーネントを電気モーターに統合した電動パワートレインが、EV専用かつモジュラー式のプラットフォームにどれほど適しているかは一目瞭然である。実際、この手法をとるモデルが多い。

フォルクスワーゲンのMEBプラットフォーム
MQBに続いて登場したフォルクスワーゲンの『モジュラー・エレクトリック・ドライブ・ツールキット(MEB)』は、リアモーター、後輪駆動を基本とし、フロントモーターを追加して四輪駆動とすることもできる。
中央にはフラットな空間があり、バッテリーが床を形成し、室内空間には段差がない。その後、アウディやスコダといったフォルクスワーゲン・グループのブランドに加え、フォードとも共有されるようになった。
ハイブリッド対応型も
ステランティスは、STLAブランドのプラットフォーム群(ラージ、ミディアム、スモール、フレーム)において、より慎重なアプローチをとっている。これらは「設計段階からBEVを想定した」と謳われているが、同社はこれに「マルチエナジー」という言葉を付加している。
これはハイブリッド駆動にも対応することを意味しており、ヒョンデ・グループの『E-GMP』プラットフォームや、EX60に採用されたボルボの新型『SPA3』プラットフォームのような、他社がとっている明確なアプローチとは少し異なる。
EVや電気システムにおける使い方
ここまで見てきたのは、プラットフォームの機械的な側面。つまり、あらかじめ設計・製造されたツールキットからボディ部品とパワートレイン部品を組み合わせて構成される一連のビルディングブロックにより、いかにしてモジュール化が進んだかという経緯だ。しかし、電気および電子分野においても「アーキテクチャー」という言葉は頻繁に耳にする。
EVの電気アーキテクチャーはよく400V、800V、あるいはその両方として説明される。この場合、「アーキテクチャー」はコンポーネントとその機能に関連するものの、電圧が高いほどケーブルを細くでき、軽量化と充電の高速化が可能になる。

ポルシェ・タイカンは800Vのアーキテクチャーを採用している。
これには「プラットフォーム」の言葉が使われることもある。車載インフォテインメント・システムのアーキテクチャーについても同様で、この用語はハードウェアとソフトウェアの両方を指す。インフォテインメント・システムは、「ラジオ」や「CDプレーヤー」といった個別のコンポーネントから、エンターテインメント、ナビゲーション、車両制御などを統合した集中型の高度なネットワークへと進化している。
ソフトウェアが車両を定義するSDV
最新のトレンドは、おそらく「ソフトウェア定義車両(SDV)」だろう。例えば、従来のハードウェア部品ではなく、電子制御によってシャシーの特性や走行挙動をコントロールするものだ。
部品大手のZFは、同社の『CubiX』ソフトウェアプラットフォームが「シャシー開発におけるパラダイムシフト」をもたらすと述べている。これまでエンジニアは部品によってシャシー特性を定義してきたが、今ではその逆になっているからだ。電子機能が部品を制御することで、シャシーの挙動を制御するのである。このソフトウェアプラットフォームは特定のハードウェアに縛られることもなく、ZF製だけでなくサードパーティ製のコンポーネントとも併用可能だ。

ボルボが「ソフトウェア定義車両」とするEX60
自動車の機能がドライブバイワイヤ方式に移行するにつれ、こうした集中型電子制御プラットフォームは今後、大きな役割を果たすことになるだろう。自動車の製造と技術を、数十年前の姿とは比べ物にならないほどに変えてしまうかもしれない。
以下、知っておきたいプラットフォームを3つ紹介しよう。
1. VW モジュラー・トランスバース・マトリックス(MQB)
フォルクスワーゲン・グループは、『MQB』プラットフォームとその採用第1弾となる車両の開発に推定500億ポンド(約10兆円)を投じた。その先駆けとなったのが、2012年に登場した7代目フォルクスワーゲン・ゴルフだ。
この投資は十分に報われたと言える。極めてモジュール性の高いMQBの展開により、生産工程をシンプルにすることができ、グループ各ブランドにおいて、サイズが大きく異なる70車種以上で採用されている。現在までに、このプラットフォームを用いて3200万台以上の車両が製造されている。

フォルクスワーゲン・ゴルフ(7代目)
主要モデル:フォルクスワーゲン・ゴルフ、セアト・イビサ、アウディTT、フォルクスワーゲン・ティグアン、スコダ・スパーブ、スコダ・コディアック、クプラ・フォーメンター
2. ルノー・日産 コモン・モジュール・ファミリー(CMF)
『CMF』は、ルノー・日産アライアンスが全盛期にあった2013年に導入された。実際にはプラットフォームのファミリーであり、CMF-A(ルノー・クウィッドなどのAセグメント車に使用)からCMF-C/D(ルノー・ラファール、日産キャシュカイなど多数に使用)まで多岐にわたる。
また、2つの電動版も存在する。CMF-B EV(ルノー5 Eテックや日産マイクラなどに採用)とCMF-EV(ルノー・メガーヌEテックや日産アリアなどに採用)だ。ルノーはCMF-B EVの開発を主導し、日産はCMF-EVに注力した。

ルノー5 Eテック
これらのプラットフォームの名称についても混乱が多い。ルノーはそれぞれ『Amprスモール』と『Amprミディアム』と改名したが、現在はさらに『RGEVスモール』と『RGEVミディアム』に変更している。一方、日産は依然として元の名称(CMF)を使用している。
主要モデル:ルノー・クリオ、ルノー5 Eテック、日産ジューク、日産キャシュカイ、三菱アウトランダー、ルノー・セニックEテック、アルピーヌA390
3. STLAミディアム(STLA Medium)
ステランティスは多数のブランド向けに、『STLAスモール』、『STLAミディアム』、『STLAラージ』、そしてピックアップトラックや商用車向けの『STLAフレーム』という4つの主要プラットフォームを展開している。欧州ラインナップの中核をなすのは、EV優先のSTLAミディアムだ。
これはPSAグループが開発し、2013年に導入された『エフィシエント・モジュラー・プラットフォーム2(EMP2)』を起源としている。STLAミディアムはCセグメントおよびDセグメント向けに設計されており、20車種以上、年間最大200万台が製造されている。電動モデルでは、2種類のバッテリーサイズと、前輪駆動および四輪駆動のパワートレインに対応している。

ジープ・コンパス
主要モデル:プジョー3008、オペル/ヴォグゾール・グランドランド、ジープ・コンパス、DS No7
