姉に婚約者を寝取られ、すべてを失った令嬢。辺境伯子息に嫁ぐも、不器用なふたりの新生活は前途多難で…
どんなに愛する相手でも、片方が尽くしすぎるとそれが当たり前になり、浮気されてしまうという。
『姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます〜苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした〜』(やきいもほくほく:原作、みさき天夢:作画/幻冬舎コミックス)は、主人公が婚約者の浮気を目撃するシーンから物語の幕があがる。
「彼が喜ぶことならなんでもしてあげたかった」と思うほど、婚約者に尽くしてきた子爵令嬢のウェンディ。しかし、それほどまでに愛していた婚約者のフレデリックに、実姉と浮気をされてしまう。
当然ウェンディとフレデリックは婚約破棄に。しかし婚約相手が姉に代わるだけで、家同士の婚姻関係は変わらない。これまでフレデリックを愛してきたウェンディの時間や努力だけが、水の泡となってしまった…。そんな理不尽な状況のなか、家の利益のために自らが退くことを選ぶウェンディ。彼女はまさに「貴族の矜持」を持った令嬢なのだろう。
浮気したふたりから離れるため、ウェンディはマルカン辺境伯子息・ゼルナに嫁ぐ。だが、マルカン辺境伯の屋敷は使用人が数人いるだけで、基本的に自分の身の回りのことはひとりでやらなければいけない場所だった。そんな“貴族らしくない”環境で、他に居場所がないウェンディは慣れない家事や動物のお世話を一生懸命こなそうと努力する。
ただでさえ環境が変わって大変なところに、今度は夫のゼルナとろくに会話ができないという問題が発生。お互いを知らないまま結婚したふたりは、中々打ち解けることができなかったのだ。
そんな前途多難な結婚生活は、屋敷で飼われている犬のブルや使用人たちのアシストで少しずつ変化していくことに。はたして、不器用でまじめな夫婦が気持ちを素直に伝えられる日はやってくるのだろうか。
思わずむずキュンしてしまうウェンディとゼルナの物語は、まだまだ始まったばかりだ。
文=ネゴト / 押入れの人