リアム・ペインさん=2018年6月9日、米イリノイ州シカゴ/Timothy Hiatt/Getty Images

(CNN)人気ボーイズバンド「ワン・ダイレクション」の元メンバー、リアム・ペインさんが死亡した背景が少しずつ明らかになってきた。南米アルゼンチンの検察は17日、死亡の経緯について捜査していることを明らかにした。

ペインさんは16日、ブエノスアイレスのホテルの窓から転落して死亡した。31歳だった。転落の直前、ホテルは警察に通報して緊急出動を要請していた。

警察によると、現地時間の午後5時ごろ、ホテルから男性が暴れているとの通報があり、警官が駆けつけた。フロントデスクマネジャーは「ドラッグとアルコールで手の付けられない客がいる。物を壊して部屋中をめちゃくちゃにしている」と電話で伝えていた。

この客は2〜3日前から滞在しており、ホテル従業員は部屋に入ることができなかったという。

アルゼンチン検察は、転落時のペインさんは一人きりだったと思われ、薬物乱用が原因で何らかのトラブルを起こしていた形跡があると発表した。

AP通信によると、ブエノスアイレス警察は16日、ペインさんは自分の部屋のバルコニーから飛び降りたと説明していた。

検察によれば、遺体の発見場所や転落によるけがの状態から判断すると、ペインさんは反射的に身を守る姿勢を取っておらず、意識を失いかけた、あるいは完全に失った状態で転落したと推定される。ペインさんが滞在していたホテルの客室からは薬物が押収された。

警察が公開したペインさんの客室の写真には、叩き壊されたテレビが写っている。

検視の結果、死因は転落による外傷と出血と判断された。

ペインさんはここ数年、心の健康問題や薬物乱用で苦しんでいることを公表していた。

2019年に出演したテレビ番組では、繰り返し孤独感に襲われると打ち明け、「強い孤独を感じる時がある。人がいつも自分の中に踏み込んでくる。あまりにも頻繁に。これはいつ終わるんだろうと思う」と語り、「それで何度か死にそうになったことがある」と告白した。

21年のポッドキャストでは、アルコール依存症に苦しんでいることを打ち明けた。

「バンドをやっていた頃、バンドが大きくなったので、僕たちを守る最善の方法は部屋に閉じ込めることだったらしい。そして部屋に何があるかといえば、ミニバーだ。ある時僕は、自分だけのパーティーをやろうと思いついた。そして僕の人生でそれが長い間続くことになった」

「無茶だけど、それだけが、その日のイライラを発散させる唯一の方法だった」

ワン・ダイレクションのバンド仲間だったハリー・スタイルズ、ナイル・ホーラン、ゼイン・マリク、ルイ・トムリンソンは17日、連名で追悼の談話を発表し、「彼と分かち合った思い出は、一生の宝物になる」とペインさんをしのんだ。

18年にペインさんと「フォー・ユー」をデュエットした歌手リタ・オラさんは、ペインさんをしのんで16日の日本公演でこの歌を熱唱した。X(旧ツイッター)に投稿された動画によると、オラさんは歌いながら涙ぐんでいる様子で、「今は歌えない」と言ってステージに座り込み、顔を両手で覆う場面もあった。背景のスクリーンにはスタジオに並ぶオラさんとペインさんの写真が画面いっぱいに映し出されていた。