15年間にわたって公明党代表を務めてきた山口那津男氏が退任し、後任に石井啓一幹事長が就任することが決まった。

 石井氏は、自民党と協力して連立政権を円滑に運営し、政治を安定させるという重い役割を果たさねばならない。

 山口氏は、2009年衆院選で自公政権が下野した直後に代表に就いて以来、8期務めてきた。

 現在、自民党と立憲民主党では党首選びが進んでいる。1月には共産党の委員長も交代した。山口氏としては今、体制を刷新しなければ党の存在が埋没しかねない、という危機感があったようだ。

 山口氏は長年、連立の安定に力を注いできた。

 平和の党を標榜(ひょうぼう)する公明党は、集団的自衛権の行使容認に消極的だったが、自民党との協議を経て、国の存立を脅かす事態などに限って行使を認めた。この見直しによって日米同盟は強化され、脅威に対する抑止力も向上した。

 消費税率を10%に引き上げる際には、食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率の導入を求め、慎重だった自民党を説得した。

 自民党と考えに隔たりがあっても、協議を重ねて一致点を見いだしてきたことは評価できる。

 公明党の代表は、首相に様々な政策や政権運営について直言し、軌道修正を図ることができる。石井氏もそうした役割を果たせるかどうかが問われることになる。

 党勢の立て直しも石井氏にとって重い課題だ。

 公明党の比例選の得票は、05年衆院選の898万票をピークとして減少傾向が続いている。党の支持団体である創価学会の会員の高齢化により、運動量が減っていることが原因とされる。

 これまでの国政選で日本維新の会は、公明党の現職がいる関西の小選挙区に候補者を擁立してこなかったが、次期衆院選では方針を転換し、対抗馬を立てる。比例選で当選を重ねてきた石井氏は、初めて小選挙区から出馬する。

 次期衆院選は党の消長を占う戦いとなりそうだ。

 1964年の結党以来、公明党の代表が複数の候補者で争われたことは一度もない。今回の代表選も、立候補したのは石井氏だけで、無投票での当選が決まった。

 創価学会との水面下の調整で物事が決まっているのだろうが、自民、立民両党が多数の候補者による党首選を展開する中、改めて公明党独特の体質を浮き彫りにしている。中道政党として、党の裾野をどう広げていくかも課題だ。