見方によっては、ディエップ発の元バックヤードビルダーのような、侮りがたい小兵として始まったブランドが、今や大きく実を結びつつある。日本市場での人気には先ほど触れたが、車両価格にして4200万~5200万円以上という「A110 Rウルティム」には、何と日本で5台の受注があった。年初にニュルブルクリンクのノルトシュライフェで、7分17秒51という並のスーパーカー以上のラップタイムを打ち立てたのは記憶に新しいが、それにしても2017年から市販車ビジネスを再開した新生アルピーヌが、今やたった5台で2億円を軽く超える売上を達成するブランドになったのだ。ボディやシャシー周りは専用のアルミパーツでも、パワートレインや補機類の多くは日産をはじめ既存のコンポーネントを多用しているにもかかわらず。

現物たるプロダクトの出来は無論重要だが、そこでニュルのラップタイムのような結果を出しつつ物理的だけでない部分、スポーツへの継続的な取り組みを通じた歴史遺産やストーリーテリングといった、抽象的な部分でも価値を積み上げる術において、さすがフランスには一日の長がある。昨年の富士6時間では3位表彰台を得たアルピーヌが、今年はどうパフォームするか。それこそ耐久レースの魅力でもある。

文・写真:南陽一浩 Words and Photography: Kazuhiro NANYO