【エルサレム時事】耳をつんざく無数の爆音に、黒煙が上空を覆う―。

 イスラエル軍が27日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの指導部を狙い、再びレバノンで大規模空爆を行った。現場に駆け付けた中東の衛星テレビ局アルジャジーラの記者は「首都ベイルートでは前例のない爆発」で、各地でパニックが広がっていると伝えた。

 現場は、ベイルート南郊ダヒエ地区の住宅地の一角。同地区に子供2人と住み、夫を20日の空爆で失ったばかりの主婦アミルさん(36)は、時事通信の電話取材に「建物が激しく揺れ、夫と同じように死んでしまうかと思った」と声を震わせた。

 数棟の建物が倒壊し、コンクリートや鉄筋のがれきが散乱。救助隊が電灯を頼りに、不明者の捜索を続けた。遺体や負傷者が次々と搬送され、がれきの下にも多数が取り残されたとみられる。ただ、イスラエル軍はこの地下に本部があるとするヒズボラが「人間の盾」にしているとして、住宅地での空爆を正当化した。

 現場の映像では、地面が大きくえぐられて巨大なクレーターができていた。米CNNテレビは、地下貫通型爆弾「バンカーバスター」が使用されたと報じた。イスラエル軍報道官はさらなる空爆を警告したが、アミルさんは「怖いけど頼れる人もいない。ここから逃げられない」と力なく語った。