ヤヒヤ・シンワル氏=AP

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 【エルサレム=田尾茂樹】イスラエル軍は17日、パレスチナ自治区ガザでイスラム主義組織ハマスの最高幹部ヤヒヤ・シンワル氏(61)を殺害したと発表した。

 シンワル氏は昨年10月のイスラエル奇襲を首謀したとされ、イスラエルにとって殺害は最大の戦果となるが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は人質全員の奪還を目指して戦闘を続ける構えを示した。

 ネタニヤフ氏は17日のテレビ演説で、「(奇襲の)首謀者はもういないが、これはガザでの戦争の終わりではない」と述べた。イスラエルはハマスの壊滅と人質全員の解放を目標に掲げている。ハマスが求める恒久停戦を拒否してきたことから、停滞する停戦交渉の行方は今後も見通せない。

 軍の発表などによると、ガザ南部にハマス幹部が潜伏しているとの情報を基に軍が数週間にわたる作戦を展開し、16日に最南部ラファで殺害した3人のうちの1人がシンワル氏だった。ハマスは17日夜現在、殺害発表について反応していない。

 AP通信によると、軍の部隊に偶然発見されたシンワル氏は、逃げ込んだ建物内で戦車の砲撃を受けた。軍が公開した無人機の映像では、椅子に座った状態で板を投げつける様子が映っていた。周囲に人質の姿はなく、銃と現金を所持していたという。

 7月末に訪問先のイランの首都テヘランで殺害されたイスマイル・ハニヤ氏の後任として、シンワル氏は8月、ハマス最高幹部の政治部門トップに就任した。ガザの地下トンネルなどに潜伏し、転々と居場所を変えながら戦闘や停戦交渉を指揮していたとみられる。ハニヤ氏より強硬姿勢でカリスマ性に富むとされるシンワル氏の死は、ハマスにとって大きな打撃となる。