「稼いでも稼いでも…」年収1,100万円・59歳男性、子供2人の私立大進学で「学資ローン200万円」利用。教育費を払い終えても喜べない〈切実な理由〉
都内の大企業に勤めるTさん(59歳・男性)。順調に出世していましたが、月12万円の住宅ローンを支払いながら子供2人を私立大学へ通わせる過酷な舞台裏がありました。学資ローンを組まざるを得ないほどに追い詰められた家計の先に、ようやく見えた「教育費からの解放」。しかし、Tさんはそこで喜びではなく、「虚しさ」を覚えることになります。一体、何が待ち受けていたのでしょうか。
世帯年収1,200万円でも、子供2人の私立大学進学で家計は火の車
「お前たちが思っているほど、ウチにお金はないぞ。これでもかなり無理をしているんだ……」
都内の大企業に勤めるTさん(59歳・男性)は、長男がオープンキャンパス帰りにはしゃいでいたときのことを思い出し、苦笑いを浮かべます。
Tさんの現在の年収は約1,100万円。妻は週3回のパート勤務をしており、世帯年収にすると約1,200万円になりますが、基本的にはTさんが一家の大黒柱です。順調に出世し、高収入を得ていたため、周囲からは裕福な家庭だと思われていました。
しかし、現実はまったく異なっていたといいます。毎月12万円の住宅ローンを支払いながら、3歳差の子供2人を私立大学に通わせるのは、想像以上の負担でした。2人とも高校までは公立に通わせましたが、長女は理系、長男は文系の私立大学へ進学したため、幼稚園から大学卒業までにかかった教育費は、2人合わせて総額2,500万円を超えていました。
「学費以外にも、通学の定期代やパソコン代、さらには部活動の合宿費なども重なり、家計は常に火の車でした」
長女の大学4年次と長男の大学入学が完全に重なった年、家計がショートしかけたのです。いよいよ貯金だけでは子供2人の教育費は賄いきれなくなり、最終的に学資ローンの利用を決意するTさん。
「数百万円の現金が一気に飛んでいきました。世帯年収が1,200万円あっても、実際の手取り額は800万円弱しかないです。どうしても足りず、結局そのタイミングで民間の学資ローンで200万円を借り入れました」
教育費からの解放と、終わりのない「貯金生活」
会社で昇格し、給料が上がるたびに、それを追いかけるように子供たちの教育費も膨らんでいきました。
「今振り返ってみると、年収が上がっても教育費が増えていくばかりで、生活水準はまったく上がりませんでした。でも、そのおかげで無駄遣いをする習慣がつかず、質素な生活を維持できたのはよかった点かもしれませんね。あくまで強がりですけど」とTさんは語ります。
Tさんが55歳のとき、下の子が無事に大学を卒業し、社会人として独り立ちしました。そこでようやく、長年苦しめられてきた教育費の支払いから解放されたのです。
「子供たちが独立してから定年が見えてくるまでの数年間、生活水準を上げずに急いで老後資金の貯金をしました。この数年間がなければ、私たちの老後は完全に破綻していたでしょうね」
無事に子育てを終えた今、Tさんは自分の人生を振り返り、ふと虚しさを覚える瞬間があるといいます。
「高い税金を払い、自分へのご褒美もなく、子供たちを育て上げました。ようやく学費の支払いから解放されたと思ったら、今度は自分たちの老後資金のために必死で貯金です。結局、稼いでも稼いでも『貯めるばっかり』で、自分たちのために使えるお金なんてほとんどないんですよね」
高所得層も感じる教育費の負担感
教育費の重圧は、Tさんのような高所得層の家庭にも影響を与えています。
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合でも、学習費総額は614万466円かかることが示されています。これに私立大学の学費が加われば、子供一人当たりにかかる費用は1,000万円を超える計算です。
高所得層は、児童手当や高校授業料の実質無償化などの公的な教育支援において、所得制限によって対象外となるケースがあります。そのため、教育にかかる費用の全額を自己負担しなければならず、家計への負担感は年収の高さに比例して軽くなるわけではありません。
また、労働者福祉中央協議会が実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査」では、大学等の高等教育に対する公費負担について、世帯年収400万円未満の層だけでなく、年収800万円以上の高所得層においても約5割が「可能な限り公費で負担すべき」と回答しています。
この結果は、年収にかかわらず、多くの親が現在の教育費の高さに限界を感じていることを示しています。少子化に歯止めをかけるためには、特定の所得層だけでなく、子育てを行うすべての世帯の負担を軽減する包括的な支援策が求められているといえます。
[参考資料]
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
労働者福祉中央協議会「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査(2024年6月調査)」
