女川原発再稼働 電力の着実な安定供給へ一歩
電力の安定供給と脱炭素を両立させる電源として、原子力発電所は不可欠である。
各地で原発の再稼働を着実に進め、電力供給力の上積みに努めることが必要だ。
東北電力が女川原発2号機(宮城県)を再稼働した。2011年の東日本大震災後、東日本にある原発としては初めてとなる。事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初の再稼働だ。
エネルギーの安定確保のため、原発を最大限に活用していく上で大きな一歩と言えよう。
これまでは、加圧水型軽水炉(PWR)で再稼働が先行し、西日本の計12基が再稼働にこぎ着けている。沸騰水型より格納容器が大きく事故が起きにくいとされ、原子力規制委員会の安全審査が比較的早く進んだ。
西日本で再稼働が順調に進んだのに対し、東日本は再稼働が遅れて火力発電に頼る状況が続き、電気料金が高止まりしている。東日本でも再稼働を急ぎ、地域格差が縮小することを期待したい。
女川原発は、東日本大震災の震源に最も近く、福島第一原発と同様の揺れや津波に見舞われた。しかし、高い場所にあったため津波の直撃を免れ、原子炉をすべて安全に停止することができた。
また、東北電力は震災後、設備や配管の耐震補強を行い、事故後にできた新規制基準をクリアした。20メートル以上の津波を想定し、海抜29メートルの防潮堤も建設した。
震災直後、女川原発は津波で家を失った近隣の住民300人以上を構内の体育館で受け入れた。こうした経緯もあって、地元の理解が比較的、得られやすかった側面もあるのではないか。
沸騰水型では、女川に続き中国電力島根原発2号機も12月に再稼働する。東北電力と中国電力は安全を最優先し、沸騰水型原発への信頼を取り戻してもらいたい。
沸騰水型の審査では当初、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)が先行していたが、その後、テロ対策の不備などが相次ぎ、地元では東電への不信感が高まった。新潟県知事からも再稼働の同意が得られておらず、見通しが立たない。
国内では、大量の電気を消費する最新の半導体工場やデータセンターの建設が続き、将来の電力不足が懸念される。中東情勢のさらなる悪化で、エネルギー供給が滞る事態にも備えねばならない。
国や新潟県は、大局的な視点に立ち、協力して柏崎刈羽原発の早期再稼働を目指すべきだ。