市川新之助取材会レポート~襲名披露を締めくくる大阪松竹座『十月大歌舞伎』で『連獅子』に初役で挑む
2024年10月10日(木)~26日(土)、大阪松竹座にて「市川海老蔵改め 十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 『十月大歌舞伎』」が上演される。
2022年11月歌舞伎座を皮切りに2年にわたり各地で行われた襲名披露興行の締めくくりとなる大阪松竹座公演に向け、都内にて開催された取材会に臨んだ市川新之助が今の思いを語った。
市川新之助
2年間の襲名披露興行で様々な演目を演じた中でどのような大変さ、楽しさがあったのかを尋ねられた新之助は、「以前までは1年に2、3回ほど公演に出演していましたが、この2年間は公演数が多く、特に『外郎売』をたくさんやらせていただいて(演目に)ご縁を感じました。『毛抜』もやらせていただいて、歌舞伎十八番をこんなにやったことがなかったので、とても貴重な体験だったと思います」と答えた。
稽古で大変な思いはあったか、と問われると「大変というよりは、楽しかったです」と答え、演じているときはどんなところが楽しいと感じるのか、という質問には「台詞や立廻りが好きです」と答え、立廻りのどういうところが好きかを問われると「いっぱい動くのでテンションが上がるといいますか、気分が上がって楽しくなります」と笑顔で答えた。父である團十郎からのアドバイスで印象に残っているものは何かを聞かれると「動きというか踊りが苦手なのでそういうところや、セリフの細かいところを教えてもらいました」と明かした。
父の團十郎が親獅子、自身が初役で仔獅子をつとめる『連獅子』については、「歌舞伎十八番を(『外郎売』と『毛抜』と)2役やらせてもらって、新たなものに挑戦したいと思い『連獅子』をやりたいと思いました。僕自身『連獅子』が好きで、父が演じているのを見ていてすごく楽しかったので、僕もやってみたいなと思いました」と思いを述べた。
市川新之助
『連獅子』の稽古が始まってみて、どういうところが難しいと思うかを聞かれると、「元々、すごく難しい役だろうなとイメージはしていましたが、いざ実践してみると思っていたよりも難しい。(2人の)息がぴったり合っていないとだめなので、そういうところが難しいです」と答え、毛振りの稽古については「重いです。体力がないとできないと思います」と稽古で苦労している様子をにじませた。團十郎の指導の中で厳しいところはあるか、という問いには「父はあまり怒らない性格なので、(『連獅子』のように)谷に突き落とすみたいなことはしません」と答え、会場は笑いに包まれた。
新之助と呼ばれることに慣れたか、と問われると、少し考えた後「そんなに慣れていないです。プライベートでは(本名の)勸玄と呼ばれる方が多いので」と笑みを浮かべた。新之助を襲名してから自分の中で変化を感じることはあるか、という質問にも少し考えてから「自分自身では成長はそんなにわからないですが、(身体的なことでは)身長が伸びた。あと、前に比べて気持ちがちょっと変わったのかなと思います。「性格が変わった」と友達に言われたりするんですけど、僕は意識はしていないです」と答えた。
市川新之助
取材会場には『連獅子』の扮装をしたポスターが飾られており、その写真を見てどう思うかと聞かれると、少し答えに詰まった後「『連獅子』をやるんだな、と思います」とはにかんだ。記者からの「かっこいいと思うが、自分ではそうは思わない?」との問いかけには「思いません」とキッパリ答え、取材陣の笑いを誘った。
初めて立つことになる大阪松竹座については、「やったことがない場所でやらせてもらうのは、緊張感もありますがワクワクするというか楽しいです」と意欲を見せた。『十月大歌舞伎』が襲名披露の締めくくりになることへの思いを問われると「襲名披露は最後になりますけど、新之助としてはこれからも頑張っていくので、たくさん努力していきたい。今6年生なので『毛抜』をやったときが小4か、と思うと2年がすごく短く感じます」と思いを述べた。お客様にどんなところを楽しみにして欲しいか、という問いには「まだ稽古が全部終わっていないので(なんとも言えないが)、全部精一杯やらせてもらうので全部見ていただけたら嬉しいです。これまで稽古をした中での見どころは、やはり崖に落とされるところですかね」と答えた。いつかやりたいと憧れている演目を聞かれると「『助六』です」と即答。「見ていて面白い演目。僕が見て来た父の歌舞伎の中で一番多く見たのが『助六』かもしれない」とその理由を述べた。
市川新之助
市川海老蔵改め 十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台『十月大歌舞伎』は、10月10日(木)~26日(土)、大阪松竹座にて上演される。
取材・文・撮影=久田絢子