世界的な通貨政策転換の流れに韓国も加わった。米国と欧州連合(EU)などが政策金利を引き下げる通貨政策転換を断行したのに続き、きのう韓国銀行金融通貨委員会も基準金利を3.5%から3.25%に0.25%引き下げた。韓国銀行は昨年1月に0.25%引き上げたのを最後に今年8月まで13回連続で基準金利を3.5%で据え置いた。今回の金利引き下げで2021年8月に0.25%の利上げとともに始まった通貨緊縮基調が3年2カ月ぶりに終えられた。

利下げの雰囲気はすでに作られた。9月の消費者物価が3年6カ月ぶりに1%台を記録するなど物価目標の2%はすでに達成した。貸付引き締めのような政府のマクロ健全性政策強化により首都圏のマンション価格急騰と家計負債増加傾向もある程度抑えられた。もう内需不振に視線を向ける環境になったと韓国銀行が判断したのだ。先月米国が政策金利を0.5%引き下げたことで韓国も利下げの余地ができた。内需を回復させてほしいという大統領室と与党の相次ぐ要請に知らないふりをしているのも大変だっただろう。

韓国銀行の李昌𨉷(イ・チャンヨン)総裁はきのうの記者懇談会で通貨政策失機論に強く反論した。金融通貨委員会に対する批判は大きく2種類だ。ひとつは金利引き上げをあまりに早く中断したために不動産市場を不安にして家計負債を増やしたという主張だ。米国は昨年7月まで金利を上げ続けたが、韓国は昨年1月に利上げを早くから中断した。これについて李総裁は「全く同意しない」とした。金利をあまり上げずに最高の政策目標である物価を抑えた点で政策成功と判断した。金利をさらに上げれば内需はさらに振るわなくなり、自営業者はさらに厳しくなっただろうとした。また別の政策失機論は利下げを8月に先制的にすべきだったという主張だ。李総裁は「8月に利下げをしなくても家計向け貸付が10兆ウォン近く増えた。1年ほど過ぎて評価してほしい」とした。住宅市場と家計負債のような金融安定の側面を考慮しないわけにはいかなかったという説明だ。李総裁は6月の韓国銀行創立74周年記念演説でローマのアウグストゥス皇帝が掲げた「ゆっくり急げ」の原則が通貨政策にも重要だと強調した。今回の決定が本当に遅れておらず早くもない良い選択なのかは今後の不動産と家計負債推移にかかっている。

韓国銀行が利下げを始めたが米国のような0.5%の利下げや過去の超低金利時代を期待してはいけない。李総裁も認めたように韓国銀行のスタンスは「タカ派的利下げ」だ。金融通貨委員6人のうち5人が3カ月後も基準金利を現水準の3.25%で維持すべきだと考えた。今年さらに多くの利下げはないとみることができる。景気を浮揚する「爽快な一発」を望む政界も、利子負担を大きく減らす以前の低金利を希望する借入者も過度な期待はたたむのが良い。通貨政策は転換したが通貨緊縮は終わったのではない。若干緩和されただけだ。

昨年に続き今年も30兆ウォンに達する税収不足が予告された。昨年のように急ではない予算を使わない「不用」が増えるだろう。税収が足りず財政政策は運用の妙を生かすのが難しく、通貨政策は不動産と家計負債が安定してこそさらに緩和できる。こんな時であるほどマクロ・金融政策の最高当局者である経済副首相、韓国銀行総裁、金融委員長、金融監督院長の「F4」の共助が重要だ。今回の利下げで不動産市場と家計負債が再び不安にならないのか確実に点検することを望む。必要ならば追加的な貸付強化措置が適時に出てこなければならない。