〈石破内閣本格始動も…〉ゴリ推し“お友達人事”で早くも四面楚歌! 自民議員は「”冷や飯”時代の反動が露骨すぎ」「自分を裏切っていった人間は許さない」
10月1日、ついに首班指名を受け、正式に首相に就任した石破茂氏。党役員人事・組閣を行ない、10月27日投開票を見込む衆院選に向けて走り出したが、長年の「冷や飯」生活の反動を反映した石破氏の人事には党内から不満が噴出。石破氏に長年ついてきた仲間はごくわずかで、早くも四面楚歌の状況を呈してきた。
【写真あり】石破氏が「入閣を試みて麻生氏にケンカを売った」と言われる議員
麻生氏の実権を奪い、早くも「党内唯一」の派閥を敵に
「石破茂君を、本院において内閣総理大臣に指名することに決まりました」
10月1日、衆院本会議での首班指名投票の結果、額賀福志郎衆院議長が石破氏を首相に指名すると、石破氏は深々と頭を下げた。
しかし、そのときの光景はこれまでの首班指名とは少々異なるものだった。
「普通、首班指名で自民党総裁自身が投票する際には、与党が拍手するのが慣習ですが、今回はそれがありませんでした。
そして新首相が指名された瞬間も、拍手はあっても歓声はあがらず。どことなく冷ややかな雰囲気でした」(全国紙政治部記者)
その背景には、石破氏が早くも党内から不満を集めていることがありそうだ。
石破氏による党役員・組閣の人事には党内から不満の声が続出。
「ここまで論功行賞をやるとは思わなかった。石破氏は総裁選の1回目の投票で、議員票は高市早苗氏や小泉進次郎氏に大きく差をつけられての3位と、党内基盤は弱い。
長く『冷や飯』を食わされてきた反動で、これまでの恨みを晴らす人事をしているのでは、とまで思ってしまう」(自民党議員)
特に動揺しているのが、岸田政権の3年間では主流派に位置づけられていた麻生派だ。
麻生政権時代に石破氏が「麻生おろし」をした遺恨があり、石破氏と麻生太郎氏は犬猿の仲。党内融和を演出するため、麻生氏を最高顧問に起用したものの、これは名誉職で「上がり」ポジションだ。
岸田政権時代に岸田文雄首相、茂木敏充幹事長、麻生副総裁(いずれも当時)で三頭政治をしていたことを考えれば、実権はほぼなくなったも同然。
麻生氏は9月30日、石破氏を中心とした党幹部での写真撮影の際に写真に収まることを「拒否」して立ち去ってしまい、早くも溝があることを印象づけた。
石破氏は他の党執行部人事でも麻生派に一定程度配慮する姿勢を見せ、総務会長に麻生派の鈴木俊一氏をあてたが、こちらも幹事長などのポストに比べればそれほど権限はない。
閣僚では麻生派の大臣待機組、武藤容治氏や浅尾慶一郎氏が入閣したのみで、党内で唯一解散を表明していない50人以上の規模の派閥を早くも「敵」に回した形だ。
麻生氏、茂木氏の「裏切り者」が重要ポジションに
さらに注目すべきは、麻生派を退会した阿部俊子氏が文科相として入閣したほか、最終的に取りやめになったものの、阿部氏と同時期に麻生派を退会した御法川信英氏も入閣が検討されていたことだ。
これらの人事は、石破氏から麻生氏へのあてつけとみられている。
「御法川氏は麻生派を退会した直後、麻生氏によって国会対策委員長代理のポジションから外されそうになりました。
結局、野党との難しい調整を円滑に進めるために残留となりましたが、麻生氏の怒りは強く、麻生氏の息がかかった政権では入閣は難しくなっていました。
今回、御法川氏は最終的に、旧統一教会との関係を追及されることを懸念して入閣を辞退したそうですが、麻生氏との関係が悪い石破氏としては、御法川氏を入閣させようとすることで麻生氏に喧嘩を売った形です」(御法川氏周辺)
一方、岸田政権では三頭政治の一角をなしていた茂木氏率いる旧茂木派も非主流派に回った。茂木派からは加藤勝信氏が財務相として入閣したが、加藤氏は総裁選にも出馬して茂木氏と戦った立場。
それ以外には旧茂木派からの入閣はなかったうえ、麻生派と同じく、茂木派を退会した人物が入閣や官邸・党執行部入りした。
「加藤氏は総裁選で推薦人20人を割り込む16人しか議員票を獲得できず、最下位に終わりました。それにもかかわらず、加藤氏が超重要閣僚である財務相として入閣。
さらに、茂木派を退会した小渕優子氏が組織運動本部長に、青木一彦氏が官房副長官になりました。茂木氏としては面白くないでしょう」(自民関係者)
周囲に集まる議員や記者はわずか、毎週水曜日昼に、タバコ2本分の「ぼやき」
こうした、これまで主流派だった党ベテランへの意趣返しのような人事の背景には、石破氏が長らく党内で「冷や飯」組に置かれていたことがある。
自民党の各派閥はこれまで毎週木曜日の昼に会合を開き、それぞれの派閥のメンバー数十人に加え、各社の番記者十数人も集まっていた。
一方、石破氏のグループは派閥ではないため、木曜ではなく毎週水曜日の昼に会合を開いてきたが、その光景は寂しいものだった。
「集まる番記者は、石破氏の地元のメディアの記者や、『たまたま予定が空いていたから』という記者数人のみ。国会議員も、石破氏の地元である鳥取県選出の議員を中心に数人のみで、まるで『自民党鳥取県連』の会合のようでした。
そして会合を終えた後、石破氏が喫煙室で紙タバコ2本を吸う間のぼやきを記者3、4人で聞く、というのがおなじみの光景でした」(全国紙政治部記者)
他派閥では、派閥の会合で議員と同じ高級弁当が番記者に振舞われることも多かったが、石破グループでは、番記者を不憫に思った所属議員がコンビニのおにぎりを配っていたという。
麻生氏・茂木氏の「裏切り者」は重用も、自身の「裏切り者」は無役に
こうした「冷や飯」生活に加え、石破氏自身が「飲み会をするよりも本を読みたい」と語るほど人付き合いにドライなこともあり、石破グループのメンバーは年々減っていった。
その中には岸田派に移った田村憲久氏や、今回の総裁選で小泉進次郎氏についた齋藤健氏、加藤勝信氏の推薦人となった山下貴司氏など、政策通も多くいた。
しかし、彼らは組閣・党役員人事で重要ポジションに登用されることはなかった。一方で、何度も自身の推薦人となってきた村上誠一郎氏、赤澤亮正氏らは入閣を果たした。
「麻生氏や茂木氏の『裏切り者』や自身の数少ない仲間は積極的に登用する一方、『自分を裏切っていった人間は許さない』という思いがみてとれます。露骨な『お友達人事』に党内は早くも不満タラタラで、石破氏は四面楚歌です」(自民党関係者)
それでも政権を維持していくためには、国民世論を味方につけることが必須だ。しかし、石破政権は国民からも「四面楚歌」状態に置かれてしまうかもしれない。
「総裁選中に述べていた『予算委員会で、政権は何を目指すか示したうえで国民に信を問うべきだ』という発言を早くも覆し、予算委を開かず衆院を解散する方針を明らかにしました。党内だけでなく、国民からもそっぽを向かれてしまっては、痛い目を見るのでは……」(同前)
総裁選当日、「勇気と真心をもって真実を語る自民党を作っていく」と決意を述べた石破氏。再び「冷や飯」食いの憂き目をみることなく、自民党を再生させることができるか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班