X が狙うFIFA ワールドカップ 戦略 有名ジャーナリスト・ロマーノ氏も独占コンテンツを制作

記事のポイント
XがW杯2026に向け抽選会を起点に広告収益の回復を狙っている。
ロマーノ氏との独占コンテンツやAI強化動画で会話主導権を高めている。
公式スポンサー以外の企業も参入可能な広告枠を用意し需要を獲得している。
スーパーボウルからオリンピックにいたるまで、世界最大級のスポーツイベントは、プラットフォームにとってほぼ確実な「特需」といえる存在になっている。各社が同じ瞬間を狙い、巨大な視聴者を前に商業的な成果を最大化しようとするからである。
「最初の大きな瞬間で、ワールドカップの会話と市場に旗を立てることが狙いだ」と、Xの米国地域統括責任者モニーク・ピンタレリ氏はDigidayに語った。
この取り組みによって、広告主に「ワールドカップ期間中の大量のマーケティング予算を投じる価値がある場所」と認識してもらうことを期待している。
「ライブカルチャーとスポーツの交差点を提供できるという意味で、我々は独自のリーグにいる」と、ピンタレリ氏は述べた。
抽選会での施策。ロマーノ氏との独占コンテンツとライブ配信
抽選会に向けてXは、プラットフォーム上で2650万フォロワーを持つフットボールジャーナリスト兼クリエイターのファブリツィオ・ロマーノ氏と協業し、縦型、横型の短尺コンテンツをイベント前後に独占的に制作する。
特に、ロマーノ氏はテレビ放映後にライブ配信を行い、独自のインサイダー視点で分析を共有する。
「ファブリツィオ氏は、各グループの構成や競争の背景、さらに彼の立場とアクセスがあるからこそ知り得る舞台裏のストーリーまで体系的に解説してくれる。ファンにとって非常に楽しめるものになる」と、Xのオリジナルコンテンツ責任者ミッチェル・スミス氏は述べた。
ファン向けデスティネーション構築と動画体験の強化
今回の抽選会では、スポーツファンから初心者まで誰でも簡単に日々のコンテンツにアクセスできるよう、「ファン向けデスティネーション体験」と呼ぶショーページのような仕組みを設ける予定である。
正式発表はまだないが、本大会に向けては、さらに大規模な企画が予定されているという。
「我々はもっともソーシャルなプラットフォームである一方、動画視聴体験も進化している」とスミス氏。
「加えて、関連会社が持つ優れたAI技術が大きな競争優位を生んでいる。他社ではコメント欄がそこまで意味を持たないが、Xではコンテンツを『見て・共有して・語り合う』ことがずっと容易だからだ」。
これらの投稿には当然ブランド広告が付く。
「ライブ配信への統合的な協賛から、予算が大きくない企業向けのプリロール広告まで、いくつかの主要ブランドが我々と共に取り組む」とピンタレリ氏は述べた。ただしブランド名は明かさなかった。
「X Originals」によるプレミアム番組群との連動
ロマーノ氏のコンテンツは、Xの大型ブランド「Originals」枠で展開される。
これは、ヴィーナス・ウィリアムズ氏やセリーナ・ウィリアムズ氏の動画ポッドキャスト、アリ・エマニュエル氏のポッドキャスト「ラッシュモア(Rushmore)」、アンソニー・ポンプリアーノ氏による日次のビジネス&ファイナンス番組など、2024年以降に公開されたプレミアム番組群をまとめたものだ。
2025年5月に、Xはこれらを「X Originals」として統合し、スポーツ、ポップカルチャー、ビジネス・ファイナンスといった主要コミュニティにおいて、視聴者がスター本人と直接対話できる空間を提供している。
ワールドカップ本大会に向けた収益化戦略と広告主の取り込み
今回の施策は、2026年の夏のワールドカップ本大会の収益化に向けた予行演習である。
「ユーザー体験、ファブリツィオ氏のようなクリエイターの関わり方、そして広告主がどう参加できるか。その3つの観点すべてを踏まえ、この形ではじめることに明確な意図がある」とピンタレリ氏は述べた。
これほどの入念な準備は不可欠である。Xが大手広告主の信頼を取り戻し、実際の広告投資を引き出すことに苦戦しているのは周知のとおりだ。
ワールドカップは、その抵抗を突破し、短期間で意味のある収益を得られる数少ない機会となる。特に、FIFA公式スポンサーの枠に入れない広告主にとっては魅力的である。
「我々はすべてのブランドと話せる。公式パートナーに限られない」とピンタレリ氏。
「FIFAの公式パートナーとして投資を増幅させたいブランドもいれば、ゲリラ的に会話に入りたいブランドもいる。そのどちらも我々との議論に強い関心を持っている」。
Xが強みとする「リアルタイムの会話」と過去大会の実績
ワールドカップ、ひいてはスポーツ領域全般でXが強みを持つのは、結局「リアルタイムの会話」である。
問題は多くとも、依然としてXはスポーツ速報、移籍情報、試合中の反応がもっとも速く集まる場であり、ロマーノ氏のようなクリエイターはまずXで情報を発信する。
実際、2022年の前回大会では、X(当時Twitter)は「#WC2022」関連で世界1470億インプレッションが発生し、大会期間中は1日あたり平均200万件の「いいね」が発生したと発表している。また、イーロン・マスク氏は決勝戦でフランスが得点した瞬間、1秒あたり24400件の投稿があったと述べた。
クリエイター支援の拡大と2026年に向けた協業強化
「Xは、クリエイター、スポーツリーグ、選手、パブリッシャー、放送局すべての『ホーム』になれる非常にユニークな立場にある」とピンタレリ氏は言う。
「これらすべてが最大限に力を発揮できる場所にしたい。我々の人生で最大のスポーツイベントになるワールドカップに向けて」。
さらにスミス氏によれば、Xは2026年の夏に向け、スポーツ領域以外も含めクリエイターの層を拡大し、協業の方法を再設計する予定だという。
「サッカーだけでなくほかのスポーツ、また会話が活発なカテゴリでも、クリエイター支援を一段と強化する」とスミス氏。
「公式な関係に限らず、クリエイターが『ここにコンテンツを置く価値がある』と自ら感じて動きはじめられるよう、より大きな枠組みを作っていく」。
[原文:‘We’re in a league of our own’: How X is planning to take over the World Cup, starting with Draw Day]
Krystal Scanlon(翻訳、編集:藏西隆介)
