海底に広がるサンゴ礁にカラフルな魚たち。まるで南国の海を思わせる光景が、東京湾に広がっている。千葉県・鋸南町沖では、以前では見られなかった数のサンゴが、急速に生息範囲を広げている。その理由の一つにされているのが、温暖化による海水温の上昇だ。

【映像】鋸南町沖にサンゴがびっしり

 逆に沖縄の海では海水温が上がりすぎてサンゴが白化、死滅する問題も起きている。10月に入っても30度を超える真夏日があるなど、記録的な残暑も続いている。『ABEMA Prime』では、東京湾で増え続けるサンゴの実態を専門家と検証した。

 サンゴは海の生き物として、豊かな自然を象徴するイメージも持たれるところ。東京湾にサンゴが増えたことを喜ぶ人もいるだろうが、その状況はいい方向に進んでいるものでもない。筑波大学でサンゴを研究、自ら海に潜って調査を続けるシルバン・アゴスティーニ氏は、まずサンゴの大量発生について「やはり海水温の上昇で間違いない。サンゴは何十年前からあったが広がっている。さらに今まで見られなかった種類もポツポツ見られてきた。熱帯魚とともに増えている」と、以前からサンゴ自体は生息したものの、東京湾にいなかった種が見られたことで、明らかに生態系の変化が起きているとした。

2035年には東京湾がサンゴだらけに?

 増殖した理由はいくつか考えられはするものの、その理由でシンプルなものが、冬の海水温だという。「今までは冬の水温が低すぎてサンゴが死んでしまい、越冬できなかった。今は冬の水温が下がりきれなくて越冬ができなくて、数が増えている」と、毎年寒さで死滅するはずのものが生き残れるようになったことで、毎年着実に増えてしまっているようだ。

 サンゴが増えることで、その海域の生態系はどう変わるのか。「サンゴが増えているところでは熱帯、亜熱帯の魚類が増える。温帯の魚は北上すれば、もう少し冷たい海を見つけることができるかもしれないが、日本の太平洋沿岸はちょっと複雑。房総半島ぐらいまでには熱帯、亜熱帯がつながっていて、それは黒潮の流れの影響。逆に北からは親潮があり、それを越えることは難しい」。つまりある程度は、もともと住んでいた魚類たちが、適した水温を求めて北上できるものの、親潮に跳ね返されるところから先は進めず、行き場を失うということだ。

 また、移動性のある魚類であれば泳ぐことで北上できるケースもあるが、サンゴは動けない。卵は流れに乗ることしかできず結果、海流を越えることはかなり難しい。鋸南町には、もともとサンゴは住んでいた。ただし「数が増えているのは事実。いる・いないより、増加しているか、していないか」と問題視。国立環境研究所のシミュレーションでは、今から11年後、2035年には東京湾がサンゴだらけになるというが「サンゴが増えると同時に海藻が減る。また、水温が高くなると生理的に増えなくなる。また漁業でもアワビとかナマコという大型海藻に依存するものがいなくなる」と説明した。

 海藻が減る現象については、アナウンサーの吉川美代子氏は「海藻が豊富な海は小さい甲殻類がいて、それを食べる小さな魚、それを食べる大型な魚、そして海洋哺乳類もいる。海藻がなくなると、磯焼けと言われて私は『海の砂漠化』と呼んでいる」と述べていた。
(『ABEMA Prime』より)