Daiichi-TV(静岡第一テレビ)

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2023年度、全国で初めて1兆円を突破した「ふるさと納税」。全国各地の特産品などがお得に手に入ると1000万人が利用する人気の制度ですが、その寄付を少しでも増やそうと、あの手この手で奮闘する静岡県内の取り組みを取材しました。

2024年で17年目となる「ふるさと納税」。住民登録した自治体以外に寄付することで、最大でその3割に相当する額の返礼品が受け取れるほか、その寄付金も2000円を引いた全額が住民税などから控除されるお得な制度です。例えば、5万円寄付した場合、実質2000円で1万5000円相当の商品が受け取ることができるのです。

県内で一番人気の自治体は、2023年度、寄付金額が100億円を突破した「焼津市」返礼品の数がおよそ1500種類もあるのが人気のヒミツで特にマグロやカツオといった水産加工品が多く選ばれているといいます。寄付金は子育て施設の建設や学校の冷暖房設備、トイレの洋式化などに活用されていて、目に見える形での“ふるさと納税”効果が市民からも好評です。

そんな焼津市に追いつけ、追い越せとこれまでにないアイデアで新たな商品開発を進める動きが。

沼津市は、県内3位の約45億円の寄付があり、2023年からは倍増と好調に推移していますが、さらなる寄付額の増加で、地元事業者の売り上げアップにつなげたいと、あるプロジェクトが進められています。

(プロジェクト参加者)
「沼津のいろいろな良いところどりをさせていただこうと考えています」

沼津市の主催で、市内のうなぎ店や総菜店のほか、お菓子やトイレットペーパーの製造業者などが集まり、「ふるさと納税」の“新たな返礼品”を考えているのです。この日は最終日。グループごとに考えた新たな返礼品の企画案が発表されました。

(プロジェクト参加者)
「影山鉄工所の溶接体験コースを入れました。熱い火花が散るということで赤」「青で対比させてスキューバーダイビングの体験をしていくと」「8万5000円になります」

ほかにも、季節ごとに漬物づくりやお茶摘みなどができる体験型の商品や、沼津の名産が毎月届く定期便など、単なる商品の提供ではないアイデア型の企画が多く提案されました。

(沼津市ふるさと納税推進室 手島 有貴さん)
「昨年度ふるさと納税の市場が1兆円規模に到達、沼津市も45億円の寄付をいただくことができた。その市場を事業者にどう活用してもらうか、 既存の返礼品とかのブラッシュ アップ、新規返礼品の企画、アイディアを学んでいただくのが目的」「昨年度は45億円でしたが今年度は55億円を目指そうと 取り組んでいます」

“モノ”だけでなく、ここでしかできない体験を盛り込むことで差別化を図り、利用者に選ばれることを狙っているのです。さらに、数年前までは、普段なかなか買うことができないぜいたくな商品を返礼品に選ぶ人が多かったといいますが、そのトレンドにも変化があるといいます。

(さとふる広報グループ 道岡 志保さん)
「現在の傾向としては、普段の食卓に取り入れられる食材などが人気」「美味しいというのはもちろんのこと使い勝手の良さが選ばれるポイント」

特別感よりも、普段使いができるものが人気だといいます。さらに…。

(さとふる広報グループ 道岡 志保さん)
「物価高の影響で日常的に消費するものを選ぶ人が増えてきている傾向がある」

様々なモノの値段が上がる中、「ふるさと納税」の返礼品にも“日用品”を選ぶ人が増えているのです。この流れを敏感にキャッチし、成功している自治体が。それが、紙のまち「富士市」。「ふるさと納税」の仲介サイト「さとふる」で、2024年上半期の中部版・返礼品ランキングで富士市のトイレットペーパーが、なんと1位を獲得したのです。このランキングで食品以外が1位を獲得するのは初めてだといいます。この快挙に市の担当者は…。

(富士市産業政策課 渡邉 祐華さん)
「ありがたいことに1位をいただいた」「富士市の人気特産品が全国に届く確率も高まるので、注目してもらえる可能性も高まった」

この大躍進の裏には、地元企業が参加しやすいようにサポートし、より人気が出る商品を生み出そうと奮闘する会社の存在が。ここでは返礼品の発送を代行して行っていますが…倉庫の中には全国各地に発送する返礼品がいっぱい。

(フジビジネス 寺田 憲司 社長)
「きょうは大体300ケース、こちらから発送します。主にティッシュペーパーが多いですね」

なんと、この倉庫いっぱいの商品を全国へ毎日発送しているのです。

(フジビジネス 寺田 憲司 社長)
「この時期は大体月に2万ケースぐらい。繁忙期だと3~4万ケース発送しています 。今のところ4月から8月までで去年の1.8倍ぐらい。右肩上がりにありがたいことに増えています」

いまでこそ多くの注文がありますが、返礼品を製造する現場には、はじめ、不安があったといいます。

(田子浦パルプ 佐野 陽平さん)
「ふるさと納税というと返礼品はお肉とかのイメージがあったので、ティッシュペーパーはそんなに出荷量がでるのか疑問はあった」

しかし、そこはアイデアで利用者のニーズにうまく応えたのです。例えば、市内6社の商品を詰め合わせたここでしか手に入らない「ふるさと納税」オリジナル商品を開発するなど、利用者が欲しくなる商品を開発したり、さらには発送の仕方にも利用者目線を取り入れ、リピーターや口コミを多く獲得しているのです。それが、このクラフト紙でこん包されたトイレットペーパー。

(フジビジネス 寺田 憲司 社長)
「クラフトパックで届くが、段ボールに比べて処分しやすいということで、首都圏の方に好評いただいている」

こうした努力の積み重ねが、利用者の大幅な増加につながっているのです。

(田子浦パルプ 佐野 陽平さん)
「最初は(月に)数ケース・何十ケースぐらいしか出なかった。最近では何千ケースで出荷している 」「売り上げ的にもここ1年でだいぶ伸びているので、これからも期待している」

さらに、地元を盛り上げるという「ふるさと納税」本来の目的に立ち返った商品の開発も。地元のイベントでのグッズ販売では、行列ができるほど人気の富士市のゆるキャラ「さもにゃん」を使い、地元の特産物を描いたティッシュペーパーを、「ふるさと納税」の返礼品のために作ったのです。取り出し口が猫の形で、全体的にかわいらしいデザインのため、早くも人気が出ているそうです。

(フジビジネス 寺田 憲司 社長)
「ふるさと納税を通して」「富士市に行ってみたいなと思っていただけるような形に繋がればと思っている」「富士市は、ずっと紙のまちでやってきた」「富士市がトイレットペーパーやティッシュペーパーの生産が日本一というのを誇りに持って、より地域を盛り上げていければと考えている」

さらに、市外の人が多く訪れる富士川楽座には、その場で返礼品が受け取れる自動販売機まで設置。やはり、ここでもトイレットペーパーが人気で、サイズは大きいですが車で持ち帰る人が多いそうです。

(富士市産業政策課 渡邉 祐華さん)
「『ふるさと納税』は、富士市を知ってもらう一つのツールになっている。『ふるさと納税』を通して、富士市や富士市の特産品を知っていただくきっかけになればと思う」